──8曲目の「プラチナ」は昨年「YANO MUSIC FESTIVAL」で共演したNegiccoがカバーしています（参照：初参加Negicco真綾も奮闘、矢野フェス2日目）。

「矢野フェス」のオープニングで、Negiccoちゃんたちが「プラチナ」を歌ってから私を紹介するという演出があって。それがすごく新鮮だったんですよ。若い女の子たちがこの曲を歌うとこうなるのか！って。メンバーのNao☆ちゃんが私のことをずっと好きだったって言ってくれて、熱意もすごく伝わってきたし、「プラチナ」はアルバムに絶対入れたいと思っていたので、だったらNegiccoちゃんたちに歌ってもらいたいなと思って「矢野フェス」が終わってすぐにお願いしました。

──Negiccoがどんどん人気を拡大している中で、このそうそうたる面々と並ぶ大一番という意識もあるのか、すごく気合いを感じる仕上がりでした。

今まさに新しい段階に踏み込もうとしているNegiccoちゃんに、「プラチナ」の歌詞がぴったりで。彼女たちは地元の新潟でずっとがんばり続けてきたからこそ今がある、というのが見ていて伝わってくるし、応援したくなるんですよね。長くやってきたことが力になるというのは、私も20年続けてきた中で一番実感していることなので。

──次が新居昭乃さんによる「奇跡の海」。これはクレジットを見ただけで絶対にハマると思いましたが、やはり120点のハマり具合でした。

間違いないですね（笑）。昭乃さんは私がデビューしたときからずっと近い存在だったのに、実はご一緒するのは今回が初めてで。「奇跡の海」のオリジナルには昭乃さんがコーラスで参加してくださってますけど、本当にそれぐらいなんですよ。

──そうなんですよね。同じレーベルで活躍しながら、意外にも共演はないという。

すごく新鮮なコラボレーションになりました。「奇跡の海」も絶対にアルバムに入れたいと思っていて、この曲なら昭乃さんしかいない！と曲指定込みでお願いしたんですけど、昭乃さんはこれが私の代表曲の1つで人気もあるのを知っていたので、すごくプレッシャーを感じたそうです。「10代の真綾ちゃんが歌う透明感のある歌声を聴き慣れているのに、私が歌っていいのかな」なんておっしゃってましたけど、昭乃さんの歌声を聴いてみると……私が彼女に感じていた永遠の少女性と、さらに増した深みを同時に感じて。身近な先輩が長く歌い続けていることにすごく力をもらいました。

──そして坂本さんが最新シングルでもコラボしているラスマス・フェイバーへと続きます。「afternoon repose」を選んだのは？

英語曲も1曲入れたいなと思っていて。今回ボーカルを務めてくれたフリーダは私の曲の歌詞も書いたりしてくれていて、ぜひラスマスとフリーダのコンビで参加してくださいとお願いしました。

──ラスマスはハウスからバンドを引き連れてのジャズまで幅広い音楽性を持っていますが、今回はハウスの手法で美しく仕上げています。

けっこう意外でしたね。「afternoon repose」がこんなふうになるんだ！って。オリジナルは歌詞の世界観も含めて、もっと土の匂いというか、オーガニックな雰囲気があるので、こんなにデジタルな音に生まれ変わるとは思っていませんでした。サラッと聴ける感じもあって、この濃い曲ぞろいのアルバムの中で、この曲が入ることでバランス的にもいい感じになったなと思います。

──最後を締めくくるのが「ポケットを空にして」。ちゃんと真心ブラザーズの曲になっているのがすごいなと。

これは泣いちゃうやつですねー。以前桜井（秀俊）さんに楽曲提供していただいたのがご縁でお願いしたんですけど、まさかあのYO-KINGさんの声で私の曲を歌っていただける日が来るなんて。「ポケ空」もライブの定番曲で、アルバムの中に入っていたらいいなあと思ってたんですね。なので真心のお2人にこの曲を選んでもらったときはガッツポーズしましたね、思わず（笑）。レコーディングはちょうどツアー中だったそうで、ツアーのメンバーで録ったらしいんですよ。桜井さんからは「ツアーでいろんなところを回るミュージシャンとして共感できる歌詞で、いい曲ですね」と感想をいただきました。

──その歌詞も、また違ったニュアンスで聞こえてくるんですよね。

YO-KINGさんが歌うと、16歳の私が歌う歌詞とは印象が違うんですよね。同じことを歌ってるんだけど、年齢を重ねた男性なりの説得力。「みだらな気持ち ぶらさげて」のフィット感が違う（笑）。16歳の私に「みだらな気持ち ぶらさげて」と歌わせた作詞家の岩里祐穂さんはきっと、あの頃の私の声で歌うことにより言葉の強さが中和されて届くことも想定していたと思うんですよ。これをYO-KINGさんがあの声で歌うと、オブラートに包むことなくダイレクトに突き刺さってくる（笑）。でも、なーんか泣けるんですよね。

──あの野放図なのにどこか憂いのある独特な声が、この曲の持つ背景をグッと広げているような。

ハッピーな感じだし、いい具合に力が抜けてるんだけど、すべてを許してくれるような大きさがあるんですよね。