ナタリー PowerPush - 真心ブラザーズ
祝・ベストアルバム発売! 20年の歴史を紐解く赤裸々トーク
大学の先輩と後輩がテレビ番組に出るために結成したユニットが、2009年9月で丸20年。8月にはデビュー20周年記念コンセプト・ミニアルバム「タンデムダンディ 20」、9月には自ら選曲したベストアルバム「GOODDEST」を発売。そしてなんだか面白そうな企画ライブ開催と、アニバーサリーイヤーを盛り上げる準備はバッチリだ。
始まりはフォークデュオ。しかしその後は常に自由に手を伸ばし、足にはたくさんのスニーカーをかき集めながら、ときには時代を先取りしたロックバンドへ、ときには高らかに愛を歌うソウルバンドへと姿を変え続けてきたふたり。そのしなやかで、ただただ楽しそうにも見える20年の歴史を紐解くロングインタビューをどうぞ。
取材・文/加治屋真美 インタビュー撮影/中西求
フォーク期
──まずはデビューのきっかけからお願いします。
桜井 フジテレビの夕方のバラエティ番組(「パラダイスGO!GO!」)内に「勝ち抜きフォーク合戦」というのがありまして。時代はバンドブームという1989年当時に、いまどきフォークをやってる若者を笑っちゃおうみたいな趣旨のコーナーだったんですが、それに当時大学で同じサークルだったYO-KING先輩と僕が素人として出たら、10週連続で勝ち抜いてしまいまして。
──当時おふたりは真剣にフォークをやってたんですか?
桜井 いや、フォークのコーナーだからフォークで出たという感じで。
YO-KING 当時ふたりともバンドをやってて、まぁ時代でいうとアンプラグドという感じですよね。ロックやってる人がアコギを持ってロックっぽくやっちゃえばいいや、みたいな感じ。だからアコギに対してなんの思い入れもなかった(笑)。
桜井 そしたら番組の仕込みでもないのに10週勝ち抜いて。番組の人たちも、仕込みっぽく見えるのをどうしようみたいな感じで(笑)。で、まぁ勝ち抜いてしまったので、1枚だけシングルを出したんですね。それが1989年9月のデビュー曲「うみ」。そのシングルを番組のエンディングで毎日歌ってたらそこそこ売れて、今度はレコード会社さんのほうからアルバムを作らないか、と。そんな感じでずるずると真心ブラザーズが転がり始めたんですよね。
──じゃあフォークのスタイルでのデビューというのは望んだ形ではなかった?
YO-KING フォークデュオって言われてたけど、全然そういう意識はなかったですね。まぁ、聞かれたら「はい、フォークデュオです」って答えてたけど(笑)。ある意味ジャンル分けって必要だから、そう言ったほうが楽ならそれでいいかっていうくらいですよ。俺はもともとフォークが好きだけど時代的にバンドブームだったからバンドをやってたという人間で、無理はなかったし。
──当時のファンというのはバンドブームの流れからきたファンなんですか?
YO-KING 9割女だった気がする。今じゃ考えられないけど(笑)。アイドルでしたから、僕。
──キャーキャー言われてた、と(笑)。
YO-KING キャーキャー言われてた! びっくりするくらい。誕生日とかバレンタインとか、こんなにもらえんの? って思うくらいプレゼントをもらってましたよ。
──それは本当にアイドルですね。
YO-KING アイドル(キッパリ!)。
桜井 すごい強く言い切ったけど(笑)。
YO-KING アイドルです。BEATLESやボブ・ディランが若い頃アイドルだったように、僕も若い頃はアイドルだったんです。
──では桜井さんは?
YO-KING いや、僕だけです。
桜井 うはははは。
──(笑)。桜井さんは当時の状況をどう見てたんですか?
桜井 なんだろう? と思いながら見てましたけど。とにかく遊んでた感じですよね。1989年当時、僕はまだ大学3年だったんでどこまで遊べるんだろうみたいな感じで。バンドとか音楽は好きだから、ライブができるとか、プロが使ってる立派なスタジオでタダでレコーディングができるとかが楽しくて。だから「お客さんはこんな適当なヤツらの何が楽しいんだろう」って理解できないまま、投げっぱなしでやってた感じでしたね。もう投げ逃げぐらいな感じ。
──フォーク期は1992年までの3年ほどあるわけですが、そのくらいやってるとプロの責任も出てきたんじゃないですか?
桜井 ないッス。全然。
YO-KING なかったなぁ、この頃は。
──やりたいことができる状況ではあったんですか?
YO-KING もうやりたい放題。プロデューサーもいないし。だって時代はバンドブームですからね。バンドブーム最高(笑)。もう1回来ないかなぁ。
──世の中もバブルな時期ですよね。
YO-KING そうそう。世間のバブルは1990年くらいにはじけたでしょ。でも音楽業界のバブルはちょっとズレてて1999年くらいまで続くから。CDが200万とか300万枚とか売れて。宇多田ヒカルさんなんて700万枚? すごい時代だよね。だって、真心だって3、40万枚売れたんだから。
桜井 いちばん売れた「B.A.D.(Bigger And Deffer)~MB’s Single Collection」がね。
YO-KING その程度のセールスのアーティストが20年やるって、そういう意味ではすごいですよね。いかに、こう言っちゃなんですけど(ニヤリ)、ファンやスタッフに愛されてるかっていうことなんですよね。
──そんな、にやけながら言われても(笑)。
YO-KING うん。にやけながら言うとね(笑)。
Disc 1 収録曲
- うみ
- どか~ん
- うまくは言えないけど
- 荒川土手
- 頭の中
- うきうき
- 旅の夢
- モルツのテーマ
- 素晴らしきこの世界
- スピード
- 愛
- マイ・バック・ページ
- STONE
- JUMP
- 新しい夜明け
- 拝啓、ジョン・レノン
- 空にまいあがれ
Disc 2 収録曲
- ループスライダー
- BABY BABY BABY
- 愛のオーラ
- ENDLESS SUMMER NUDE
- サティスファクション
- EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG
- 流れ星
- この愛は始まってもいない
- 人間はもう終わりだ!
- 情熱と衝動
- Dear, Summer Friend
- I'm in Love
- きみとぼく
- All I want to say to you
- 傷だらけの真心
- Song of You
DVD収録内容 (初回盤のみ)
- デビュー当時の貴重な映像を収録
真心ブラザーズ(まごころぶらざーず)
YO-KINGと桜井秀俊によって1989年に結成。テレビ番組の「勝ち抜きフォーク合戦」で10週勝ち抜いたことをきっかけに、同年9月にシングル「うみ」でメジャーデビューを果たす。「モルツのテーマ」「どか~ん」といったナンバーがTVソングに起用され、そのフォーキーなサウンドが好評を博す。1995年リリースのシングル「スピード」以降は、それまでのイメージを払拭するようなロック&ソウル色の強い音楽性へと移行。「サマーヌード」「拝啓、ジョン・レノン」「空にまいあがれ」など、数々の名曲を発表する。現在までに34枚のシングルと12枚のオリジナル・アルバムを発表。定評のあるライブ・パフォーマンスも健在である。今年でデビュー20周年を迎え、それを記念し9月に「元祖 渋谷系(嘘)」と題した特別記念ライブ、11月からは全国ツアー「THE GOODDEST TOUR」を行う。