lyrical school現体制ラストツアー沖縄公演密着レポ&インタビュー (2/3)

「辞めたくないなと思いたいな」と思いながら活動をしている

──グループを去る人、残る人、もちろんそれぞれに考え抜いたうえで決断したことだと思うんですけど、ここまでツアーを続けてきて……実際どうですか? 活動を続けるうちに考え方が変わることもあると思うんです。

risano 辞めるのを止めるってことですか?

──ええ。ライブをやって、ヘッズと一緒に盛り上がるのはやっぱり楽しいわけですよね。時間が経てば決断が揺らぐこともあると思うし、なんなら決断をひるがえしてもいいと思うんですよ。

risano いやいやいや、そんなことをしたら決断に失礼なので。と私は思うから……。

──決断に対して失礼だと。

risano はい。自分が決めたことで、これからさらにがんばろうと考えていたスタッフさんたちもがっかりさせちゃっただろうし、今になって「未練があって」と言い出されたら、私だったらカチンとくると思う。

hime 私は逆に「辞めたくないなと思いたいな」と思いながら活動をしているところがあります。「あと何日」という数字は確実に減っていってるけど、本当にあまりピンと来ていなくて。客席で泣いている子を見て「ああ、そうなのか」とハッとするくらいで、自分ではまだ来月も再来月もリリスクにいるんじゃないかと思うくらい、今のところ実感がないんです。だから、最後のライブをやるときに「ああ、もっとやりたかったな」と未練が残るくらいの気持ちでいたい。risanoが言う「決断に失礼」というのもよくわかるんだけど、すごくいい意味で未練を持ってみたい。

──実感がないと、確かに最後の瞬間の自分も想像がつかないですよね。

risano 寂しくなるよー? きっと。

hime あはは(笑)。でも私、ツアーでも泣いてしまうようなことが一切なくて。「THE LIGHT」という曲でみんながスマホのライトを照らしてくれるんですけど、それでメンバーだけじゃなくファンの方もグッときて泣いているんです。でも私は……感動してないってわけじゃないですよ(笑)。ただ「わあ、きれいだなあ。最後なのか……ウルウル」みたいな感情ではなくて。「わあ、みんな泣いちゃった。泣かないで」みたいな。

「lyrical school tour 2022 "L.S."」沖縄公演の様子。「THE LIGHT」で一斉にスマホのライトを点灯させるヘッズたち。

「lyrical school tour 2022 "L.S."」沖縄公演の様子。「THE LIGHT」で一斉にスマホのライトを点灯させるヘッズたち。

──最終的に未練タラタラになりたい。

hime なりたいなりたい! なりたいんです。

yuu 私もどちらかと言えばrisanoの感覚に近くて。自分の中に“アイドル”という自覚があればもう少し未練を感じていたかなと思うんですけど……リリスクは素に近い、ほぼ素の状態で活動させてもらっていたから、あまり“卒業”に対して自覚的になれないのかなって。ただ、卒業発表のあとライブを重ねるにつれて、見えなかったものが見えてきた感じがあるんです。「今日いいライブだったな」と思えるのは、お客さんの力がめちゃくちゃ大きかったんだなって。感極まる瞬間というのは、目の前にいるみんなの強い思いが伝わりすぎてつい泣いちゃうんです。

──yuuさんはまさに先ほどリリイベで感情失禁的に涙を流していましたけど。

yuu 最後までこの瞬間を目に焼き付けてほしいし、最後までがんばるよ!という気持ちです。なんかうまくまとめられなかったけど……(hinakoに)まとめられる?

hinako ムズいよね(笑)。でもyuuが泣いちゃう気持ちもわかるんですよ。楽しいからこそあふれ出るというか、まさに感情失禁ですよね。「楽しい!」と思える瞬間があればあるほど、私はそれが「寂しい」に変わるんです。わかります?

risano わかるわかる。

hinako そういうときに、未練というか……なんだろう、難しいな。寂しい……「時、止まれ!」って思うんですよ。もうちょっとこの時間が続けばいいなって。

──昨日のバーベキューのあと、花火をしているときに、ヘッズのみんなもきっと同じことを思っていたはずですよ。「こうやって一緒に花火をすることはもうないのか。この時間がもっと続けばいいのに」と。

hinako あああ……そうですよね。うちらはなんならまだ50日ある、という気持ちで、ツアーもまだ途中だから最後まで1つひとつがんばっていこうと思っているけど、皆さんからしたら残りもう1回とか、最後まで会えなかったりするかもしれない。寂しくはあるけど、楽しもう、ありがとうの気持ちをライブで1つひとつ返していこうという気持ちが大きいです。

lyrical school

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先の見えない不安に常に取りつかれるアイドルの宿命

──minanさんは1人リリスクに残る決断をしたなりの見え方があると思うのですが、いかがですか?

minan どうかなあ。野音が終わったらまたゼロからという感じだから、あまりみんなと変わらないかもしれない。清 竜人25のメンバーだった亜美ちゃんと仲がよくて、まだ活動をしていた頃によく一緒にごはんに行ってたんですけど、清 竜人25の解散が決まったときに亜美ちゃんはどんな気持ちなんだろうと思って聞いたことがあるんです。亜美ちゃんは「やっと終わりが見えてラクになった」と言ってたんですよ。

hime ……めっちゃわかる。

minan 確かにわかるなあとそのときも思いましたけど……アイドル活動って、本当に先が見えないんですよ。ゴールが明確ではない中、もっと売れるようにと模索していく仕事だから、先の見えない不安に常に取りつかれながら全力を出さなくちゃいけないし、日々を生きなきゃいけない。「この日まで」という一旦の目標ができることは、確かに心がラクになるところがあるかもしれないなって。私は続けていく決断をしたけど、今その気持ちがちょっとわかる。

──何か明確な目標に向かっていくというよりも、ファンの方々、ヘッズのみんなと過ごす楽しさをモチベーションとして活動してきた、というのがリリスクのメンバーは強いかなと思うんです。それは、具体的には何がそこまで楽しいのでしょうか。

hime 私の場合は「一緒に楽しむ」というよりも「楽しんでいる姿を見るとうれしいな」という気持ちなんです。自分個人が楽しいわけではなくて、楽しんでいる人を見るのが楽しかった。risanoみたいに一緒に楽しめるのがベストですよ?

risano 楽しんでる(笑)。

hime 「楽しそうだな」「感動して泣いてくれているな」という、みんなの心が動いているのをダイレクトに感じられる職業じゃないですか。それはすごい経験だったなって。

hinako

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hime

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yuu

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現体制ラストアルバム「L.S.」

──野音という一旦のゴールが見えたことで気持ちがラクになっていることが、このツアーの5人の雰囲気やコンディションをよくしていることは伝わります。が、現体制最後のアルバムである「L.S.」がすごくいい作品なだけに、活動がストップしてしまうことへの無念さがあるんですよね。この5人でのリリスクのスタイルがついに極まった、と感じられるアルバムなので。

risano そう言ってもらえるのはうれしいです。

──しかも、この数年でラップやヒップホップという音楽ジャンルの日本における認知度がグンと上がっていて。もう少し続けていれば潮目が変わるかもしれない、と感じてしまうんですよね。

risano minanちゃんも同じようなことを言ってくれたよね。

──「続けていればもしかして」で活動を続けることは、先ほどおっしゃっていた先の見えない不安との戦いにつながる話なので、軽々しく「続ければいいのに」と言うことはできませんけど……。レコーディング中は皆さんどんなふうに感じていましたか?

hime いつもアルバムを作るときはプロデューサーのキム(ヤスヒロ)さんからコンセプトを説明してもらうんだけど、今回はそれがなかったんですよ。初めてだよね?

yuu うん。「このアルバムにはこういうストーリーがあって」という説明があるんですけど、今回はなかった。

hime すごくしっかりしたストーリーがあるから「次の取材までに覚えなきゃ!」といつも慌ててたんですけど(笑)。だから「どんなアルバムになるんだろう?」って思いながらレコーディングしてました。アルバムタイトルを聞いたのも最後のほうだよね。「こんなにバラバラな曲が集まって、1枚のアルバムにまとまるんだろうか」と思ってました。最終的にすごくしっくりきてますけど。

──「取材までにコンセプトを覚えなきゃ!」って、すごくアイドルっぽいですね。

hime 確かに(笑)。

──5人それぞれの個性がさらに明確になっているし、ライブでも「新しい武器がたくさん増えた」という感覚があるんじゃないかと思ったのですが。

hinako 新しい武器か……。

yuu どうなんだろう……お客さんの反応が伝わりにくいから、昔より手応えがつかみにくいのはあるかもしれない。声を出して反応してもらうことができないので。

risano

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minan

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20年後のためにも泣けない

──「L.S.」の楽曲を今の5人で披露する機会がこのツアーだけなのかと考えると、どうしても「もったいない!」という気持ちになりますね。まだツアー半ばではありますが、野音については現段階でどのくらいイメージできていますか?

minan どんな感じになるんだろう?

hime セットリストがどういう感じになるかとか、今のところはまったくわからないんですよね。

──現体制最後の公演であると同時に、最新アルバムを携えたツアーの最終公演でもあるし、しかも夏の野外ライブという特別な場でもありますよね。やれること、見せたいものはいっぱいあるでしょうけど、時間には限りがあるし、どういうステージになるんだろうなと。

キムヤスヒロ(プロデューサー) イメージはできていないかもしれないけど、セットをこうしたいという意見も出てきているし、それぞれ考えてることはあるんじゃない? セットリストにどの曲を入れたいかを1人ずつに聞いてみたら、全員バラバラの答えが返ってきたんですよ。

minan へえー。

risano おお。面白い。私はコロナがなかったら、客席にダイブしたかった(笑)。クロールでね。

yuu 野音は扇状でこう、広いじゃないですか。コロナじゃなかったら後ろのほうまで走ったりしたかったなーと思いますけど。

hinako あー、したかったー!

hime 最後に歓声が聞きたいよね……。

hinako 聞きたいよー! それはみんな完全に一致だよね。歓声が聞きたいし、みんなでウオーッ!って叫びたいし、自分もその声を聞きに近くに行きたい。

risano とにかく、1曲1曲を丁寧に歌うことが大事じゃない? だって、どの曲もこの5人でやるのは最後なんだよ?

minan さっきキムさんはみんながやりたい曲を伝えたと言いましたけど、実は私だけ何も言ってないんです。4人がやりたいことを、やり残しないようにできたらいいなと。

risano ……泣いちゃうね。

yuu ねえ、泣いちゃうんだけど。

hinako うれしいね。

lyrical school

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risano 私はリリスクの曲は全部好きなので、どの曲が入っても最高のセトリになるはずだから、お任せします!と答えたんですよ。やりたい曲なんて言ったら、全曲やりたいんだもん(笑)。オールでもいい。

minan やっちゃう?(笑)

──メンバーも気合いを入れて挑むと思いますけど、夏の野音というこれ以上ない晴れ舞台だし、スタッフやヘッズも「この5人にいい景色を見せてあげたい」と意気込むと思うんですよね。

risano うわー、泣いちゃうなあ。絶対に泣きたくない。やっぱ歌い切りたいですよ。

minan 泣いて歌えないとかあるとね、悔しいもんね。

hinako それはめっちゃ思う。歌詞を間違えないようにしたい(笑)。

yuu ちゃんと聴いてほしいもんね。感動しちゃうと思うけど、やっぱ最後は震えずに歌いたい。

risano 20年後とかに映像で観返したときさ、泣いてたら「えーなんで! ここちゃんと聴きたいのに!」とか思いそうじゃん。

hime 早っ(笑)。そんなの考えたことないんだけど!

risano 間違えたらDJ止めてやり直すのがリリスクだから、カットカットで(笑)。みんなの100点を残したい。

minan ま、いつも通りのライブができたらいいよね。