「マジカミ」ジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワン×渡辺淳之介 プロデューサー対談|主題歌はGANG PARADE、魔法少女が活躍するPCブラウザゲームがついに完成

ジブから松隈ケンタに伝えた楽曲オーダー

──タイアップが無事に決まったあと、サウンドプロデューサーの松隈ケンタさんともお話されたんですか?

ジブ はい。僭越ながら希望をいろいろと伝えさせていただきまして。主題歌1曲とバトル中の挿入歌3曲を作っていただいたんですけど、僕の希望って細かかったですか?

渡辺 全然ざっくりだと思います。どちらかというと歌詞のほうがこだわり強かったですよね?

左からジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワン、渡辺淳之介。

ジブ そうですね。順を追って説明すると、楽曲に関しては「こういう場面で使いたくてこういう印象にしてほしい」とたくさんオーダーさせていただいて。主題歌はゲーム全体の最初の入りのインパクトとか、全体のハチャメチャ感とかパワー感みたいなのを詰め込んだ感じにしたいという希望を伝えたうえで作っていただきました。渋谷でアドトラックから聞こえる「バーニラ、バニラ♪」みたい雰囲気を出してほしいと(笑)。「あの広告の音ってすごい渋谷っぽくて、アホっぽいけど、めちゃめちゃ耳に残るのがいい」みたいな話を松隈さんとして、若干盛り上がった記憶があります(笑)。それぐらいの粒度で1個ずつお願いさせていただいて。歌詞の部分にこだわった理由は、ゲーム内で使うものであまりにはっきり歌詞が聞こえると、そっちが気になっちゃう場合があるんです。なので歌い方とか聞こえ方についてちょっとわがままを言わせていただいて。日本語だけど英語っぽく歌ってください、という感じでオーダーさせてもらいました。

渡辺 そうですね、ありましたね。

ジブ 当時はまだ全然ゲームができてなかったので紙の資料をお送りして。

渡辺 今回テラシマユウカ、ヤママチミキ、カミヤサキの3人が作詞をしているんですけど、メンバーは資料を見ながら歌詞を書いてました。

ジブ 実は歌詞の内容についてはオーダーを出してなかったんですよ。でも歌詞をいただいたときに「あ、たぶん見てくれて意識して書いてくれたんだろうな」というのはわかりました。

渡辺 資料を見て自分なりに昇華してやろうねという話はしてました。でも必死にゲームの世界観をふくらませたというよりは、資料をじっくり読んで考えたんだろうな(笑)。音源自体は1年半くらい前にはもうできてたと思います。

ジブ カミヤさんがBiSからGANG PARADEに戻ってきたぐらいのタイミングでもう録ってたんですよ、実は。僕らの開発がちょっと遅れたから仕方ないんです(笑)。楽曲を聴かせていただいたとき、僕だけじゃなくてチームのメンバー全員のテンションがめちゃくちゃ上がりました。ゲームを開発していると、いろんな業者にたくさん外注することがあるんですよ。ゲームのコンセプトややりたいこと、こういうふうにしてほしいと希望を伝えて100%で上がってくることって、そもそもあんまりないんです。でも本当にこの楽曲は想像の150%、200%ぐらいのクオリティだったので本当にさすがだなと。チームメンバーもめちゃめちゃ喜んでました、「超カッコいい!」って。

楽曲に合わせて制作したこだわりのオープニング映像

──実際に主題歌を含め、GANG PARADEの楽曲はインストバージョンを含めて複数のシーンで使われているようですが、挿入歌はすべてバトルシーンに使われるんですか?

ジブ ボーカルありのバージョンはバトルシーンで、インストバージョンはエピソードシーンでちょこちょこ使ってます。劇伴はSCRAMBLESさんが手がけてくださいました。

──コンシューマーゲームだと、作中に声優さんが歌っているキャラソンが入るケースがありますが、PCゲームにアイドルの歌が入っているというのは珍しいですよね。

ジブ そう思っていただきたかったという狙いはありました。ボーカルありの曲が入ってることにも驚いてほしかったんですよね。

──バトルシーンでは敵が踊るような動きをしていますよね。曲のテンポに合った動きだったと思うんですけど、あれも曲ありきの発想で?

ジブ そうなんです。悪魔のキャラ自体がちょっとプリミティブで、自我を失ったように狂った人間というか、本能のままに動くような設定で作っていて。楽しければ踊るし、ムカつけば攻撃するし、みたいな原始的な本能がむき出しになったキャラ設定にしているんです。その延長で、「ノリノリの曲で悪魔が踊っていたら面白くないかな?」という発想が最初にあったので、BPMを指定させていただいたんですよ。敵キャラが踊る動きと楽曲を合わせたかったので。

渡辺 そんなオーダーがありましたね。実はもっと細かい指示が来るんじゃないかと構えてたんです。

ジブ もっといろいろ言われるんじゃないかと?

渡辺 ええ。でもほとんど楽曲に合わせていただけて。アニメのタイアップソングだと、絵が「ジャキーン!」と動くシーンにこのパートがぴったりになるようにしてほしいとか細かな依頼があるけど、「マジカミ」に関してはそこまで注文がめちゃめちゃあったという感じではなかったです。

ジブ 先に公開したオープニングアニメは逆に曲ができあがってから映像を当てたんです。まずはGANG PARADEの楽曲ありきで映像を作って音ハメしようという発想で作ったので。本当にカッコいい曲を使わせていただけましたし、映像自体は別の会社さんに作っていただいたんですけど、そこの会社さんにもすごくがんばっていただいたので、おかげさまでとても評判がいいです。

渡辺 オープニング映像、カッコよかったですね。アニメってがんばらないと、動きに不自然さが出ちゃって、毎週やってるアニメでも「大丈夫かな?」って感じる週がたまにありますよね?(笑) そうならなくてよかったと正直思いましたし、しっかり血の通ったものを作っているというか、「あ、本気なんだな」と感じられたし、とにかくクオリティが高くて見応えがありました。

ジブ ゲームのオープニング映像は2Dキャラにセリフの字幕を入れるだけみたいなパターンが多いんですけど、よく観るような内容は嫌だなと思っていて(笑)。ちゃんとした作画アニメーションで作ろうと思っていたので、しっかりしたものができてよかったです。

渋谷を舞台にした理由

──「マジカミ」の舞台は渋谷です。渡辺さんも渋谷好きですよね?

渡辺 そうですね、渋谷にこだわりがあります。

ジブ 渡辺さんの渋谷へのこだわりというのは?

渡辺 僕は一応東京出身ではあるんですけど、もともと多摩市にいまして、渋谷はおのぼりさん状態で行っていた場所なんですよ。中学高校時代は渋谷にがんばっておのぼりして遊ぶというのを繰り返していたので、ずっと憧れの街という印象があって。原宿じゃなくて好きなのはあくまで渋谷で、ちょっといかがわしいものもありつつ、ライブハウスもあっていいなって。プラス僕は渋谷の道玄坂という地名が好きで、事務所も自分のお店も道玄坂にこだわって構えているのはやっぱり憧れからなんですよね。

ジブ うちのゲームで言うと、先ほど話したように「萌え」よりは「熱さ」を大事にしたかったので、ゲーム自体はスタイリッシュなものにしたかったんです。スタイリッシュという言葉からアーバン感を連想して、都会っぽさがあったほうがよくて、今どきの女の子たちが元気にみたいなのとかけ合わせると、もう渋谷しかないと思って。あと、これは後付けなんですけど、将来的には海外とかまで進出できたらいいなって個人的に思っていて。

──「マジカミ」をですか?

ジブ はい。日本の美少女ゲームは中国とか北米でけっこう注目されてるんですよ、今。クールジャパンみたいな要素がゲームの中に盛り込まれているとけっこうウケがよくて。そういう意味でも渋谷は「あ、東京の渋谷だ!」と海外の人にも認知してもらえるので、今後の展開を考えても舞台が渋谷でよかったかなと思ってます。