ゲームの世界とリンクした「逆光」「空白」「色彩」
──今作にはそのほか、去年の嚴島神社でのアコースティックライブ(参照:坂本真綾、晴天リベンジ成功の嚴島神社ライブで語った“真綾”の由来)から、「Million Clouds」のライブ音源が収められています。「CLEAR」にも同じライブからの音源が収録されましたが、もともとあのライブは音源化するつもりだったんですか?
いえ。WOWOWで放送するのが決まっていて音は録っていたので、何かの形で世に出したいなとは思っていたんですけど、具体的には決めてなかったんです。「Million Clouds」は「あまんちゅ」の曲なので、アニメから入ってくださった方にも「ハロー、ハロー」と一緒に楽しんでもらえるかなって。あと「Million Clouds」のオリジナルは弦や打ち込みが入った派手な音ですけど、たった3人で演奏したアコースティックバージョンも壮大さは失われずに、すごくいい味が出ていたので気に入ってたんです。
──そして7月にはゲーム「Fate/Grand Order」関連の楽曲をまとめたシングル「逆光」がリリースされます。「ハロー、ハロー」は3曲共穏やかなムードがありますけど、次は一転して物騒な曲ばかりと言うか。
そうなんですよ。1曲1曲はすごくいいんですけど、3曲まとめると重くない?って(笑)。ここまでバランスを取らなかったCDもなかなかないですね。だいたいこういう曲がA面ならカップリングはバランスを取って明るい曲を、と考えるんですけど。
──タイトル一覧に「逆光」「空白」「色彩」と漢字2文字が並んでいるのも異様で。
「逆光」はサウンドが重くて物騒ですけど、実はすごくポップで、伊澤(一葉 / the HIATUS)さんの作曲センスはすごいなと思いました。入り口のダークな印象からサビで一気に走り出す広がり具合がクセになる曲で。「色彩」はゲームのストーリーとすごくリンクしているので、プレイした人たちには作品の世界観を作る1つの要素として受け入れてもらっていて(参照:坂本真綾「幸せについて私が知っている5つの方法 / 色彩」インタビュー)。「色彩」で私の音楽を知ってくださった方も多いみたいで、もはや私の新たな代表曲になりそうなほど大きな存在になっていますね。
──坂本さんの素の部分が反映された「ハロー、ハロー」とは逆で、この3曲は物語を演じて入り込むタイプの楽曲ですよね。
「色彩」はライブで歌い続けているうちに、1年以上かけてようやく自分のものになったような感覚がありますね。「私の中にもこういう部分はあったんだな」みたいな。「逆光」はそれを受けての制作だったので面白かったです。なりきり方がスムーズで。
──シングル3作が立て続けに出ますが、そろそろ新しいアルバムも?
どうしましょうかね(笑)。あまり切羽詰まらないように、余裕を持って作っていきます。
カッコよく四十代を駆け抜けるために
──20周年まではいろいろ慌ただしかったですけど、間もなく25周年がやってきますよね。
5年おきに周年をお祝いしていたら、あっという間ですよね。四半世紀だからスルーするわけにもいかないかな……とも思うんですけど。
──周年のお祭りごとは関係なしに「この人と組んでみたいな」とか先のことについて考えたりはしていますか?
好きで聴いているアーティストはもちろんいろいろいるんですけど、じゃあその人に関わってほしいかというとまた別だったりして。心のメモにはいくつか書いていますが、積極的にアンテナを張ったりはしていないですね。自分で作詞作曲をするのは、歌やお芝居に比べるとまだ日が浅くて、まだ伸びしろがあると思っているので、積極的にトライしたいと思っています。今のところ私が作った曲のアレンジは善太郎さんか河野(伸)さんにお願いしているので、別のアレンジャーさんと組んでみるのもいいのかなあとか。
──作品以外のところで何かやりたいこと、計画していることはありますか?
前回のツアーが自分なりに手応えがあったので「またツアーがやりたいなあ」とか「次にツアーをやるならこんな編成で、こんな内容で」とか、そういうことは日常的に考えていますが、それはもう生活の一部みたいなものなので。あとは、四十代を迎えるにあたって「三十代はすごく面白い日々だったけど、四十代の女の生き方ってどういうものなんだろう」とか「カッコよく四十代を駆け抜けるためには何が必要なんだろう」とか、そういうことはよく考えます。できれば無理をしない歳の取り方をしたいので、そのためにはきっとより一層、自分を認めていくことが必要になると思うんです。いわゆる“自然体”と言われるものを……自分で気に入った“自然体”でいられるように、残りわずかな三十代を大事に過ごしたいです。あと、麻雀を覚えたい。
──えっ?
ずっと麻雀は難しいものだと思い込んでいたんですけど、最近、少ない牌でやるミニ麻雀を友達が家に持ってきてくれたんです。6牌だけでやるボードゲームみたいなものなんですけど、すごくハマっちゃって。これがこんなに面白いなら本物の麻雀はもっと面白いんじゃないかなって。麻雀やってる四十代、カッコよくない?みたいな(笑)。父親も麻雀が好きだったから、実家に帰ったときに一緒に麻雀やるのは親孝行かもなあというのもあって、これから勉強しようと思っています。
- 坂本真綾「ハロー、ハロー」
- 2018年5月23日発売 / FlyingDog
-
[CD] 1404円
VTCL-35273
- 収録曲
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- ハロー、ハロー
- 月の話
- Million Clouds~acoustic live ver.~
- ハロー、ハロー -Instrumental-
- 月の話 -Instrumental-
- 坂本真綾「逆光」
- 2018年7月25日発売 / FlyingDog
-
MAAYA盤 [CD]
1512円 / VTCL-35282 -
FGO盤 [CD]
1512円 / VTCL-35283
- 収録曲
-
- 逆光
- 空白
- 色彩 -unplugged session-
- 逆光 -Instrumental-
- 空白 -Instrumental-
- 坂本真綾「CLEAR」
- 2018年1月31日発売 / FlyingDog
-
[CD] 1404円
VTCL-35268
- 収録曲
-
- CLEAR
- レコード
- プラチナ~acoustic live ver.~
- CLEAR -Instrumental-
- レコード -Instrumental-
- 坂本真綾(サカモトマアヤ)
- 1980年3月31日生まれ。幼少時より劇団で活動し、1996年4月にテレビアニメ「天空のエスカフローネ」のオープニングテーマ「約束はいらない」で歌手デビューを果たした。声優、女優としても活躍しながら、コンスタントにオリジナル作品を制作している。2015年春からはデビュー20周年を記念したさまざまな企画を行い、4月にはトリビュートアルバム「REQUEST」、9月には通算9枚目のオリジナルアルバム「FOLLOW ME UP」を発表した。2018年1月にはテレビアニメ「カードキャプターさくら クリアカード編」のオープニングテーマ「CLEAR」、5月にはテレビアニメ「あまんちゅ!~あどばんす~」のエンディングテーマ「ハロー、ハロー」をシングルでリリース。続いて7月にはゲーム「Fate/Grand Order」関連の楽曲をまとめたシングル「逆光」を発表する。