2022年4月12日、lyrical schoolからminanを除くhime、hinako、risano、yuuの4名がグループを卒業すると報じられたニュースは、ヘッズ(lyrical schoolファンの呼称)のみならず、アイドルシーン、ヒップホップシーンでも大きな反響を呼んだ(参照:リリスクから4名卒業、野音で現体制ラストライブ)。
tengal6として結成された2010年以降、メンバーチェンジを繰り返しながらも、“ヒップホップアイドル”として独自の道を切り拓き続けてきたリリスク。2017年2月、オリジナルメンバー全員の卒業を経て、同年5月より現メンバーでの活動をスタートさせた5人はそこから5年間、新たなリリスク像を模索しながら、アイドルシーンとヒップホップシーンをつなぐ稀有な存在としてのアイデンティティを確立した。それだけに、現体制での活動終了を惜しむ声は多く聞かれるが、もちろん当の本人たちとて簡単な決断ではなかっただろう。
リリスクの5人は現在、4月にリリースされた最新アルバム「L.S.」を携え、現体制最後のライブとなる7月24日の東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)公演をファイナルに据えたツアー「lyrical school tour 2022 "L.S."」で全国を回っている。このツアーでは全16公演のうち、札幌と沖縄の2公演に合わせたパックツアーが用意され、メンバー5人とヘッズはステージと客席の関係のみならず、出発から帰路に着くまでの旅の行程をともに過ごして、より深い思い出を刻んだ。音楽ナタリーではこの沖縄パックツアーに2泊3日で同行し、取材を敢行。別れの時間が迫る5人のリアルな思いを聞いた。
取材・文・撮影 / 臼杵成晃
lyrical schoolツアー沖縄「#リリんちゅ22」
フォトレポート
現体制でのラストツアーとなった「lyrical school tour 2022 "L.S.”」。全国16都市を巡る公演のうち、札幌と沖縄の2都市では出発から帰路までをメンバーと一緒に過ごせるパックツアーが用意された。6月5日の沖縄Cyber-Box公演に向けて、リリスクとヘッズ(lyrical schoolファンの呼称)一行は6月3日に東京・羽田を出発。1日目は沖縄県中部の恩納村にあるリゾートホテル、沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパに宿泊し、近場のビーチでバーベキューを楽しんだ。
ツアー2日目はまず、沖縄の古民家や伝統的な琉球音楽など沖縄の歴史が満喫できる観光スポット・琉球村へ。メンバーは沖縄の文化が学べる体験プランでヘッズとの思い出のアクセサリーを作ったり、三線の音色にゆっくり耳を傾けたりと、穏やかな時間を過ごした。その後はタワーレコード那覇店のあるショッピングモール・パレットくもじへと移動し、屋外でフリーライブを実施。ツアー参加者のみならず、買い物に訪れた親子連れなどが見守る中、開放感あふれるパフォーマンスを披露した。
そしてツアー本番の3日目。リリスクは満員の観客を前に、換気タイムを設けた2部構成のライブで合計20曲を披露。この日はアルバム「L.S.」のラストを飾るナンバー「LAST SCENE」が初披露され、開放的な沖縄のムードを満喫していたヘッズたちが思わず感極まる様子も見られた。
lyrical schoolメンバーインタビュー
なんか……実感なくない?
──今回は3日間のパックツアーに同行させてもらっていますが……なんというか、メンバーとヘッズの距離感がバグってますよね(笑)。バーベキューでも琉球村でもほとんど友達のように一緒に移動しているし、アイドルでここまでファンとの距離が近いのも珍しい。かと思うと、特典会ではちゃんと数秒で剥がされているという(笑)。
risano あはははは(笑)。確かに。
──リリスクは前体制の頃から頻繁にバスツアーなどをやっていましたし、メンバーにとってはごく自然なことかもしれませんけど、これってヘッズとの信頼関係がないと成り立たないものだと思うんですよね。そして、あまりにも平和な時間が流れているので、これが現体制最後のツアーであるというある種の悲壮感もすっかり忘れていました。皆さんは「これが最後だ」という思いはどの程度感じているんですか?
hinako なんか……実感なくない?
hime ふとした瞬間に感じることはあるけど。
hinako そうやって言われると「確かになあ」って。みんな本当に素でツアーを1公演1公演楽しんでるし、うちらはいつも「どうやったらみんなと楽しめるか」を考えているので。特に「最後だからこうしてあげよう、素敵な思い出を作ろう」とかじゃなく、いつも通り楽しくやっていますね。
risano ライブに来てくれたお客さんに「やめないでー」って言われて「ああ、そうだったそうだった」と思うこともあって(笑)。
──そのへんも、おそらく発表した直後はまた違う気持ちだったと思うんですけど。
risano そうですね。発表した直後は「ごめんね」という気持ちのほうが強くて。自分で決断したことだし、覚悟は決まっていたけど……やっぱりみんなの反応を見ていたら、ね。
yuu ライブをやるといつも通りになれるんですよ。「びっくりさせちゃってごめんね」という話はするけど、ライブが始まればいつも通り。いつも通りすぎて、実感がなくなっちゃっているのもあるかもしれない。「卒業まで何日」とカウントダウンしていて、数字で見ると意識はするけど、実感があるかと言うと……ないと言ったほうが近いかなあ。
──とはいえ、先ほどのリリースイベント(インタビューは同行2日目の夜に実施)でも瞬間的に感極まっている場面がありましたよね。あまりに突然すぎて、きっとメンバーもヘッズも感情失禁みたいな状態になっているんだろうなと。
minan 感情失禁(笑)。
──会場にいたヘッズは「あれ? 今日って野音前にやる最後の野外ライブかな」と言っていて。
一同 うわー、そうか!
──そういう「あ、これはもしかして最後なのかも」みたいな場面に気が付いたとき、急激に胸に押し寄せてくるという瞬間が野音に向けて増えてきているのかもしれないですよね。それはきっとメンバーの皆さんにも。
hinako セットリストを見て「これを歌うのは最後かもな」と思うことはある。
hime うんうん。
risano メンバーがセットリストを決められるときは「最近やってなかったけど、みんなこの曲が聴きたいかな」と思う曲を入れることはありますね。
──「いつか君の手を離すだろうけど もう少しこのままでいようよ」という「LAST SCENE」の1節がグッと刺さってしまうような瞬間がしばしば訪れるんだろうなと。
minan 確かに……そうだよね……。
一同 ……。
hinako ……そう言われると実感してくるね(笑)。言われたり、お客さんが泣いてるところを見ると実感しちゃう。
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「辞めたくないなと思いたいな」と思いながら活動をしている