3年続いた「攻殻」ワークが終わって

──2013年11月に発売された「攻殻機動隊ARISE O.S.T.」に続き、6月17日にはシングルと同時発売でサントラアルバム「攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius」もリリースされます。通算で相当な曲数になりましたね。

小山田　全部で3年ぐらいやってたんですよね。とは言え3年間ずっとやってたわけでもなくて、何カ月か周期で「あ、また来た」みたいな（笑）。でも個人の作品とはやっぱり違っていて。自分のだとお題も自分で考えなくちゃいけないけど、今回は用意されたお題に応えていくのが新鮮で、自分だけでは出てこなかったもの、自分にある一部が拡大されていくような不思議な感覚でした。自分で作れと言われたらこういう作品はできなかっただろうし。

──しかし3年続けていたものが終わるのは寂しいですよね。

小山田　ちょっと寂しいですね（笑）。話をもらったときは大変だなあと思ってたんだけど。

坂本　最初から長期におよぶことは……。

小山田　うん、うすうす（笑）。

坂本　あはははは（笑）。私は今回までずっと役者の立場でのみ携わってきましたけど、最初の「攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain」を観たときに、やっぱり音楽が印象的で。プロデューサーさんに「音楽すごいですね」ってお話してたんですけど（笑）。「攻殻機動隊」はSF的な未来感はありながらも、舞台が日本だし、そう遠くない未来……現在とねじれの位置にあるような世界観で。小山田さんの音楽がそのイメージにぴったりなんですよね。自分が出演している作品は特に、音楽以外のところが気になってしまうんですけど、「border:1」を観たときは音楽の印象がすごく残って。

──機械的なひんやりしたサウンドに、どこかオーガニックというか、生演奏によるアクセントが効いているのが「ARISE」シリーズ独特のSF感にぴったりだなと感じました。

小山田　やっぱり生身と機械の中間の“義体”（「攻殻機動隊」シリーズにおけるサイボーグの意）なんで、アコースティックとエレクトリックの対比、混ざり方は意識しましたね。

「攻殻」の世界観からインスパイアされた映像の数々

──各テーマソングのミュージックビデオが特設サイト（GHOST IN THE SHELL : THE MOVIE）に随時アップされるのも、この「ARISE」シリーズの醍醐味でした。6月24日にはこの映像をまとめたBlu-ray作品「攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE / 新劇場版 Music Clips: music by Cornelius」もリリースされます。

小山田　いろいろてんこ盛りで。辻川（幸一郎）くんが作った「あなたを保つもの」のMVと、真綾さんと一緒にやった「まだうごく」のスタジオライブも入ります。「まだうごく」では真綾さんと僕と、salyu × salyuや青葉市子ちゃんの演奏もやってもらった大野由美子（Buffalo Daughter）さん、坂本くんとかEGO-WRAPPIN'とかで叩いてるドラマーの菅沼（雄太）くん、砂原（良徳）くん、宮内優里くんで集まって。宮内くんはトライアングルのみ（笑）。

坂本　トライアングルだけを叩きに来た人って生まれて初めて観ました（笑）。スタジオライブをMVにするって、いいですね。

小山田　いいよね。シリーズでやってみたんだけど、すごく楽しかった。スタジオライブはレコーディングともちょっと違っていて、アレンジも変えているので。Blu-rayにはサイトで観られるMVとスタジオライブだけじゃなく、去年の11月に日本科学未来館でやったイベント（参照：「攻殻」一色に染まった日本科学未来館でCornelius大活躍）のライブ映像も入ります。

──これもシングルやサントラと同じく「攻殻機動隊」の世界と切り離したところでも楽しめる作品になっていると思います。

小山田　そういえばこの作品には「攻殻機動隊」の映像はまったく入ってない（笑）。MVにもアニメの映像は一切使ってないんだけど、全部「攻殻機動隊」の世界観からインスパイアされてできたものだから、どれも違う手法で作られているのに統一感があって。音楽も映像も、やっぱり「攻殻機動隊」を軸にしつつ単体で切り離しても楽しめる作品にしたいというのは心がけてましたね。

好きな声と“縁”

坂本　小山田さんはどういう声が好みなんですか？ 私にも明確に好きな声というのがあるし、人それぞれに好きなポイントがあると思うんです。小山田さんはどんな声に惹かれるのかなあって。

小山田　なんだろう……どっちかと言うと縁ですね（笑）。もちろん好きな声だというのもあるけど、いろんな人がいる中から選んでいるというよりは、たまたまというか。好きなタイプというか、一緒にやれるタイプということなら……付き合いやすい人（笑）。

坂本　はははははは（笑）。

小山田　まあ声の好みで言うと、真綾さんもそうだけど、あまりクセがないタイプが……でもないか。オノ・ヨーコさんなんてクセというか個性の塊みたいな人だし（笑）。

──坂本さんとの相性もすごくいいなと感じましたし、「攻殻機動隊」から離れた曲まで作られたことだし……もう少しこの2人が生み出す音楽を聴いてみたいなと思いました。

小山田　うん。今度はクスッと笑えるようなものもやってみたいですね。

坂本　ああ、いいですね！ えへへ（笑）。