Maison book girl|クールで無機的な少女たちが、エモーショナルな熱を帯び始める

次はフランスで

──そしてブクガは5月中旬にイギリスツアーを敢行。向こうで楽しそうにしている様子はTwitterなどでよく伝わってきました。

井上 すごい楽しかった。

矢川 楽しかったね。

──音楽フェス「The Great Escape」やその前夜祭「The Alternative Escape」にも出演しましたが、イギリスでのライブはどんな感じでした?

矢川 どれくらい人が来てくれたら「反響がいい」なのかもわからない状態で行ったんですけど、ツアーに付いて来てくれてたスタッフの方に「すごいよかった! こんだけ人が観てくれるのはすごいよ!」って言ってもらえたので、信じていいのかなって(笑)。

──日本のお客さんと反応は違いましたか?

コショージ 大きいフェスをやってるタイミングだったからかもしれないんですけど、路上でライブしてる方がけっこういて、その人たちがみんな超うまかったんですよ。「イギリスは路上レベルでこんなにすごいのか……」って思いながら自分たちのライブをやったんですけど、私たちみたいな形態のグループは向こうにはあまりいないので珍しがってもらえたみたいで。

──アイドル自体が珍しいうえに、その中でもかなり特殊なグループですからね。

井上 ははは(笑)。

和田 うまい人たちがたくさんいる中で、「うまくない人が無理やりがんばってやってること」が1つのパフォーマンスとして評価してもらえたのを感じました。

矢川 でも、フェスのときは別のバンドを目当てに観に来てた人が多いんですけど、ライブハウスでやった日は日本のアイドルを好きな人が観に来てくれてたんですよ。おやすみホログラムさんのTシャツを着てる人がいたりとか。私たちのことも知ってくれてて、ライブをしてるときの手拍子のリズム感がすごかったです。「すごい! そんなことやってくれるの!」みたいな(笑)。

──ああ、確かに。あの変拍子の手拍子は曲を知らなかったら急にはできないですよね。

井上 たぶんYouTubeとかでライブ映像をすごい観てくれたんだと思います。

──ちなみに、ほかにライブをしに行ってみたい場所はありますか?

井上 海外ですか?

──海外じゃなくても大丈夫です。

矢川 ……あっ、フランスに行きたいです。

──それ、さっき撮影したトリコロールカラーの写真を見て言いましたね(笑)。

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矢川 ははは(笑)。ただ観光をしに行きたいというのもあるんですけど、私の好きなアーバンギャルドさんが「Japan Expo」に出演していた映像を日本で観ていて、ちょっといいなって思ってたんです。私たちも行ってみたいです。

急に椎名林檎さんが憑依したみたいな声出して

──ここからはニューシングル「elude」について聞かせてください。リードトラックの「レインコートと首の無い鳥」って、かなりインパクトのある曲名ですね。

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井上 クセがすごい!

矢川 「サクライさん、素直に歌詞の一部をタイトルにするようになったんだなあ」って思いました(笑)。今までは歌詞に出てこない英単語とかが多かったんで。

──ああ! そう言えばそうですね。

矢川 2曲目の「おかえりさよなら」も歌詞をそのまま曲名にしてるんですよ。どういう心境の変化があったのかは知らないんですけど。

──「レインコートと首の無い鳥」を聴かせてもらったとき、どう感じました?

矢川 また難しいのがきたなあって(笑)。

──でも難しそうに歌ってるようには聴こえないですね。先ほど僕が「ビバラポップ!」の話をしてるときに言った自信が、音源からも感じられると言うか。

井上 やっぱり、変拍子慣れはしたかもしれないですね。

矢川 昔は入るタイミングがわかんなくて何回も録り直してたんですけど、だんだんサクライさんの曲のリズム感がなんとなくつかめてきた気がします。

──自分たちの歌唱力が上がったという実感はあります?

井上 そうですね。昔の音源を聴くと。

──以前の音源と比べて、歌声に感情が込もっているように感じました。

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矢川 テンションの調整をすごく細かく注文されるようになったのはあります。「上げめで歌って」とか「ちょっと切ない感じで」とか。そしてそれに私たちが合わせられるようになったので、昔よりも歌に感情が付けられるようになったのかなと思います。

和田 最近サクライさんは、私に「和田っぽく歌って」って言ったり、みんなにそれぞれ「唯ちゃんっぽく」「葵ちゃんっぽく」「コショージっぽく」って指示することが多くなってきたんです。自分っぽくって言われてもどうすればいいのか難しいんですけど、それって要は、曲の中に自分の個性を出していい部分を作ってくれているってことなんですよね。そこは昔とは違うかもしれない。

コショージ 私は基本的に、最近ずっと「全部感情的に歌ってほしい」って言われるんです。でも今回ちょっと感情的になりすぎて、最後の「許すの」で巻き舌になったんですよ。

矢川 あったね(笑)。

コショージ マジでその場にいたすべての人が「え?」ってなったよね。

矢川 「何、今の?」って(笑)。

コショージ 自分でも「何、今の?」だったし。急に椎名林檎さんが憑依したみたいな声出して。

井上 感情を入れすぎたあまり(笑)。

コショージ やっぱりみんなの中にそれぞれの椎名林檎さんがいると思うんですけど、それがこの曲で出ちゃったんですよ。もちろんそのテイクは使われなかったですけど。そこまでの個性はいらなかったんでしょうね(笑)。