音楽ナタリー PowerPush - MAGIC OF LiFE
“命の魔法”を掲げて歌う10の物語
MAGIC OF LiFEがニューアルバム「Storyteller」をリリースした。
昨年10月に「DIRTY OLD MEN」から「MAGIC OF LiFE」へと改名した彼ら。2004年のバンド結成から10年の間に、メジャーデビュー、メンバーの脱退、改名と紆余曲折の道のりをたどってきた今、フロントマンの高津戸信幸(Vo, G)は「音楽が楽しい」と笑顔で語る。「歩んできた音楽人生」をコンセプトに作ったという今作について、高津戸に話を聞いた。
取材・文 / 小林千絵 インタビュー撮影 / 半田安政(showcase)
「DIRTY OLD MEN」から「MAGIC OF LiFE」に
──昨年10月にバンド名を「DIRTY OLD MEN」から「MAGIC OF LiFE」に改めましたね。まずはこのお話からお伺いできればと思います。
僕、19歳の頃からCDをリリースさせてもらってるんですけど、21歳のときにリリースした「bud」っていうアルバムくらいからバンドに多くの人が関わってくれるようになって、ライブにもたくさんのお客さんが来てくれて。だけど本当に歌が下手だったから、自分に自信が持てなかったんです。でもライブをしに行くと、楽しみに待ってくれてる人がいて。中には映画やドラマでしか聞いたことないような壮絶な人生をたどってるような子とかもいるんですよ。
──癒しや救いを求めてライブに来るんですね。
はい。重い病気を患っている子がいたんですけど、その子はライブの日1日だけ外出申請を出して、彼氏と一緒に来てくれて。ライブで泣きじゃくったあとに笑顔で「ノブ(高津戸)さんはヒーローなんです」って言ってくれたんですよ。そういう瞬間を、音楽がたくさん見せてくれた。「こんな俺にそんなこと言ってくれるんだ。俺、音楽やっていいんだな」って思える、魔法のような瞬間を。そういう瞬間を積み重ねて今ではやっと自信を持てるようになって、僕みたいに自分に自信のない人の背中を押せるような音楽を届けていきたいなと思えるようになったので、「命の魔法」という意味を込めた「MAGIC OF LiFE」っていう名前にしました。
──DIRTY OLD MENという名前で10年間やってきて、変えることに不安はなかったですか?
すっげービビったし、めちゃくちゃ怖かったです。最初はやっぱりやめたほうがいいかなあとも思ったんですけど、ビビるからこそやる価値があるのかなと思ったし、変化を怖がるよりも変われない自分を恐れるべきだと考えて改名に踏み切りました。挑戦できてる自分がうれしいですね。
──それにしても本当に紆余曲折を経ているバンドですよね。メジャーにいって、メンバーが脱退して、インディーズに戻って、改名して……。
本当ですよね。いい意味でも悪い意味でも若い頃からたくさんの方が関わってくれてたので、やめたかったけどやめられなかった。結局、僕には音楽しかないんですよね。やっとゆっくり、ファンの方やメンバー、周りのチームの人に恩を返せるところまできたのかなと思います。
ずっと音楽が苦痛だった
──今作「Storyteller」は「歩んできた音楽人生」をコンセプトに作ったということですが、なぜ今このコンセプトで作品を作ろうと思ったんですか?
ずっと書きたかったんですけど、書けなくて。やっと書けたんです。
──それまではなぜ書けなかったんでしょう?
ずっといろいろな方々から「こういう曲を書いて」というリクエストがあって、それに応えたいって思って曲を作ってきた。自分に自信がないこともあって自分をちゃんと持ってなかったのかもしれないですね。成長したいっていう気持ちは常にめちゃくちゃあったんで、必死に作っていたら、いつの間にかメンバーが抜けて、メジャーとの契約も終わって……。で、メンバーが変わって環境も変わると、そこからまた2年間くらいは「俺らは終わってねえ!」みたいな感じで必死で。で、去年「Blazing」という作品を作ったらようやく落ち着いて、ずっと作りたかったものを作ろうと思えたんです。周りが見えるようになったし、最近ではバンド仲間もできるようになったので、楽しいですね。……そう! ずっと音楽が苦痛だったんですけど、今は楽しいんです!
──ずっと苦痛だった?
はい。音楽やってるのに、自由がなかった。正直、よく言われるメンバー間のもつれもありましたし。でもそれがあって強くなったし、今では意味のないことはなかったなと思えます。……って昨日もメンバーとケンカしたばっかですけどね(笑)。でもこの年になって言い合える仲間がいるって素敵だなって思えちゃうし。いい人生ですね。
──今作を作るために改めて音楽人生を振り返ったりしました?
改名っていうタイミングもあって、以前所属していた事務所があった、僕にとって原点でもある沖縄に7年ぶりくらいに行って。そこでいろいろ見て感じて、いいことや悪いことを思い出しました。
──もともと高津戸さんは物語性の強い歌詞を書いていましたよね。でもここ2年くらいはストレートな歌詞にも挑戦されて。で、また今作で物語性のある歌詞に戻ってきました。1回ストレートな歌詞を挟んだことで何か変わりました?
めちゃくちゃ変わりましたね。昔はずっと自分の心を隠すように物語を書いてたんです。ストレートな歌詞からもただただ逃げてただけだったんですよね。「俺なんかがストレートなこと言ったって伝わらない」って思ってたし、「ストレートな楽曲なんてよくない」って思ってたときもあった。「doors」(2012年5月発売)のときに「ストレートな歌詞を書いてみよう」と言われて挑戦してみたんですけど、やっぱり自分が思い描いているようにはうまく書けなかった。
──そんなことないと思いましたけどね。
いやー。世の中には「ありがとう」っていう言葉が本当に「ありがとう」という意味で伝わる人間力のある歌い手がいるんですよ。でも自分でストレートな歌詞を書いてみて、自分はそういう歌い手にはなれないなってわかりました。逆に僕は物語を書くことが得意だから、そこに「ありがとう」や「愛してる」を入れたらいいんだということに気付いて。それからは自分の思いを物語に入れられるようになったと思います。
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- ニューアルバム「Storyteller」2015年3月25日発売 / フォーチュレスト
- 「Storyteller」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / MOLF-1002 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2916円 / MOLF-1003 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- First morning
- Joker's hourglass
- balletto
- ジェットモンスター
- 箒星の余韻
- りんご飴
- Zombie(s)
- ソラヘノ欠片
- 月に揺られて
- リリム
- storyteller
初回限定盤DVD収録内容
Blazing TOUR 2014 FINAL 2014.7.11 at.LIQUIDROOM ebisu
- 弱虫な炎
- 変えるのうた
- pain+
- doors
- 桜川
- In room
- following page
- elif
- I'm Ready
- メリーゴーランド
- 呼吸
- 夜空のBGM
MAGIC OF LiFE「Don't Stop Music fes.栃木」2015年4月19日(日)栃木県 栃木市総合運動公園 総合体育館 / OPEN 12:00 / START 13:00
出演者
MAGIC OF LiFE / Suck a Stew Dry / シナリオアート / 真空ホロウ / Northern19 / Rhythmic Toy World / Lyu:Lyu / 空想委員会 / GOOD ON THE REEL / sumika / SHIT HAPPENING(オープニングアクト)
MAGIC OF LiFE(マジックオブライフ)
高津戸信幸(Vo, G)、山下拓実(G)、渡辺雄司(B)、岡田翔太朗(Dr)の4人からなるバンド。2004年に栃木県宇都宮市で「DIRTY OLD MEN」として結成し、インディーズ時代にシングル1枚、ミニアルバム3枚、フルアルバム1枚を発表している。2010年5月にはミニアルバム「Time Machine」でメジャーデビュー。翌2011年2月にはメジャー1stアルバム「GUIDANCE」をリリースし、ツアーや「ROCK IN JAPAN FES」などの夏フェスに精力的に出演した。しかし、2012年3月にオリジナルメンバーだったベースとドラムが脱退。新たに岡田翔太朗(Dr)と渡辺雄司(B)が加入し、5月に2ndアルバム「doors」をリリースする。その後、インディーズに拠点を移し、12月に過去の楽曲をまとめたベスト盤「prologue」を、2013年3月にアルバム「I and I」、2014年5月にアルバム「Blazing」を発表した。同年10月に「DIRTY OLD MEN」から「MAGIC OF LiFE」へと改名し、2015年3月にコンセプトアルバム「Storyteller」をリリースした。同年4月には栃木・栃木市総合運動公園 総合体育館で自主企画イベント「Don't Stop Music fes.栃木」を開催する。