音楽ナタリー Power Push - 町あかり
あのコは自然派、歌謡乙女
「ア、町あかり」を形作るもの
──メジャーデビューアルバム「ア、町あかり」にはごく初期の楽曲から今年作られたという最新の楽曲まで収められていますが、選曲基準はどのように？
なるべく前回のアルバムとかぶってないものを選びつつ、自分が好きなものを混ぜたり、プロデューサーさんにも考えてもらったり。
──とりわけ気に入っている曲は？
やっぱり「もぐらたたきのような人」ですけど、このアルバムだったら「横浜のすずめ」が好きですね。私、あんまり自分の曲は聴かないんですけど、「横浜のすずめ」は新しいアレンジがすごくいいので、よく聴いちゃいます。
──「コテンパン」も「もぐらたたきのような人」に並ぶ、町さんを代表する楽曲の1つですね。オリジナルも新しいバージョンも、ちょっとテクノ的なアレンジが印象的ですが。
これもそんなつもりはなかったんですけど、プリセットで作っていたらなんとなくテクノっぽくなって。この曲はただこういう内容の歌が歌いたかっただけなんです。聴いた人がすっきりした気分になればいいなって。
──新曲「ちょっとここじゃあ言えません」は、メジャーデビューアルバムを出すに当たって書き下ろしたもの？
いえ、単純に最近作った曲ですね。メジャーデビューがまだ決まってない時期に。
──曲の雰囲気がお祭りっぽいのはなぜなんでしょうか。
お祭りみたいな曲をずっと作りたくて。自分で作ったトラックはもっとドンドコドンドコしてたんですけど。いつかもっと祭り風にアレンジして歌ってみたいです（笑）。
──「No Problem（お安い御用）」はほぼ英語詞という、町さんの中では異色の楽曲ですけど、英会話の教科書みたいな言葉使いのようでいて、リフレインのちょっとしたバランスがすごくよくて、「お安い御用」だけ日本語で出てくる感じもいいですね。
ホントですか!? 全然こだわりませんでした（笑）。あんまり複雑にすると忘れちゃうから、なるべくシンプルに。
──言葉に対しても深い意思や意図はない。作曲やアレンジで「これは誰々のオマージュで……」とリスナーが考えてしまう部分も、ほとんど偶然でしかないと。
ホントそうなんですよ。これはどういうことなんですか？って聞かれても答えられないから、いつも申し訳ないんですよね（笑）。
殿さまキングスみたいになったらすごいじゃないですか！
──では町さんはこれからどんな歌手になっていきたいと思ってますか？
作る曲が著しく変わることはないかなと思うんです。今作ってるのもそうですし、これから作る曲もそうですけど、とにかく広まってほしいですね。歌詞の内容は「男の人に遊ばれた」みたいな大人の歌だけど、それを子供があんまりよく知らずに歌うみたいな現象が私は好きなんです。殿さまキングスを聴いた子供が「お母さーん、操（みさお）って何？」って言ってるみたいな（笑）。私の曲でも「そんな歌うたっちゃダメよ！」みたいな現象が起きてほしいって思います。
──とにかく自分が作った曲を世間に浸透させたい、というのが目標なんですね。例えばオリコン1位になるとか、紅白に出たいとか、具体的な目標ってあります？
そうですね……。もちろんアルバムは売れてほしいですけど、あんまり具体的なものはなくて。200万枚売れたいとか武道館に出たい、というのはわかんないですね。お茶の間レベルで「もぐらたたきのような人」が認知される、みたいなのが一番いいです。
──次回のアルバムの構想とか、コンサートとか、今後やってみたいことは？
それもあんまりないんですよね。よくわかんないのでなんでもいいです（笑）。今後のことを聞かれてしまうと困っちゃいますね。なぜ答えられないのかも自分でもわかんないです。欲はあるんですけどね。だって殿さまキングスみたいになったらすごいじゃないですか！
──唯一の具体例が殿さまキングス（笑）。でももし本当にお茶の間レベルで広く認知されれば、テレビに引っぱりだこになったり、分刻みのスケジュールで動かなきゃいけない状態になる可能性もあるわけですよね。それをうまくやっていく自信はある？
「疲れたな」とか「やだな」って思うかもしれないですけど、ちゃんとやるとは思います（笑）。
──自分自身を世間に浸透させたい、というよりは本当にただただ「自分の創作物が世に広まってほしい」という感覚なんでしょうね。忙しくなるのはちょっと面倒だけれど、自分が作り出した曲がたくさんの人に知られている状態はうれしいと。
それです！ 結論出ました（笑）。注目されて伝説のスターになりたいっていうのはないです。なれればそれでもいいですけど。自分で何か作った時点でも満足だけど、それを見た人、聴いた人に「楽しい」と言ってもらえたらもっとうれしい、みたいな。
──「ピコピコハンマーを持っている人」という、いわゆる色モノ的な形で注目されるのはイヤですよね？
そんなにすごく面白いことをしているわけではないので困っちゃう（笑）。でも広まるのならいいですけどね。色モノとしてブレイクしたらそのときに考えます（笑）。
──ちなみに今もいくつか手がけていらっしゃいますけど、CMソングやほかのアーティストへの楽曲提供など、職業作家としての活動には興味はありますか？
難しい曲が作れないので……。でも1つのテーマに対して「こういう曲があったら面白そうだな」って考えるのが好きなので、お話があればやっていきたいなという感じです。
- メジャーデビューアルバム「ア、町あかり」2015年6月24日発売 / 2000円 / Victor Entertainment / VICL-64357 / Amazon.co.jp
- 「ア、町あかり」
収録曲
- ア、アイシャドウ
- もぐらたたきのような人
- それ分かる！
- さっきも聞いたわその話
- No Problem（お安い御用）
- ちょっとここじゃあ言えません
- 夢という小鳥
- 横浜のすずめ
- コテンパン
- お悩み相談室
町あかり（マチアカリ）
1991年生まれの女性シンガーソングライター。高校時代から作曲を行うようになり、大学在学中の2010年8月よりライブ活動を開始。2013年5月にテレビ朝日系「musicるTV」にて自身の活動が取り上げられ、綾小路翔（氣志團）、ヒャダインに絶賛された。同年10月には初のアルバム「町あかり全曲集 その1」をリリース。2014年7月に東京・LIQUIDROOMにて行われた電気グルーヴのワンマンライブでは、オープニングアクトとして出演を果たした。2015年4月にビクターエンタテインメントからメジャーデビューすることを発表。同年6月24日にデビューアルバム「ア、町あかり」をリリースする。
