LYSM×SACHIKO(FLiP)インタビュー|新たな一面を見せる1stミニアルバム「∞」、SACHIKOが託した5人への思いとは (2/2)

うわーってなって、うおーみたいな

──では、新作ミニアルバム「∞」のお話を伺います。音源をひと通り聴かせていただいた印象としては、とにかく5曲が5曲とも予想もしなかったようなタイプの曲ばかりで。

LYSM (激しくうなずく)

遠峯 また全然違う5曲がそろったな、という感じはありますね。

──歌う立場としては、けっこう難しい部分も多かったんじゃないでしょうか。

LYSM 難しかったです!

遠峯 基本的に曲をいただいてからレコーディングまでの準備期間がすごく短いので、まず内容を理解して自分の中に落とし込むのが大変で。しかも、それをどう歌で表現するかというところまで行かなくてはいけないじゃないですか。なのでレコーディングブースに入ってから、歌いながら理解を深めていくような感じはかなりありました。

遠峯あかり

遠峯あかり

──曲を作る側としては、「彼女たちに今できることをやらせるよりも、もうちょっと上のレベルをやってもらおう」という意図があったりするわけですか?

SACHIKO 私には全然そのつもりはなくて……どうやら私の作るメロディって、歌うのが難しいらしいんですよ。

遠峯 難しいですね!(笑)

SACHIKO それは昔からずっと言われていて。自分では難しいと思わないんですけど……このギャップが一生埋まらない(笑)。むしろ、彼女たちがいつも短期間でレコーディングに臨んでいるという状況を把握してはいるので、「なるべくキャッチーで歌いやすいものを」という意識で作っているんですけどね。

──ということは、SACHIKOさんからすると「まさかみんながそんなに苦労しているとは」という感じですか?

SACHIKO そうですね。実際、いつもトラックダウンをその日のうちにすぐ送ってくださるんですけど、毎回「めちゃくちゃしっかり歌えてるなー」と感動していて。聴感上はまったく苦労しているように思えないので、すごいなと思います。

──では、そんなSACHIKOさんにメンバーの苦労をわかってもらうためにも、一番苦労した曲を5人それぞれ挙げていってもらっていいですか?

LYSM あははは(笑)。

月城 私は「BABY BABY」が難しかったです。メロディが落ち着いている分、自分の感情をどう入れるか苦労して……あと、自分の低い声質がどうしたら聴きやすくなるのか、心に響かせられるのか、とか。歌詞をもらってからレコーディングまでが1日か2日くらいしかなかったので、「ヤバい、どうしよどうしよ」と思いながら臨んだんですけど、何回も歌ううちに少しずつ見えてきた感じがあって、最終的には納得できる歌が録れました。「あ、自分よく歌えたな」って。

一宮 私は「無限大Actor」が一番難しかったですかね。あるときマネージャーから「歌詞の意味、わかって歌ってないだろ」と言われてしまって、「わかってるわー!」という反発心と、歌詞に書かれている感情とがうわーってなって、うおーみたいな。

遠峯 擬音しか言ってないよ(笑)。

一宮 歌詞の意味を理解しているからこそ、気持ちとリンクして入り込みすぎちゃうのかもしれないです。でも、この曲は聴いた人が一番「LYSMの生き様、感じ取ったぜ!」と感じられる曲だと思うので、これからも「これがLYSMだ!」という気持ちで歌っていきたいと思います。

一宮えま

一宮えま

遠峯 私が苦労したのは、「ワンルームパレード」ですね。もともとロックが好きでロックばかり聴いて歌ってきたので、かわいい曲をかわいく歌うことが苦手で。音域的にも絶妙にキツいラインというか、「練習ではギリギリ出せるけど、ライブで歌えるのか?」みたいなところなんです。しかも、かわいい声を出そうとするとどうしても喉が締まって歌えなくなっていって、ちょっと「もうわからない!」となっていました。歌詞もかわいすぎて共感できないし(笑)。「こんなにかわいい生活、送ってない!」って。

LYSM あははは(笑)。

遠峯 それで、「これは自分のままでは歌えない」と思ったので、いったん自分は捨てて「私じゃない、私じゃない」「私はこの歌詞の中の女の子」「私はかわいい」と思うことで乗り越えました。

SACHIKO かわいかった。

遠峯 よかったー(笑)。

久遠 私は「BABY BABY」でいただいた自分のソロパートが、ちょっと突拍子もないメロディで……。

月城 それ、作曲者さんの前で言う?

SACHIKO あそこが大事なのよー。

久遠 (笑)。デモを聴いたときはまさか自分が歌うことになるとは思ってなくて、いざブースに入るときに社長から「ここ歌ってみて」と言われたときは「一番自信ないところが来た」と思って。でも、以前ボイトレの先生から「まりあさんは自信さえ持ってやれば大丈夫だから」と言われたことを思い出して、開き直って歌ったら「あれ、いいんじゃない?」という感じでOKがもらえて。

──「やればできる」を、身をもって体験できたわけですね。

久遠 はい! めちゃくちゃいい経験をさせていただきました。

天辺 今の話と似ちゃうんですけど、私も「ディスコネクションコード」でまさか自分が歌うと思ってなかった歌割りを担当することになって。2番のBメロなんですけど、音程的に曲中で一番高いところなので、最初は本当に声が出なくて。レコーディングのときはSACHIKOさんがディレクションしてくださったんですけど、わざわざブースに入ってきて隣で指導してくださって、なんとか1回だけ出せたテイクが音源になりました。その後ライブではだんだん出せるようになってきて、曲と一緒に成長できている感じもありますね。一番大変だった分返ってくるものも大きくて、思い入れの強い1曲になりました。

天辺りんか

天辺りんか

1を100にしていってほしい

──では、10月から11月にかけて行われる「∞」リリースツアーに向けての意気込みを教えてください。

久遠 まずは何より、ファイナルの新宿FATE公演をソールドアウトさせたい。FATEは私たちが今ホームとして立たせてもらっているライブハウスで、私たちの中でも大事な場所なんです。だから絶対に売り切りたい。

遠峯 私たちはなんだかんだソールドアウトを経験したことがないので、ライブハウスをソールドアウトさせることがハードルが高いというのもわかってるんですけど、だからこそ目標として口に出すようにしているんですよね。

──音楽面だけじゃなく、そういう部分でも「自分たちの身の丈のちょっと上」に挑戦し続けているわけですね。

遠峯 そうですね! でも、FATEはホームだし、普段のワンマンだとLYSMだけを観には来てくれないようなお客さんでも「FATEなら行こうかな」って来てくれる方もいる会場だと思うので。そういうライトな層にも気軽に来てもらえるような、広く門戸を開いた感じのツアーにしたいですね。

一宮 あと、私にとっては凱旋ライブが含まれるツアーなので……と言っても、みんなそれぞれ凱旋はあるんですけど。

月城 私、ないです(笑)。

遠峯 実は横浜がないっていう。

一宮 (笑)。「こういうライブにするぞ」というよりは、とにかく早く観てほしい、早く聴いてほしい。新しい曲を聴いてもらってどんな反応が返ってくるのか、ワクワクした気持ちでいっぱいです。

天辺 私は東京出身なので、凱旋ライブは1回もしたことがないんですけど……。

──LYSMは東京が拠点ですから、凱旋もへったくれもないですもんね。

天辺 はい(笑)。ただ、東京出身とは言っても23区ではないので、せめて吉祥寺とかでライブができたら凱旋っぽくなるかなって(笑)。今回のツアーには吉祥寺の会場は含まれないんですけど、次回以降のツアーでは吉祥寺でやってみたいです……って、これ今回のツアーの話じゃない(笑)。あ、新曲が一気に3曲増えるツアーは初めてなので、「新しいLYSMに期待しててくれよ!」って言いたいです。

LYSM

LYSM

久遠 あと、内々の話なんですけど、10月から新しいマネージャーさんが入ったんです。LYSMも2年目に突入したことですし、一緒に成長していけたらなって。ツアーまでには新マネージャーさんと仲よくなろうね。

遠峯 まだ仲よくないのかよー(笑)。

久遠 こういうのは積み重ねだから。

月城 私も「2年目に入って……」を言おうと思ってたのにー。

久遠 じゃあ取っていいよ。せいなが言ったことにしよう(笑)。

月城 いや、いいよいいよ(笑)。……あ、そうだ! 今回のアルバムで2曲、私が主メロの下ハモを担当している曲があって……下ハモって、難しいじゃないですか。それを新たな挑戦として、この2年目は歌柱・あかりんの下を支えられるような存在になっていきたいなと思ってます。個人的な目標になっちゃいますけど、グループとして上に行くためには1人ひとりが力を付けていかなければいけないですから。

──ありがとうございます。そんな5人に、SACHIKOさんからエールをいただいてもいいですか?

SACHIKO 8月の1周年ライブを観に行かせてもらったとき、「春に問う、君に恋う」での会場を巻き込んだ一体感がすごくて、周りが引くくらい号泣しちゃったんですよ。あの曲をそこまでのものに育て上げたのは間違いなく彼女たちの歌の力だし、真摯に向き合っているからこそだし、それができるのって本当にすごいことで。これからリリースする曲たちもそういうふうに育てていってほしいですし、彼女たちならできると思います。私がゼロを1にした気持ちを受け継いで、1を100にしていってほしいなと思いますね。

LYSM ありがとうございます! がんばります!

──SACHIKOさんの発言は、いちいち“6人目のメンバー”みたいですよね。

SACHIKO それくらい近いものを感じるんですよね。だからこそ私自身、みんなに歌ってほしい言葉を飾らずに歌詞にしたためられるんです。

遠峯 曲を作ってくれるのがSACHIKOさんで、本当によかったです。

SACHIKO やったー! うれしいー。

LYSM公演情報

LYSM 1st mini Album「∞」Release TOUR “LYSMを刻んで”

  • 2022年10月29日(土)愛知県 新栄シャングリラ
  • 2022年11月3日(木・祝)大阪府 心斎橋FANJ
  • 2022年11月12日(土)新潟県 SHOW!CASE!!
  • 2022年11月18日(金)宮城県 FLYING SON
  • 2022年11月19日(土)秋田県 Asyl
  • 2022年11月27日(日)東京都 新宿FATE

プロフィール

LYSM(リズム)

天辺りんか、一宮えま、遠峯あかり、月城せいな、久遠まりあの5人からなるアイドルユニット。グループ名のLYSMはLove You So Muchの略。2021年7月に配信シングル「ネオンで花束を」でデビューを果たし、翌8月に初ステージを経験した。2022年1月に1stフルアルバム「Love You So Much」をリリースし、同月から2月にかけて1stワンマンライブツアーを行った。同年10月に1stミニアルバム「∞」を発表。同月よりリリースツアー「LYSM 1st mini Album『∞』Release TOUR “LYSMを刻んで”」を全国で開催する。

SACHIKO(サチコ)

4人組バンド・FLiPのフロントマン。2005年にFLiPを結成し、2008年6月に初のミニアルバム「母から生まれた捻くれの唄」をリリースした。2010年2月に、いしわたり淳治プロデュースのミニアルバム「DEAR GIRLS」でメジャーデビューを果たした。2016年3月にバンド活動を休止。現在はソロプロジェクト・MAISON "SEEK"や他アーティストへの楽曲提供を中心に活動している。