神戸を拠点に活動する4人組レゲエクルー、マックジャックの新作EP「Vibes Wonderland」が11月1日に配信リリースされた。
梅田サイファーのKOPERUとteppeiをフィーチャーした「Atty!Atty!(熱!熱!) feat. KOPERU&teppei(from 梅田サイファー)」、メンバーが敬愛するMINMIが参加した「風林火山」といった強力なコラボ曲をこの夏に発表して話題を集めたマックジャック。新作EPにはそれらのシングルに加え、自己紹介的なナンバー「オカマイナシ」、地元・神戸をレペゼンする「KOBE SONG」、若手実力派レゲエDeejay・CORONAとタッグを組んだ「Vibes Brother Z feat. CORONA」、グループの“マイメン”であるKOPERUを迎えて人気曲を再録した「マイメン'91 feat. KOPERU(from 梅田サイファー)」といった全6曲が収められた。タイトル通り、バラエティ豊かな“バイブス”が充満する新作を完成させたマックジャックにホームタウンである神戸で話を聞いた。
取材・文 / 高木“JET”晋一郎撮影 / 河上良(bit Direction lab.)
俺らのバイブスをリスナーにチャージして欲しい
──今回はマックジャックの本拠地である神戸でお話を伺えればと思います。4人はバックDJのKONAMONさんを含めた体制で、三宮駅前で路上ライブをされているので、このページの写真撮影も三宮駅付近でお願いしました。
CHAI 路上ライブはもう2年以上やってますね。
M.C.L 回数としては数え切れないぐらいやってますけど、毎回緊張しますね。今でこそファンが来てくれるけど、最初はホンマにお客さんゼロやったんで。
CHAI 呼び込みやったもん。「マックジャックです! よろしくお願いします!」みたいな。
ALI ライブハウスとは全然違うよな。
M.C.L でも、それが俺らの泥臭いスタイルに合ってたし、路上ライブを通してより神戸が好きになってますね。神戸のアーティストという自覚が強くなってます。
──ここ最近はライブイベントやフェスへの出演が増えていますね。
M.C.L ありがたいです。今年の夏はフェスと並行して今回のEP「Vibes Wonderland」の制作も進めることができて。
ALI マックジャックに集中できてるよな。
M.C.L これはもう流れが来てますね!
CHAI リーダー(M.C.L)は、いつも「流れが来てる!」としか言わないんですよ(笑)。
M.C.L 最強ポジティブです(笑)。
──それもマックジャックらしいですよね。今回のEPもとにかくポジティブなエネルギー、バイブスに貫かれていて。
M.C.L マックジャックといったら「バイブスがヤバい!」というのがモットーだし、「バイブスのテーマパークにウェルカムする」「俺らのバイブスをリスナーにチャージしてほしい」というのが今作の大きなコンセプトで。
──「Vibes Wonderland」というタイトルはどこから?
M.C.L 「オカマイナシ」の制作の中で、CHAIが「Welcome To Vibes Wonderland」というフレーズを書いてきたんですよね。
ALI 「オカマイナシ」は制作の最後のほうに完成したんですが、そこでCHAIが出してきたリリックを見て、みんなで「それええやん!」って。
CHAI EPを作る前から、マックジャックはどんなアプローチをしてるグループで、どんなライブをするのかという部分を短く表現できる言葉が欲しかったんですよね。それで「バイブスの動物園?」とか(笑)。
──M.C.Lさんも「I'm VIBES GORILLA」と言っているし(笑)。
CHAI でも「せめて人間かな……」と(笑)。それを考えてるときにパッとこのフレーズが浮かんで、作品も自分たちも表現する言葉やなって。だから「流れが来た!」っていう感じです。
M.C.L CHAIにもついに来たか、流れ(笑)。
自分では気付かない部分を言い合える関係性
──その意味でも「オカマイナシ」は自己紹介的な曲ですね。
ALI ベースになる曲はあって、すでにライブで披露していたんですね。今回はそれをさらにブラッシュアップして作品に落とし込んで。
JAGA-C リテイクを重ねて細かいところまで修正しました。
M.C.L 「俺らにとって『オカマイナシ』なものってどんだけあんねん?」というのを、みんなで探して。
JAGA-C リスナーだけじゃなくて、自分も強くなるような曲にしたかったんです。
CHAI そういう曲をずっと作りたいと思ってたんだけど、なかなか思い描くものができなくて四苦八苦しましたね。でも最終的には聴いてるだけでアドレナリンが出るような楽曲に仕上がったかなと思います。
──着地点がなかなか見つからなかった理由は?
ALI 内容はもちろん、細かい言葉選びや韻の聞こえ方も面白く、サビはキャッチーな感じで、それぞれのヴァースではインパクトのあるメッセージを突き刺したい……そのこだわりですね。
M.C.L 梅田サイファーのKOPERUとteppeiと一緒に曲(「Atty!Atty!(熱!熱!) feat. KOPERU&teppei(from 梅田サイファー)」)を作った経験も大きかった。
ALI 「コペテツやったらどうするかな?」って。
CHAI 制作中に何回名前が出たか。
M.C.L 「Atty!Atty!」のとき、僕らの考えたサビに「ここはもっと踏めるんちゃう?」みたいなアドバイスをくれたし、2人の細かいこだわりやブラッシュアップは絶対に忘れたらあかん。だいぶ妥協できへんなと。
JAGA-C あの2人との経験は大きいですね。
──そのうえで「自分たちは何者なのか?」というパーソナリティをどう精度を高めて表現するかという。
CHAI 例えば「甲子園というワードはM.C.Lが言わなあかん」「この軽快な感じはALIと俺」「『レッドカーペット敷いとけ』はJAGA-Cしか言われへん」みたいな、そういう部分も話し合いましたね。
JAGA-C 僕は今日も赤を着てますからね(笑)。
CHAI JAGAが敷かれてほしいぐらい(笑)。以前は歌詞を書くときに「俺はこんな感じ」みたいにそれぞれが自己完結してたんですよ。でも今は「お前やったら、もっとこういうこと言ってほしい」とか、メンバー同士でブラッシュアップするし、「マックジャックとしてどうあるべきか」ということに真摯に向きあって、言葉を突き詰めるようになりました。マックジャックの打ち出したい世界がより明確になったと思いますね。
ALI 自分では気付けない部分をメンバーに教えてもらうし、それを言えたり気付けたりするのはこのメンバーだけなんで、それを信じて突き進もうと。今回の作品でも、それぞれの色が今まで以上に出ていると思いますし。
──ある種の「キャラ立ち」が確立してきた。
ALI そうですね。
ジャンル関係なく“オカマイナシ”でブチかましたい
JAGA-C ただ僕は最初、グループ内での自分のキャラに抵抗があったんですよね。僕が理想とするものと全然違う部分もあったんで。
──“理想”というのは作品のイズム的な部分ですか?
JAGA-C いや……「俺はオモロい系なんかな?」って。
──あ、自己イメージの部分で。
ALI カッコいい系やと思ってた?
JAGA-C そう!
(一同爆笑)
M.C.L そうなんや(笑)。
JAGA-C カッコいい系が理想やったんで。
──ライブでスナック菓子を会場に撒いたりするコミカルさもJAGAさんの特徴だけど、それが自己イメージと擦り合わなかった。
JAGA-C でもホンマのカッコよさって、自分の場合はオモロいことを突き抜けてやることだと気付いて。それからは理想的な方向に進めるようになりましたね。だから、今ノッてるって感じです。
ALI 「なんで俺こんなことさせられてんねん……」じゃなくて?(笑)
JAGA-C 全然! 本当にカッコよさに気付いたっす。
──JAGA-Cさんの声の通り方やボーカルワークは素晴らしいし、カッコいいと思いますよ。
JAGA-C ありがとうございます。照れますね。
──そこは照れるんだ(笑)。最後のサビのエピソードは実話ですか?
M.C.L 「漢字読めません」は全員ですね。
CHAI 「職質Everyday」「スマホをレンチン」はJAGA-Cで。
JAGA-C 泥酔して冷凍グラタンを温めようとしたら、間違ってスマホをチンしちゃったんですね。すぐにバチバチし始めて「あ~、最近のグラタンは光るのか……ええ!?」みたいな。
──危なすぎる!
JAGA-C すぐ気付いて無事でしたけど、あれはびっくりした(笑)。
M.C.L 職質もよくされてるよな。
JAGA-C 三宮でしょっちゅうされてる。
M.C.L JAGAが職質されてるところに通りかかったら俺に声をかけてきて、「やめろ!巻き込むな!」みたいな(笑)。
──完全にドキュメントだったと(笑)。「オカマイナシ」はディスコファンクっぽいサウンドで、それが意外でした。
ALI ライブの登場とか、序盤でアピールする曲になってくると思うんで、僕らのことを知らない人がパッと聴いても「こいつら面白そうやな」とワクワクしてもらうことを重点的に考えながら作っていった感じですね。結果、あのファンク感のあるトラックがふさわしいのかなって。
M.C.L そこも「オカマイナシ」な感じですよね。レゲエのトラック、リディムじゃなくても、俺らの言葉が乗ったらマックジャックの曲になるという。
──それはマックジャックというグループに対する自信の表れでもありますよね。
M.C.L ジャンル関係なくブチかましたいという思いが強いんで、どの現場でも、どんなサウンドでも、マックジャックを表現したい。
CHAI 逆にレゲエって、どんなトラックでも乗せて歌えるというのが強みだし、それが「オカマイナシ」で表現できたのかなと思います。やらなきゃいけないこと、突き詰めていかなきゃいけない部分もありつつ、「俺らはこうや」って部分がやっと確立できたのかなと。
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雑音を楽勝でかわして、音楽で楽しもう