「マジカミ」ジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワン×渡辺淳之介 プロデューサー対談|主題歌はGANG PARADE、魔法少女が活躍するPCブラウザゲームがついに完成

PCブラウザゲーム「マジカミ」が6月26日にリリースされた。

「マジカミ」はDMM GAMESでスタートする“新世代型アーバンポップ魔法少女RPG”。東京・渋谷を舞台に繰り広げる青春活劇で、プレイヤーは12人の魔法少女たちを導く主人公となり、魔法少女と共に戦いながらストーリーを進めていく。主題歌およびゲームバトル中などの挿入歌はGANG PARADEが担当。それらの楽曲を4曲収めた音源「THE MUSIC AND THE GAME CREATES MAGIC」が配信リリースされ、発売を記念したライブを東京と大阪で開催するなど多岐にわたるコラボを展開している。

音楽ナタリーでは「マジカミ」プロデューサーのジブことジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワン(Studio MGCM)と、GANG PARADEやBiSHらを手がける音楽事務所WACK代表の渡辺淳之介との対談を実施。「マジカミ」プロデューサーによる熱烈なオファーを受けてGANG PARADEのタイアップが決定した背景や、ゲーム業界と音楽業界におけるプロモーションの大切さなどビジネス的な目線も交えて語り合ってもらった。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 佐藤早苗

なぜGANG PARADEなのか

──渡辺さんはゲームのプロデューサーとの対談は今回初めてですか?

渡辺淳之介 初めてですね。

──「マジカミ」のプロデューサーであるジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワンさんは、ゲームの開発がスタートした頃からWACKの所属アーティストに主題歌を歌ってもらいたかったそうですが。

ジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワン 3年半くらい前に「マジカミ」の開発がスタートしたんですけど、最初にゲームのコンセプトや方針を固めるんです。まだチームが大きくなる前でスタッフ10人くらいのとき、チームメンバーの1人が初代BiS(渡辺が最初に手がけたアイドルグループ)さんのことを好きでずっと追いかけていたんです。「マジカミ」のメインキャラクターは魔法少女で、パワフルさがありつつもスタイリッシュでハチャメチャ!みたいな部分がありまして、「リンクする部分があるよね」とチーム内で当時よく話していました。それからしばらくして、実際に主題歌をどうしようかという話になり、ダメもとでお願いしに行ったのが渡辺さんとの出会いになります。僕らは萌え要素の強いゲームではなくて、シナリオで盛り上げて、バトルの熱さをユーザーに感じてもらうことを大事にしようと思っていて。魔法少女は女の子からしたら憧れの存在になるはずだし、美少女ゲームという側面でも男の子から見たときにやっぱりかわいい存在でなきゃいけない。大人が楽しむゲームとして、パワー感とかスタイリッシュさとか、カッコいい部分をアピールしたいという思いがWACKさんに所属なさっているアイドルたちにぴったりだなと。

左からジ・アブソリュートリー・パーフェクト・ワン、渡辺淳之介。

──確かにWACK所属グループはアイドルらしからぬ破天荒な展開をしてきましたね。

ジブ アイドルという存在だけど、派手なプロモーションがあったり、ムチャクチャなことをやらされていて(笑)。でも曲が超カッコよくて、ライブが超エモい。「マジカミ」もそういう要素ありきで作れたらいいなと思っていたので、お願いさせていただきました。

──どういう形でオファーをしたんですか?

ジブ エイベックスさんにつながりのある方がいまして、BiSHさんがエイベックスからメジャーデビューするタイミングだったこともあり、WACKさんには直接連絡せずにエイベックスの方に「BiSHさんにオファーお願いできないですか?」と話を通してもらったんですけど、大人の事情で実現できなくて。ただBiSさん、GANG PARADEさんなどWACKのアーティストに共通するバイブスを感じていたので、どなたか可能なグループがいれば、ぜひともやってほしいという気持ちに変わりはなく、次はWACKさんに直接連絡してオファーしました。

渡辺 エイベックスの方たちは、18禁要素があるところを懸念していたんでしょうね。僕自身はあんまりそういう部分に関するアレルギーがないですけど。直接オファーをいただいた際に長文のメールが送られてきまして、熱意をもって連絡をいただけたことが僕自身うれしかったです。とりあえず1回話を聞いてみようと思いながら、「じゃあどのグループだったらできるんだろう?」と考えた末に提案させていただいたのがGANG PARADEでした。当時のGANG PARADEはなんでもやるイメージだったこともあって。

ギャンパレは今、一番勢いがある

──タイアップのオファーから3年半の間にギャンパレはメジャーデビューをするほど躍進しましたね。

渡辺 ちょっと開発が遅れていただいたおかげで(笑)。

ジブ ははは(笑)。

GANG PARADE

渡辺 非常にいいタイミングだと思いますよ。メジャーデビューもして、野音ワンマンも成功させて(参照:新生GANG PARADE、5年で到達した満員の日比谷野音ワンマンで新たなスタート切る)。今、一番勢いあるんで、オファーをいただいた当時よりすごくお得な条件だと思います(笑)。

ジブ 開発は遅れましたが、結果的にいいタイミングになってよかったです。

渡辺 タイアップ曲は楽しく制作させてもらいました。もともとWACKのグループを好きでいてもらっていたので、変なやり取りが発生することもなく楽しくやらせてもらった印象です。けっこう前に作った曲なのであんまり覚えてない部分もありますけど(笑)。

ジブ それこそレコーディングはEMPiREさんがデビューした時期だったと思うので、もう2年半以上前ですね。

渡辺 音楽業界におけるリリースタイミングって、1、2カ月後にリリースするという予定が決まってから曲ができて、発売という流れが多いんですけど、やっぱりゲームの開発って時間がかかるし大変だと思いました。忘れた頃にまたご連絡をいただいたこともあったし。

ジブ ははは(笑)。

渡辺 僕も「そういえばあの件ってどうなったんだろう?」なんて思う暇もなく動いているので、連絡が来て「あ!そうだそうだ!」と思い出すようなときもあって。ゲームは開発と同時にいろんなものが進んでいくと思うので大変だと思うんですけど、「マジカミ」は最初にお話いただいたコンセプトからほぼブレてないんですよ。

ジブ まったくブレてないです。

渡辺 もう最初に聞いた構想のまんまの感じで制作しているんで、すごいなって。仮に僕がプロデューサーで、ゲーム開発に3年間とか費やしていたら、やりたいことがどんどん変わっていきそうな感じがします。もうやっぱり18禁の部分はやめようとか(笑)。本当にジブさんのブレなさはすげーなと思いましたね。

ジブ すごく細かいところでいうともちろん変更点はあるんですけど、大枠というか根幹は変わってないですね。

人生を変えるゲーム体験

──開発のスタート地点からブレていないという「マジカミ」のコンセプトについて聞かせてください。

ジブ 「ポップ&ロック」なゲームを作って、「人生を変える魔法少女体験」をユーザーに与えるというのがざっくりとしたコンセプトです。せっかく作るからには、プレイしてくれたユーザーさんに「このゲームに出会えてよかったな」と思ってもらいたいし、少しでも「影響を受けた」と感じてもらえるようなゲームにしたくて。ゲーム好きでも音楽ファンでも皆さんそんなふうに影響を受けた作品とかやコンテンツがあると思うんですけど、そういうものの1つになったらうれしいという意味で「人生を変える魔法少女体験」と言わせていただいています。ゲーム自体にももちろんそういう要素を詰め込んでいます。

──続いてゲームの概要の説明をお願いします。

ジブ 主人公と魔法少女の女の子たちが、抗えない世界の仕組みみたいなものに立ち向かっていくというのがストーリーの本筋になります。ゲームの中にいろんなことが起こりそうな可能性が散りばめられていて、いわゆる“世界線”みたいな概念の世界にギミックが盛り込まれています。なので「あったはずのできごとがなかったことになっている」と疑問が湧く部分があるのはもちろん、「自分の未来を変えられるかもしれない」という気持ちになる要素がたくさん出てきます。「キズナストーリー」というのがあって、例えばAちゃんと恋人という展開のシナリオだけじゃなくて、BちゃんバージョンCちゃんバージョンも用意していて、ゲームで特定のキャラクターをたくさん使っているとだんだん解放されていくシナリオになります。そこでは渋谷にいる元気な若い女の子という見た目なんですけど、誰にも話せない秘密とか、心に傷を負っているといった設定を魔法少女の子たちそれぞれに用意しています。乗り越えないといけない壁があって、それを乗り越える子もいますし、そうならない子もいる。自分の中でケジメを付ける子とか、女の子たちが自分自身で人生を変えていく展開も「キズナストーリー」の見どころの1つです。

渡辺 音楽制作にも通じる部分がありますね。ちなみに友達のイラストレーターにJUN INAGAWA(BiSHのアルバム「CARROTS and STiCKS」などのアートワークを担当)って奴がいて、彼がよく言ってたのが「俺の人生を変えたのは、『妹ぱらだいす』(2011年発表のアダルトゲーム)だ」と。それを聞いて僕は「あ、こんな世界があるんだな」と感じたんですけど、彼はずっとそのゲームをやっていたからこそ、今の画風とかいろんなものがあるとも言っていて。僕も何かの作品に触れることで「これがあるからまだ生きておこうかな」と思えることがあります。クリエイターやリスナーにも影響を与えるものであってほしいという気持ちがあって、それは自分の作るものやこれまでの体験に重なりますね。

ジブ エロゲーのおかげで人生が変わったという人、けっこういるんですよね。