雑音を楽勝でかわして、音楽で楽しもう
──「オカマイナシ」の歌詞の中に「雑音の嵐」という言葉が出てきます。マックジャックにはポップな側面もありますが、そういうスタイルに対しての“ノイズ”みたいなものはあるんでしょうか?
M.C.L たくさんありますね。今でこそノイズが聞こえないぐらい突っ走って、振り切ってやってるんですけど。僕らみたいに楽しい要素やポップな要素が入っていることに対して、「あいつらレゲエじゃない」みたいな煙たがられ方をしてた時期もあったんで。そういうことに対しても「オカマイナシ」という気持ちから「雑音の嵐」という言葉を入れました。自分たちもアンダーグラウンド育ちなんで「ナメんなよ」と思うし、歌詞にある通り「アンチも燃料」という感じですね。
ALI 今は情報社会なので、気付いたらいらん情報とかも生活の中に入り込んできてると思うんですよね。でも、そういうものを全部取っ払って、マックジャックでブチ上がってくれよというメッセージでもあります。聴いてくれてる人たちも雑音を楽勝でかわして、音楽で楽しもうぜって。
──中島みゆきの「ファイト!」をビートジャックし、自分たちの歌詞を加えたカバーをライブで披露していますね。あのアプローチはそういった“雑音”のもとにもなると思うし、正直に言えば、僕も最初に聴いたときは違和感を感じました。ただパフォーマンスが進むうちに、とにかく本気で歌っているし、これは話題作りでもなんでもなくて、マックジャックにとってのパワーミュージックを自分たちの形として表現したいんだなと気付かされたし、聴く人を勇気付けたいという純粋な思いが伝わってきました。
ALI 「心に太陽」や「アンセム」のように、これまでもマックジャックは高校野球の応援歌を務めさせていただいて。そこで、じゃあ自分たちが野球に打ち込んでたときにファイトソングになってた曲は何か?と考えたときに、中島みゆきさんの「ファイト!」が浮かんだんです。それでカバーさせていただいて。魂を込めて歌ってるし、聴いてくれる人に届いたらいいなと思います。
M.C.L 今はライブだけで披露してるんですが、いつか音源として形にしたいですね。
こっ恥ずかしいところを曲にして思い切って出しちゃえ!
──純粋さという意味では、既発曲の「マイメン」に、梅田サイファーのKOPERUを迎えた「マイメン'91 feat. KOPERU」も、とにかくまっすぐに友情の形を曲にしています。
M.C.L この曲こそ、マックジャックの4人やからこそ書けた曲。高校時代に寮生活を一緒にしてたり、JAGAと俺は中学3年間、同じクラスやったり。マックジャックの活動も含めて自然とリリックが出てきましたね。これは早かったっす。
CHAI すぐに言葉が出てきました。
JAGA-C 僕のリリックはM.C.Lとの帰り道の風景を描いていて。具体的なエピソードやし、その思い出の映像をどうやって歌詞として具現化するかということを心がけました。
──なるほど。
JAGA-C ホンマやったら自転車に2人乗りしてたとか入れたかったですけど、「今の時代、2ケツはあかんかなー」とそこは変えました(笑)。
──ハハハ。でも、ゆずの「夏色」に怒る人もいるみたいですからね。「坂道を2人乗りすんな! 危ねえだろ!」みたいな
CHAI えー! やっぱり雑音の嵐や(笑)。
──「お前は俺の最高なトモダチ」のように近くにいる友達に向けて、友情や感謝をまっすぐ歌うことに気恥ずかしさはないですか? マックジャックの場合は友人でもあり、メンバーでもあるのですが。
M.C.L 恥ずかしさはなかったですね。知らんでいいことも知っちゃってるがゆえに(笑)。
JAGA-C この曲を制作するとき、「やっと来たか!」とみんなで思ったぐらいで。
ALI 逆に一緒に時間を共有しすぎてるからこそ、こっ恥ずかしいところを曲にして思い切って出しちゃえ!というのはあったかもしれないですね。
──曲だからこそ、出せるというか。
ALI そうですね。自分たちの歌詞に自分たちがグッとくるような瞬間はライブとかで歌っててもありますね。
M.C.L 僕らライブで肩を組むんですけど、いつも「すごいな」って言われるんですよ。梅田サイファーのKBDさんとか「あんなんええなあ! うらやましい!」って(笑)。
──ハハハ。さすが熱い男(笑)。でも、その友情の光景はライブで見ると、すごく美しく見えるんですよね。
CHAI 「マイメン」ってみんな叫んでくれます。初見のお客さんも。
ALI 泣いてる人もけっこういますね。ライブに来てくれるお客さん同士も肩を組んでくれるようになっていて、その輪がどんどん大きくなっていったら僕らとしてもうれしいです。
神戸の街を背負ってトップに立ちたい
──KOPERUさんが楽曲に参加した経緯は?
M.C.L KOPERUはALIの中学の同級生なんですけど、「Atty!Atty!」でコラボした経緯もあって、ライブにもよく遊びに来てくれるんですよ。あるとき、「『マイメン』でウルッときたわ」と言ってくれたことがあって、そこでさらに距離が近付いて、よりマイメンになった気がしたんですよね。そこから一緒に「マイメン」をやりたいよね、という話が始まって、自然な流れで今回のコラボに至りました。
ALI 今回のEPに入れるかどうかも決めずに、楽曲の制作を進めていったんです。
CHAI 「じゃあ歌ってよ」ぐらいの感じで。
M.C.L KOPERUが入ったことで、聴き手にメッセージが当たる角度も変わったし、僕らにとってもすごく新鮮な1曲になった。ミュージックビデオもALIとKOPERUの母校で撮ったんですよ。
ALI まさかお互いに卒業した中学でMV撮るようになるとは。仲よくなったのは最近なんですけどね(笑)。
──前回のインタビューで、中学のときはほぼ話したことがなかったという事実が明らかになって(笑)。
ALI 母校で見るKOPERUは普段の彼と違う、「地元の友達」な部分もあって(笑)。
──「KOBE SONG」も今作の中で重要な曲だと思います。神戸は皆さんにとってどんな街ですか?
CHAI 「何県出身?」って聞かれたら「神戸」と答えますね。
──横浜の人が神奈川出身と言わない感じで(笑)。
CHAI 神戸の人って、みんな神戸出身であることを誇りに思っている感じがして。人柄的にはクールに見えて、中身は「Atty!Atty!」なところが強いなと思います。
M.C.L 「震災を乗り越えた街」というのも大きいと思いますね。僕らは当時2、3歳だから、震災の記憶はそこまでないんですけど、やっぱり当時の話を聞くことも多くて。
──この曲の中にも「悲しみのONE DAY」という歌詞が出てきますね。
JAGA-C 「幸せ運べるように」というのは、震災復興に向けた曲のタイトルから取ったんですよ。
CHAI 神戸の人はみんな知ってる曲ですね。
M.C.L だから「あきらめない心」というか、立ち上がって、困難に立ち向かっていくスピリットというのは、みんな持ってると思いますね。それはマックジャックにも通底するものだし、神戸の街を背負ってトップに立ちたい思って動いてます。
──ALIさんは大阪出身ですね。
ALI 神戸はめっちゃおしゃれして遊びにいかなあかん場所という意識がありました。今は神戸に住んでるんですけど、とにかく住みやすいし、おしゃれさと住みやすい雰囲気がちゃんとつながってる街だなと思います。
JAGA-C 上品できれいな街やから、少し物足りないと思って、僕は大阪で一人暮らししてるときがあったんですよ。離れて改めてわかったんですけど、やっぱり神戸はいい街ですね。
CHAI 神戸って方角も簡単なんですよ。北に行くことを「上に行く」、南に行くことを「下に行く」って言うんです。
──山側が北で上、港側が南で下と。なるほど。
CHAI だからほかの地域から来た人に、「あそこの角を上に行って」って説明すると「どこ飛ぶねん!」とか言われます(笑)。
M.C.L 僕は歌詞で「本山南小 中 卒業」と自分の出身校を歌ってるんですけど、路上ライブで歌うと「俺も」「私も!」みたいなレスポンスがありますね。で、「何年卒業?」みたいな(笑)。
──ALIさんも実際にあるお店の名前を歌詞に織り込んでいて。
ALI 逆に僕は神戸生まれではないからこそ、あえて新しく親交が生まれたお店の名前を出すことで、「今の自分たちのホーム」を形にしたくて。
CHAI 生田川、夏のみなとまつり、ヴィッセル神戸、ルミナリエ……自分が楽しんだものをみんなに知ってほしいなと思って。特に路上で「KOBE SONG」を歌ってるときは、「これは神戸の中心で愛を叫んでるな!」って思います(笑)。
──ドヤ顔しなくても(笑)。
ALI でも「ここまで地元への愛をまっすぐに歌えるやつ、ほかにおらんやろ」って自分で自分に酔いしれてますね。
梅田クアトロを祭りにすることが今の目標
──関西の先輩であるMINMIさんとの「風林火山」、大阪の若手レゲエDeejay・CORONAさんとのダンスホール「Vibes Brother Z feat. CORONA」と、ほかの収録曲を含め、とにかくエネルギッシュなEPになったと思います。そのうえでのこれからの動きを教えてください。
M.C.L EPリリースの翌日、11月2日には「Atty!Atty!KOBE」というイベントが神戸であります。そして来年1月19日には梅田CLUB QUATTROでワンマンがあって、それがこの「Vibes Wonderland」が最終形になるところだと思ってるんで、そこを目指して全力で突き進んでる状況ですね。
ALI このEP自体、梅田クアトロでのワンマンを意識しながら、「あのステージでどういう曲を歌うべきか」「どうやってお客さんを盛り上げるか」ということを意識して作ったEPなので、ぜひワンマンライブに来てもらうしかないですね。
CHAI 「オカマイナシ」マインドがこもった、「これがマックジャックやぞ!」と見せつける大きな舞台だと思ってます。ただ、それもすべて大きな目標である甲子園球場でのワンマンまでの道のりの1つやと思うし、ここでバーンとカマして次につなげたいと思いますね。そのためにクアトロを祭りにすることが今の目標です。
JAGA-C 「見とけ! これがマックジャックや!」ぐらいの気持ちです。それぐらいバイブスが高まってます。
M.C.L もうホンマに自信は付いてきてるんですよ。あとは気付かれるだけだなと思いますし。今後は、どうやって自分たちを知ってもらえるか、という動きが重要になってくると思うので、このEPでもっとその範囲を広げたいし、それができる作品やと思いますね。
公演情報
MACK JACK presents Atty!Atty!KOBE!
2024年11月2日(土)兵庫県 神戸VARIT.
OPEN 16:00 / START 16:30
<出演者>
マックジャック
ゲスト:ISSEI TERADA / コペテツ(KOPERU&teppei) / ジャガ先輩 / ちーかまん
マックジャック ワンマンライブ~Welcome To Vibes Wonderland
2025年1月19日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
OPEN 16:15 / START 17:00
プロフィール
マックジャック
M.C.L、CHAI、ALI、JAGA-Cからなる神戸在住のレゲエクルー。メンバーは全員元球児。野球部寮のミニコンポで聴いたレゲエに衝撃を受けたALIとM.C.Lにより2012年に結成、そこにCHAIとJAGA-Cが合流し本格的にライブ活動をスタートする。2014年にジャマイカへと渡り、本場でのスタジオワークやダンスホールの熱気に触れることでレゲエに対する愛をさらに深める。2017年に1stアルバム「Bellyas」、2019年に2ndアルバム「ENERGY」をリリース。2023年7月リリースのシングル「アンセム / 走りだせ」の収録曲「アンセム」がフジテレビ「ジャンクSPORTS」エンディングテーマに使用されるなど話題を呼ぶ。2024年5月に梅田サイファーのKOPERUとteppeiをフィーチャーした配信シングル「Atty!Atty!(熱!熱!) feat. KOPERU&teppei(from 梅田サイファー)」を発表。11月にEP「Vibes Wonderland」をリリースした。
マックジャック / MACK JACK lit.link(リットリンク)
マックジャック/ MACK JACK (@MACK___JACK) | X