音楽ナタリー Power Push - MAGiC BOYZ
続いていく思いを円周率に託して
俺、夢1つ叶ったかもしれない
──そう、リュウトさんは餓鬼レンジャーさんのトラックでラップするのが夢だったと聞きました。
リュウト はい。1年前くらいにマジボが「戦極MCBATTLE」の予選に出たんですが、その本戦がLIQUIDROOMであったんです。そのときに餓鬼レンジャーさんがゲストライブをしているのを聴いて「やべえ!」ってなって、すぐに昔のアルバムを漁りました。聴いているうちにGPさんのビートが大好きになって、それから心の中で「一緒にやりたいなあ」って密かに思っていたんです。
トーマ よかったじゃん。
マヒロ レコーディングを終えた帰り道、リュウトに「ねえマヒロ」って呼ばれて。「何?」って答えたら「俺、夢1つ叶ったかもしれない」って。
リュウト 本当に、この曲は内容も餓鬼レンジャーさんっぽいし……レコーディング中はウハウハでした。
マヒロ 1人ひとり歌い方を教えてもらったんですけど、すごく丁寧に教えてくれたよね。
リュウト 最高だった。YOSHIさんが韻を畳みかけて歌うのが好きで「俺もやりたいな」と思っていたけど全然できなくて。でもそこをポチョムキンさんがずっと付き添って考えてくださったり、歌詞のアレンジ方法のアドバイスとかも教えてくれて、本当にうれしかったです。
──では、この曲はマヒロさんの欲とリュウトさんの夢が形になった曲ということですね。
マヒロ・リュウト そうですね。
メッセージ性が強すぎ
──次は「ON & ON」について聞きたいのですが、この曲には「3.141592」よりも生々しく、今の皆さんの思いがつづられているのかなと思いました。
マヒロ そうですね。この曲では本当に正直に、僕たちがこれまで経験してきたことを書きました。本当にあったことや思ったことをどんどんリリックに入れたから、内容は重めだと思います。
トーマ でも、そこから前を向いていくっていう気持ちも入ってるよね。
──この曲を聴いたとき、インタビューであれこれ聞くよりもこの曲を1回聴いたほうが、皆さんの気持ちがしっかり伝わるんじゃないかなと思いました。
リュウト メッセージ性が強すぎですよね(笑)。
──なので、それぞれのバースに込めた思いを聞いてもいいですか?
トーマ はい。この曲のテーマが「続けていくこと」だったから、今までのことを振り返ろうかなと思って。マジボはこれまでにメンバーの卒業を経験しているから、僕はそこを入れて。「こういうこともあったけど、これからもホーミーさんたちと一緒に続けて行こう。マジボは続いていくから、がんばって行こう」っていう思いを込めました。
マヒロ トーマ、ブログにも書いてたもんね。ミロが卒業したとき「MCトーマは絶対に卒業しません!」って。そういうシンプルな言葉ってすごく伝わるし、ホーミーも安心すると思う。それにトーマは普段がふわふわしている感じだから、そういう彼がハッキリ宣言するとね。
リュウト 威力がね。
マヒロ そう。威力があるんだなあと思います。
リュウト トーマはマジボに最初からいるしね。
トーマ はい。初期メンです。
──「自分は卒業しない」と決心したきっかけはあったんですか?
トーマ そうだなあ……これまでメンバーが卒業したとき、ホーミーさんたちがすごく悲しんでいたのを見ていたから。そういう悲しい思いは、もうさせたくないなって思ったので。だから自分は続けていこうって決めたのかな。
──そうだったんですね。で、マヒロさんは逆に「やめようと思った」過去の思いをつづっています。
マヒロ ありましたね。マネージャーさんと、個人的に相談したこともありました。「これからどうする?」って。
──それほど悩んでいたんですね。
リュウト マヒロ、去年の「リアル中2 卒業パーティー」で踏みとどまったよね。ありがとうございます(笑)。
マヒロ ぶっちゃけ言うと、「辞めよう」と思ったのがフウトとユウトの卒業が決まったときだったんです。彼らがグループを辞めるとなって、「自分も……」って考えちゃったんですよ。けど、5人中3人が辞めて、2人だけ残るっていうのはさすがにあれかなって。あとはやっぱり今まで応援してくれてたホーミーにも失礼だなと思いました。それに、ライブはやっぱり楽しくて。大変なことばかりではなかったんです。面白いこともたくさんあったから、「自分はまだがんばろうかな」って思えたというか。
リュウト へえ。初耳。
マヒロ いろいろあったんだよねえ。
──そうやって活動に楽しみを見出したのはいつ頃だったんですか?
マヒロ DJからMCになったとき。去年の春ですね。そう、「卒業しようかな」って思った理由の1つはDJです。僕、本当にDJが苦手だったんですよ。だからMCになってから、活動が面白くなりました。それにその頃、リュウトがいろんなラッパーさんの曲を教えてくれたんです。それも活動が面白くなった1つの要因です。
リュウト いや、最初は無理矢理押し付けてたんですよ。マヒロ、本当にラップに興味がなかったから。
マヒロ 最初はホントにそうでした(笑)。
リュウト だからとりあえずいろんな曲を教えて、1つでも好きなものがあったらな……と思っていたんです。
マヒロ 僕、1つのものにハマったらそれをずっと聴いたりやったりするタイプなんで。
リュウト 本当に一途だよね。
マヒロ マジボに入ったときに僕がハマっていたものが、ラップとDJじゃなかった。だから、好きじゃないものを「やれ」と言われているような感覚で、それが泣きそうになるくらい嫌だったんです。でも……。
──リュウトさんや周りの影響もあって、ラップがやりたいことに変わっていったと。
マヒロ はい。そうですね。
僕の知らなかったお兄ちゃんたちのこと
──そして、リュウトさん。
リュウト はい。僕は今までのことというより、これからのことについて書きました。トーマがこれまでのことを書いてくれると思っていたから。僕は「続けていく」っていう思いだけを。
──そうなんですね。
リュウト はい。あと「一足先に行く」っていうフレーズをRHYMESTERさんの曲から使わせてもらったり、「屍を越え」っていうところもGAGLEさんの「屍を越えて」から取らせてもらったり。HUNGERさんに最初にこのリリックを見せるときは少し怖かったですけど(笑)、でもそこは喜んでもらえたので、ホッとしました。
──そういった、先人たちへのリスペクトも込められているんですね。
リュウト はい。勝手にですけど、僕の尊敬する人たちの意思を継いでいきたい、みたいな気持ちも入ってます。
──レコーディングは仙台で行ったんですよね。
リュウト はい。初めて地方でレコーディングしました。仙台はGAGLEさんの住んでいる土地だし、いざ到着してみるとなんだか空気が違うのを感じて。
──新鮮な気持ちで臨めた?
リュウト そうですね。
トーマ で、HUNGERさんもまたクセがすごいんですよ。TOKYO HEALTH CLUBさんとはまた違った、クセのある歌い方をされるので。
リュウト 独特な間の取り方や韻の踏み方をされるので、難しかったですね。
トーマ あえてワンテンポ遅らせたりとかね。
リュウト そう、それが本当にできなくて。でも、HUNGERさんには小節、小節で区切って物語を展開していくんじゃなく、リリックのストーリーは小節をまたいでもいいんだっていうことを教えてもらえたというか。今までは勇気がなくてできなかったところを打破するような、自分たちの表現のバリエーションの1つになるような新しいやり方を教えてもらえたなっていう感じです。
マヒロ ジョーは仙台で牛タン食べたよね。レコーディング聴いててどうだった?
ジョー 「そうだったんだ」って。ボーッと聴いてただけだけど、僕の知らなかったお兄ちゃんたちのことがわかりました。
リュウト リリックの中にはジョーの前ではしなかったような話も入ってますね。ジョーが入る前はマジボは同い年メンバーだけですごいふざけたりしてたけど(笑)、年下のジョーが入って、僕らは彼の見本にならなきゃいけないから……ジョーが僕らみたいな感じになってほしくないというか。でも、“これから”のマジボはジョーも一緒だからね。
ジョー (頷く)
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- ニューシングル「3.141592」 / 2017年3月29日発売 / SDR
- お金があれ盤 [CD] 1000円 / ZXRC-1095
- これからも盤 [CD] 1000円 / ZXRC-1096
- ずら盤 [CD] 1000円 / ZXRC-1097
お金があれ盤 収録曲
- 3.141592
- 10000000000YEN(MAGiC BOYZ × 餓鬼レンジャー)
これからも盤 収録曲
- 3.141592
- ON & ON(MAGiC BOYZ × GAGLE)
ずら盤 収録曲
- 3.141592
- 『ずら』との遭遇!(MAGiC BOYZ × YOUNG-G & 原田喜照)
MAGiC BOYZ(マジックボーイズ)
中学生MCのリュウト、トーマ、マヒロ、小学生DJのジョーからなる4人組ヒップホップユニット。2014年9月に結成が発表され、11月に東京・日本青年館で行われたEBiDAN 39 & KiDSの単独公演で初パフォーマンスを行う。3月に「MAGiC SPELL~かけちゃうぞ!ぴっぴっぴっ~」でCDデビューした。2016年2月には初主演映画「イカれてイル?」(竹内道宏監督)が公開になり、同作の主題歌を表題曲とした2ndシングル「ありのままでマジボ」を発表。3月にMCフウトとユウトがグループを卒業する。5月にはジョーとミロの加入が発表され、8月に3rdシングル「Do The D-D-T!!」をリリース。10月末にはミロが卒業し、11月よりZEN-LA-ROCKがMCとして加入、12月にシングル「Oh!!!受験☆Night Fever」を発売した。2017年3月には、TOKYO HEALTH CLUBからの提供曲をリードトラックとするシングル「3.141592」をリリース。また同じ月にZEN-LA-ROCKが自身の楽曲制作と婚活のため卒業した。