ピコピコハンマーも買ってきちゃって「持って歌わなきゃ」って状況に

──自主的にデモテープを送る売り込み活動は、その後うまく実ったんですか？

高校3年生のとき、今所属している事務所の方に声をかけてもらいました。「声がいいから興味あるんで、お茶しよう」みたいな感じで。それが大学に入る直前でしたね。送ったのは確か「横浜のすずめ」だったと思うんですけど、曲は「なんか変だね」って言われて（笑）。でも何が変なのかあんまりよくわかんなくて。

──それをきっかけに歌手としての活動が本格的にスタートしたと。

最初は「曲はいっぱい作ってあるから、ライブハウスで歌ってみよう」ということになって、事務所の方に一緒にライブハウスを探してもらって……みたいな流れでしたね。

──初めてステージに立ったときはどうでしたか？

すごく緊張しました。「もうやりたくないよ」って思うぐらい（笑）。最初のライブはほかの人にギターを弾いてもらったんですけど、思っていた感じにはならなくて。2回目以降は今と同じく、自分で作ったトラックを流して歌うスタイルになりました。

──初期から歌われている「もぐらたたきのような人」は、町あかりという名前を世に知らしめた曲になったと思うんですけど、自分の代表曲ができたという手応えはありました？

最初はわかんなかったですね。「よっしゃ、これもう絶対みんなに聴いてもらえる」という感じは特になく。「コテンパン」もそうだったんですが、むしろ恥ずかしいけど歌う、って感じで。

──なんで自分が恥ずかしくなる曲を作ったんですか（笑）。

聴いてくれるみんなは楽しいかなと思って（笑）。最初に歌ったときはめっちゃ恥ずかしかったですね。この楽曲はライブだとピコピコハンマーを使うんですけど、初披露前にもう買ってきちゃって「これを持って歌わなきゃ」って状況になったのは覚えてます（笑）。

目的は「自分の楽曲が広まってほしい」

──メジャーデビューは、やはり感慨深いものですか？

特別感慨深いとかはあんまりないです（笑）。でも自分の楽曲が広まってほしいとは思っていたので、その手段としてはもう最高。ハッピーです。

──デビュー前にテレビ朝日系で放送中の「musicるTV」で取り上げられましたが、MCのヒャダインさんと綾小路翔（氣志團）さんに絶賛されたこともうれしかった？

そうですね。やったー！って感じでした。

──「スターになりたい」という願望はある？

あると思います。でも面白いものを作りたい、という気持ちの方が大きいかもしれないですね。なんだろう……うまく説明できないですけど。

──職業作家になりたいけれど、自分の作品に合った歌い手は自分だから、みたいな。

……うーん、難しくてよくわかんないですね（笑）。

──たとえばクレイジーケンバンドの横山剣さんは、町さんもフェイバリットに挙げている筒美京平さんに憧れて職業作家を志したそうなんですよ。でもシンガーとしての才能も高かった。町さんも同じタイプなのかなとも思ったのですが、そういうことを考える間もなく音楽を始めちゃったような……。

そうですね。うふふ（笑）。

本当はズレたくないですよ！

──メジャーデビューと聞いて最初に気になったのは、あの特徴的なサウンドがどうなるのかということでした。そのあたりはご本人としてはどう考えていましたか？

音のこととか全然わかんないですし、あんまり自分でトラックを作りたくなかったので、今回は別の方にアレンジをお願いできてよかったです（笑）。しかもすごいかわいくなっていたのでうれしいですね。

──オリジナルの持ち味は生かしつつ、ほどよくメジャー仕様に変わっているという印象でした。ただ「もぐらたたきのような人」は、ピコピコハンマーの音がリズムにぴったり合っていて「これがメジャーか！」と。

あははは（笑）。前のバージョン（2013年10月発売のインディーズアルバム「町あかり全曲集 その1」に収録）はズレズレなんですよね。

──あのズレは意図的なもの？

いえ、あれは時間ないからこれでいいやって直さないでおいただけで。「あんまわかんないでしょ」みたいな（笑）。

──はははははは（笑）。でもあのズレもたまらなくよかったんですよ。

本当はズレたくないですよ！ 自分でわざとズラしたわけではないです（笑）。