長谷川、初心に返る
──歌詞についても聞かせてください。目指す場所が月なのには、どんな思いがあったんでしょう?
はっとり 月に行くのって無理なんですよ。宇宙飛行士とか一部の人は除いて。でも、行きたい場所って、距離とか技術じゃなくて、「誰が連れて行ってくれるか」ということと、「自分がどれぐらい思い描けているか」が重要なんです。「FLY!/フライ!」に出てくるいろんな鳥は、一生のうちに見える景色はそれぞれ違うけど、せっかく羽が付いているんだったらどこまででも飛んでいきたいはず。つまり“行きたい場所”を思い描いてるんですよね。そんな鳥たちが一歩踏み出して自分の世界を広げていって、わかり合えないはずだったお互いの世界を共有していく……「月へ行こう」の歌詞はそんな映画のストーリーに通ずる部分があるけど、まずは曲を聴いて感じてほしいですね。
田辺 月って未知の場所だから、「FLY!/フライ!」のカモの家族が決断をして未知の世界に旅立っていく姿にリンクするし、春に公開される映画なので、映画を観た人が新しい環境に行くときに背中を押されるような曲になるんじゃないかなと思いました。
長谷川 歌詞の中で一番刺さった1行が……。
はっとり 俺、当てていい?
長谷川 うん。その1行を見て、ウッて昔の経験を思い出した。
はっとり うーん。「背中に乗った不幸をジョークにしないであげて?」。違う?
長谷川 違う。
田辺 「強い心より、軽い言葉を持って」。
長谷川 いや、違う。
高野 俺はそこだな。
長谷川 正解言っていい?
はっとり うん。
長谷川 「動き出す前の宇宙をつかまえる」っていう1行。僕、ヤマハのエレクトーンの先生になろうと思っていたときに、このバンドに人生をぶん曲げられてメンバーになったんですけど(笑)、そのときの気持ちを思い出しました。加入してからもまだ先生になる可能性はあったものの、その中でバンドのいろいろなことが動き出して、「先生になるって決めてたけど、もう引き戻せないかも。どうしよう」と思った。お客さんも全然いないし、増える兆しもなかったけど、その未知の世界に進んでみたら、いろいろな景色が見れたんですよね。当時の僕みたいに、新しいことをやるときに期待よりも不安を抱えている人はけっこう多いと思うんです。だから、そういう人にも刺さる歌詞なんじゃないかなと思いました。初心を思い出しましたね。
はっとり、高野を救う
──高野さんは「強い心より、軽い言葉を持って」という歌詞が刺さったんですか?
高野 自分も「FLY!/フライ!」の主人公のカモと同じで、引きこもりっていうか、リスクがあることはしたくないっていうか、臆病っていうか、必要ないことはわざわざやらなくていいっていうか、慎重派だし、消極的だし……。
はっとり (笑)。どうした賢也? 急にすごく暗いぞ。
田辺・長谷川 (笑)。
はっとり そのうち「俺なんて生きてる価値ないし」って言い出しそう(笑)。
高野 (笑)。「行ったことのない場所に行っても疲れるだけだ」って思うし、自分から動こうとしないんですよね。
はっとり 前置きはもうそのへんにして!(笑)
高野 (笑)。最近、風景写真を撮るのが趣味になっていて、まる1日休みがあると「このエリアはだいたい撮ったから、別のところに行ってみよう」って自然と思うんです。あと、僕はアニメが好きなんですが、「好きなアニメの聖地だから行ってみよう」と思えば自然と外に出られる。「もっと積極的に外に出るようにならなきゃ」とか「引きこもりをやめなきゃ」って意識するよりも、軽い気持ちでいるほうが簡単に外に出られるんですよね。先日韓国でライブをやったときも(「マカロック初海外GIG~한국 여러분, 만나서 반갑습니다!(韓国のみなさん、はじめまして!)~」)、「好きな声優さんが行ってた場所に行ってみたいから、メンバーも誘ってみよう」と思って誘ってみたら、すごく楽な気持ちでその場所に行けたんです。だから、この1行がすごく刺さりました。
はっとり 強い決心はいらなくて、軽い言葉や理由でその場所へ行ってみようって思えたんだね。
高野 そうだね。
はっとり 俺、引きこもりを救ったわ(笑)。
高野・田辺・長谷川 (笑)。
はっとり でも、今の話をまとめると、今の賢也を作ったのは趣味のカメラだよね(笑)。
高野 (笑)。あと、歌詞の話ではないんだけど、エンディングの「ラッパッパ」っていうコーラスは、歌録りが終わったあとに急遽追加されたんです。あのセクションがあることでシリアスな歌詞の曲がすっと軽くなっているところも僕はすごく好きです。
──「月へ行こう」はマカロニえんぴつにとって2024年第1弾シングルですが、今年はどんな年にしたいですか?
はっとり 2月下旬からファンクラブツアー(「マカロックツアーvol.17 ~思ひ出いっぱい☆地元へ帰ろう編~」)があって、3月下旬からホールツアー(「マカロックツアーvol.18 ~わたし、しばらく家を出ます!don't call マザー☆鈍行27本ツアー~」)もありますし、今年もライブがたくさん決まっているので、ちゃんとした演奏をしたいですね。韓国でのライブはすごく盛り上がった反面、演奏がちょっと雑になっちゃったんです。俺の歌もテンションが上がると落ち着きがない歌になっちゃうし。そのよさもあるんだけど、音大の先生が言ってた「レコーディングはライブのように。ライブはレコーディングのように」っていう境地にはまだ行けてないよね。テンションが上がって歌が上ずったりするのを“味”でごまかしたくない(笑)。
長谷川 “ライブ感”とかね(笑)。
はっとり そう(笑)。丁寧なのが大前提で、そのうえでダイナミクスのある演奏をしたいです。お客さんが声出しできるようになって、こっちもうれしくなって舞い上がるのはいいんだけど、内側で静かに舞い上がって、最初からクオリティの高いものを届けたい。
長谷川 うん、それは思うよね。
ツアー情報
マカロックツアーvol.18 ~わたし、しばらく家を出ます!don't call マザー☆鈍行27本ツアー~
- 2024年3月23日(土)神奈川県 相模女子大学グリーンホール
- 2024年3月30日(土)群馬県 ベイシア文化ホール
- 2024年3月31日(日)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)
- 2024年4月6日(土)宮崎県 宮崎市民文化ホール
- 2024年4月7日(日)鹿児島県 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
- 2024年4月10日(水)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 2024年4月13日(土)静岡県 富士市文化会館ロゼシアター
- 2024年4月19日(金)新潟県 新潟県民会館
- 2024年4月21日(日)長野県 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
- 2024年5月18日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2024年5月19日(日)岐阜県 長良川国際会議場
- 2024年5月25日(土)島根県 島根県民会館
- 2024年5月26日(日)岡山県 岡山芸術創造劇場ハレノワ
- 2024年5月29日(水)大阪府 オリックス劇場
- 2024年5月30日(木)大阪府 オリックス劇場
- 2024年6月8日(土)宮城県 仙台サンプラザホール
- 2024年6月9日(日)山形県 やまぎんホール(山形県県民会館)
- 2024年6月14日(金)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2024年6月15日(土)奈良県 なら100年会館
- 2024年6月22日(土)東京都 NHKホール
- 2024年6月23日(日)東京都 NHKホール
- 2024年6月28日(金)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2024年6月30日(日)北海道 帯広市民文化ホール
- 2024年7月4日(木)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2024年7月6日(土)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
- 2024年7月7日(日)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール)
- 2024年7月10日(水)福岡県 福岡サンパレス
プロフィール
マカロニえんぴつ
はっとり(Vo, G)、高野賢也(B, Cho)、田辺由明(G, Cho)、長谷川大喜(Key, Cho)からなる4人組ロックバンド。メンバー全員が音楽大学出身。2020年11月にTOY'S FACTORYよりメジャー1st CD「愛を知らずに魔法は使えない」、2022年1月にメジャー1stフルアルバム「ハッピーエンドへの期待は」をリリースした。2023年3月にEP「wheel of life」、8月にメジャー2ndフルアルバム「大人の涙」を発表。2024年3月に映画「FLY!/フライ!」の主題歌「月へ行こう」を配信リリースし、3月から7月にかけてホールツアー「マカロックツアーvol.18 ~わたし、しばらく家を出ます!don't call マザー☆鈍行27本ツアー~」を行っている。
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