ナタリー PowerPush - 真心ブラザーズ

祝・ベストアルバム発売! 20年の歴史を紐解く赤裸々トーク

ソウル期

インタビュー写真

──1997年にはいちばん売れたという「B.A.D.~」があって。その後日本のソウルバンドとしての真心みたいものが確立されていく時期になるのかなと思うんですが。

桜井 なんとなく1996~7年辺りからライブのときのメンバーが定まってきて、MB’sというバックバンドのサウンドが出来上がってきたんですよ。音楽の発明みたいなワクワクが落ち着いたのがその頃。で、ライブが充実してきたのが1997~8年辺りなのかなぁ。音楽を再現して、お客さんを巻き込んでいい空気を作るというのには時間もスキルもかかるから、ちょっと時間はズレてて。

──熟成期に入ったということですか。

桜井 そうですね。

YO-KING 1997年の「愛のオーラ」とか、1998年の「BABY BABY BABY」辺りがソウル期が極まった時期というかね。ホーンが入ってるソウルっていうのを目指したソウル期かもしれないですね。

桜井 で、そのあと1999年にソロをやった頃から次どうしようって考えてたんですよね。いい感じになったMB’sというバックバンドも含め、ちょっと新機軸を探したいなぁと思ってて。その流れで2001年の「夢の日々~SERIOUS & JOY~」に向かって初めてプロデューサーさんを入れるんですよ。

──それまで一度もいなかったんですか!

桜井 いなかった。そこまで10何年も真心をやってきて、人から見たら真心ってどう見えるんだろうとか、自分たちでできそうなことって人から見たらなんなのか、探してもいいんじゃないかなっていう感じで、プロデューサーさんと一緒に曲を作り始めるんです。

──プロデューサーが入ると何がいちばん変わるんですか?

YO-KING プロデュースといってもいろんな形があると思うんですけど、その人はこういう曲作って、とかお題を出したり。2曲持ってったらこのAメロとこっちのBメロをくっつけちゃおうとか(笑)。そういうところからプロデュースしてくれる人だったから、すごく勉強になりましたね。

──そういうときにふたりは反発しないんですか?

YO-KING 反発しない(笑)。究極には楽しけりゃいいっていうのがいちばん上にあるから。自分の曲が合体ロボのようになって、もしかしたら本当にそれで良くなるかもしんないし。で、やってみたら確かに良くなってなるほどっていう。合体感覚はね、実はそのプロデュース前に自分でいろいろ合体させてんの。だから自分の中で合体技の面白さっていうのはあったんですよね。

桜井 この頃は、YO-KINGさんがこういう曲作れるんだぁというのを見てるのが面白かったですね。失恋ものの「流れ星」とか「この愛は始まってもいない」とかね。

YO-KING だから作家として曲を作って、それを歌手として歌ってるという感覚。それまではシンガーソングライターだから、私は今こんなことを考えております、みたいな曲だったけど、失恋の歌を作ろうっていうお題目があって、作家として作って、それを歌手として歌うっていう。

──この時期というのは、ロック期~ソウル期を経た真心が初期のフォークに原点回帰するというコンセプトなのかなと思って見てたんですが。

YO-KING 原点回帰ではなかったな。新規開拓。

桜井 うん。新機軸だったかなぁ。

YO-KING 好きだった70年代歌謡曲を、2001年の自分が作ってみる感覚を面白がってたっていう感じ。「この愛は始まってもいない」も、テーマ的には「木綿のハンカチーフ」だったり。あと(吉田)拓郎さんの「外は白い雪の夜」とかね。

──と言いつつ、その直後には「人間はもう終わりだ!」を出したりして。

YO-KING これはオーダーで作ったわけじゃないですね(笑)。ポッとできたっていうか。縛りがないときはこういうほうが楽っていうか。この頃はね。今は逆にお題があったほうが楽なんですよ。

フォークロック期~復活

──「夢の日々~SERIOUS & JOY~」をリリースした直後、2001年12月に活動休止することになります。新規開拓をしていく中で、なぜ活動休止という流れになったんですか?

YO-KING まぁ僕が言い出したんですけど、この失恋とかフィクションの作家的な曲作りをしてる中で、よりプライベートで自伝的な、シンガーソングライターとしてジョン・レノンの「ジョンの魂」みたいな、その人の根本みたいなものを作りたいと思うようになって。「ジョンの魂」ってすごく特別なアルバムなんですよ、僕の中で。だからそこに挑戦したいし、そういう曲ができてきてるなぁって思っちゃって。それを真心で出すのは違うのかなぁと。で、そっち方面で2~3枚作りたいんで、とりあえず休止したいなって思ったんですよね。

──じゃあソロ活動をやるための休止だったということですか?

YO-KING そうそう。

──となると、桜井さんとしては突然ですよね。

桜井 エーーッ! と思いましたよ。新機軸を見つけて、またMB’sのメンバーに声かけて演ろうかなぁって思ってたときですからね。でもそういう流れでミュージシャンがそう思ってしまったならしょうがないですもんね。

──受け入れるの早いですね。

桜井 それはもうね。

──バンドが休止する理由って仲悪くなったとか売れなくなったとかが多いですけど、そういう復活の望みが薄い休止ではなかったんですね。

YO-KING ただその時点では、そこまで読めないから。でもまぁ永遠に解散ではく、なんかのタイミングでまたやれる日があるんだったらっていうのはもちろんあったし。だからそーっと休止しようかと思ってたんだけど、スタッフの人に「ちゃんと言わなきゃダメ!」って言われて。だから新聞に「真心は休止します」って広告打ったんですよね。あ、こんなに大げさになるんだ、みたいな。

桜井 まぁ、武道館押さえてたしね。

YO-KING あはははは。動員のための。なるほどね。休止だからライブ来いや、と(笑)。

桜井 もうやんないかもよ~って(笑)。

──そうかぁ(笑)。復活したときすごくうれしかったんですけど、あんまり深刻な休止じゃなかったんですね。

YO-KING いやあ、僕もうれしかったですよ。

桜井 ただね、僕は休止したときはもう無理かなとは思ってましたよ。歴史的に、バンドというものが一度息を止めちゃったら元には絶対戻んないよなぁ、みたいな。今は復活ブームですけど、当時は復活してなんとかなったバンドってなかったんで。

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──真心は復活ブームも先取ったことになるんですね。

YO-KING 先取りましたねぇ。なんでも早い。

──復活のきっかけはどちらが作ったんですか?

桜井 僕にとっては2004年の「真心COVERS」がデカくて。参加してくれたみなさんのパフォーマンスが素晴らしくて、聴いてくださった方もたくさんいて、こんなに真心の音楽を楽しんでくれてるんだっていうのを初めて認識したというか。やってる最中はやるのに夢中で、どう見られてるかっていうのをわかってなかったんですよね。それが休止して2年くらい経ってたから、客観的に見ることもできて。こんな風に聴いてくれる人がいるんだったらやらないほうが失礼だよなぁ、みたいなこともあり。で、2005年の夏フェスに出させてもらったときに、真心が休止中に高校生活とかを送ったであろう人たちが、「生で演奏してる!」みたいな感じでワクワクして見てくれるのとかを感じて。さらに年下のバンドに好きでした、とか言ってもらって。今こんなにかっこいいバンドをやってるのに、その過程に真心の音楽があったんだ、とかを知ることができて。

──真心が休止中に夏フェスブームが到来してますからね。

YO-KING そうそう。だから僕はソロで出てて、そしたら後輩から真心好きでした、とか言われて。それでフェスに真心で出ていって「スピード」とか「どか~ん」とかやったらウケるんだろうなぁっていう(笑)。ちやほやされるの、大好きだから。それでまた話し合って。だから、とっかかりはちょっとフェスに出てちやほやされようよっていう(笑)。

──軽いノリで(笑)。2005年に復活してからは、アルバムも立て続けに出したりと積極的な活動をしてますね。

YO-KING ねぇ。再始動してからが濃かったですよ。

桜井 濃いよ~。

YO-KING けっこう常にやってる感はあるなぁ。その間、男・桜井シリーズの企画もありましたしね(笑)。

──「FINE」「DAZZLING SOUNDS」とシンプルに愛あふれる感じのアルバムを立て続けに出して。真心も大人になったなぁと思った頃に飛び出た、現時点での最新オリジナルアルバム「俺たちは真心だ!」が、また転機となりそうな1枚ですが。

YO-KING すごいアルバムですよね。あれは、曲を作るときにお題があったほうが楽っていうものの究極でできたアルバムで。ふたりでお題を考えて、そのお題に向かって作っていった1枚(笑)。

桜井 セルフ大喜利みたいなね。

──なるほど。なんとかブギとか、なんとか節とか、M.C. Sakuさんのラップとか。ファンとしては、どうしたらあんなアルバムが生まれたんだろう? って驚いた問題作です(笑)。

YO-KING でしょ? 再始動して2年連続でオリジナルアルバムを出してて、もうコンセプトアルバムにしないとやりようがなかったというのが正直なところで。そしたらなんか、モンスターのようなアルバムが出来上がってしまいましたね(笑)。ちょっと時間かけないとあのアルバムは消化できないと思う。特に聴く人は。早すぎるアルバムですよ。

──またもや時代先取りですか。

YO-KING 先取りですよ、あれは。

ミニアルバム『タンデムダンディ 20』 / 2009年8月5日発売 / 1529円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1429

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CD収録曲
  1. Song of You
  2. 20の夏
  3. サンドウィッチ
  4. 風を浴びて君想う

ベストアルバム『GOODDEST』 / 2009年9月2日発売 / Ki/oon Records

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Disc 1 収録曲
  1. うみ
  2. どか~ん
  3. うまくは言えないけど
  4. 荒川土手
  5. 頭の中
  6. うきうき
  7. 旅の夢
  8. モルツのテーマ
  9. 素晴らしきこの世界
  10. スピード
  11. マイ・バック・ページ
  12. STONE
  13. JUMP
  14. 新しい夜明け
  15. 拝啓、ジョン・レノン
  16. 空にまいあがれ
Disc 2 収録曲
  1. ループスライダー
  2. BABY BABY BABY
  3. 愛のオーラ
  4. ENDLESS SUMMER NUDE
  5. サティスファクション
  6. EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG
  7. 流れ星
  8. この愛は始まってもいない
  9. 人間はもう終わりだ!
  10. 情熱と衝動
  11. Dear, Summer Friend
  12. I'm in Love
  13. きみとぼく
  14. All I want to say to you
  15. 傷だらけの真心
  16. Song of You
DVD収録内容 (初回盤のみ)
  • デビュー当時の貴重な映像を収録
真心ブラザーズ(まごころぶらざーず)

YO-KINGと桜井秀俊によって1989年に結成。テレビ番組の「勝ち抜きフォーク合戦」で10週勝ち抜いたことをきっかけに、同年9月にシングル「うみ」でメジャーデビューを果たす。「モルツのテーマ」「どか~ん」といったナンバーがTVソングに起用され、そのフォーキーなサウンドが好評を博す。1995年リリースのシングル「スピード」以降は、それまでのイメージを払拭するようなロック&ソウル色の強い音楽性へと移行。「サマーヌード」「拝啓、ジョン・レノン」「空にまいあがれ」など、数々の名曲を発表する。現在までに34枚のシングルと12枚のオリジナル・アルバムを発表。定評のあるライブ・パフォーマンスも健在である。今年でデビュー20周年を迎え、それを記念し9月に「元祖 渋谷系(嘘)」と題した特別記念ライブ、11月からは全国ツアー「THE GOODDEST TOUR」を行う。