マカロニえんぴつ|“青春”を繰り返しながらJ-POPシーンをひた走る

マカロニえんぴつがメジャー1stシングル「はしりがき」をリリースした。

本作は「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」の主題歌として書き下ろされた表題曲をはじめ、JFLのキャンペーンソング「listen to the radio」、ColemanのWeb CMソング「裸の旅人」、「JR SKISKI 2020-2021キャンペーン」のテーマソング「メレンゲ」とタイアップ曲4曲で構成されたシングル。音楽ナタリーではハイペースで曲作りに励むメンバーにインタビューを行い、本作の成り立ちについて聞いたほか、レコーディングでのメンバーの変化、はっとり(Vo, G)がつづる歌詞をほか3人がどう受け止めているのかなど、さまざまな話を聞いた。

取材・文 / 天野史彬

ここは俺が目立ちたい

──今日はシングル「はしりがき」についてお話を伺おうと思うのですが、すでに今作には収録されていない新曲「好きだった(はずだった)」がTBS系「王様のブランチ」のテーマソングになることも発表されていて、次々と新曲が世に出ている状況で。去年のメジャーデビュー以降、曲作りのペースなども変わっていますよね、きっと。

田辺由明(G, Cho) そうですねえ……ホントに、昨年末から時間があればずっとレコーディングしていますね。

はっとり(Vo, G) でも、これはうれしい悲鳴ですよ。確かに最近はすごく目まぐるしくて、何回もスタジオに入って1曲をゆっくり詰めていく作り方はあまりできていないんですけど、その反面、スタジオでのアイデア合戦が熾烈になっているんです。その場で出たアイデアをホットな状態で録ることができるようになっている。そこはいい部分だなと思います。そもそも粗や無駄な部分って、そのままで一番面白いもののはずなんだけど、時間をかけてブラッシュアップできすぎてしまうと、磨きすぎてツルツルにしちゃう場合もあって。そういう意味で、今は考えるより先に「面白い音を録っちゃおう」という作り方ができています。

田辺 その場その場で実験をしながらレコーディングしていくのは楽しいよね。みんなでゲラゲラ笑いながらやっているし(笑)。

高野賢也(B, Cho) レコーディングしながらアレンジを決めていくスタイルだと、ベースとドラムのリズム取りのときに上モノがどうくるのか、予想しながらフレーズを考えることになるんです。結局その予想は外れるんですけど(笑)。そういう中でも、例えば今回だったら「裸の旅人」のベースラインなんかは特に、「ここは俺が目立ちたいから、お前らは黙ってろよ」みたいな感じの部分をちょいちょい入れていったりして……。

はっとり田辺長谷川大喜(Key, Cho) (笑)。

高野 そういうことができるのも楽しいです。あと今回は、ずっとマカロニの曲をレコーディングしてくださっているエンジニアの池内(亮)さんという方が、「今までで一番ベースの音がよかった」って言ってくださって。

はっとり 確かにベースの音、渋いよね。昔はチャラチャラした音だったけど(笑)、最近は玄人っぽい音になってきた。

はっとりが隣にいない

──レコーディング現場での瞬発力が大事となると、各々が培ってきたことや学んできたことがすごく生きてくることになりますよね。

はっとり そうですね。ルーツ的な部分は、より出さざるを得なくなってくるし、大ちゃんのジャジーな一面とか、賢也のハイポジでフレージング多めな感じも、僕は閉じ込めないで、むしろ「出しちゃえよ」と誘導できればいいなと思うんです。やっぱり、その人のルーツの部分って、音の説得力として一番強いので。

長谷川 特に今回は、はっとりくんの「出しちゃえよ」感が強かったなと思いますね。「はしりがき」にしても、「裸の旅人」にしても、はっとりくんにあまりフレーズを確認せずにレコーディングに臨んだんですよ。いつもは、はっとりくんがキーボードのレコーディング中も隣にいて「これいいね」「それはちょっと」とジャッジしてくれるのがルーティンだったんですけど、今回は、はっとりくんが全然隣にいてくれなくて(笑)。

マカロニえんぴつ

はっとり 今回は、あえてブースに入らないようにしたんだよ。入るとどうしても口出ししたくなっちゃうし(笑)、自分にとっての“いい”を押し付けることはしたくないなと思って。「裸の旅人」は特に、デモの段階で僕がイメージを固めきっていなかった曲だから、大ちゃんに羽を伸ばしてほしかったというか、鍵盤には自由にやってほしいと思って。結果として、こねくり回していない、純粋な大ちゃんなりのフレーズを聴くことができたのでよかったと思いますね。

長谷川 ただ、自分で決めたフレーズを、あとからはっとりくんに「いや、これはちょっと……」と言われる可能性も考えると、ヒヤヒヤもするけどね。

はっとり 最近は、ダメとは言わなくなったよ(笑)。

田辺 僕はもともとすごくハードロックやヘヴィメタルが大好きなギタリストなんですけど、最近の曲はけっこう、ハードロックライクな音を入れがちなんですよ。ビンテージライクなギターソロを弾いてみたり。

はっとり 今回、無駄にタッピング入れてるもんね(笑)。ヴァン・ヘイレンが亡くなったもの大きいのかな? 俺らがやんねえとなって。

田辺 まあね。

──はっとりさんがブースに入らなくなるって、大きな変化ですよね。バンドがすごく民主主義的になっているというか。なぜ、そうした変化が起こったのだと思いますか?

はっとり ストライキが起きないように、ですよ。

高野田辺長谷川 はははははは(笑)。

はっとり 真面目に答えると、頼れるからだと思います。ライブも重ねてきて、演奏自体がすごく成長してきているから、今はすごくメンバーのことを信頼できているんです。メンバーそれぞれが違ったルーツや感性を持っているし、「それを引き出すことがお前の仕事だろ?」って、自分自身に対して思う。だから、最近はなるべく遠くから見るようにしています。次作の話になっちゃいますけど、それぞれ曲を作っていて、アレンジやプロデュースも各々で勝手にやっているんです。みんなでこのバンドを走らせている感じになっていますね。それは僕の変化というよりも、バンド全体の変化かもしれない。