lyrical schoolのニューアルバム「Wonderland」が4月7日にリリースされた。
ビクターエンタテインメント内のレーベル・CONNECTONEへの移籍後第2弾アルバムとなる本作は「遊園地」がテーマ。BAD HOPやKANDYTOWNなど数多くのラッパーの楽曲を手がけるKMが提供した「TIME MACHINE」やchelmicoのRachelが作詞作曲に携わった「Fantasy」など、個性豊かでフレッシュな魅力にあふれる楽曲がアトラクションのように目まぐるしく展開する。
音楽ナタリーではメンバー5人にインタビュー。コロナ禍に見舞われた2020年の活動について振り返りつつ、アルバムの内容について話を聞いた。
取材・文 / 三浦良純 撮影 / 臼杵成晃
アイドルってカッコよかったんだ
──昨年12月から今年2月にかけて放送された「フリースタイルティーチャー」のアイドル編(参照:えいたそ、リリスクrisano、汐りんら「フリースタイルティーチャー」アイドルラッパー育成SPでバトル)が名バトルの連発で大きな反響を呼んでいたので、まずその話から聞かせてください。なぜメンバーの中からrisanoさんが番組に参加することになったんですか?
risano 最初は私たちの中でも一番ヒップホップに詳しいhimeに声がかかったんですよね。
hime バラエティ番組だし、私よりも「Have Fun」なスタイルでやれる子がいいと思ったんです。それでスタッフにrisanoを推薦しました。
risano ちょうど番組の話があった少し前からフリースタイルの練習をさせてもらっていたこともあって。「やってみる?」と声をかけてもらったので「やります!」って答えたものの、大変なことに……緊張の日々でした。
hinako 普段集まるときも「フリースタイルの練習をしたいからワードちょうだい」とか言って、ずっと練習してたよね。
yuu 移動のタイミングとかでもね。
hinako それに付き合って「苺」で踏めるものを出し合ったり(笑)。ずっとがんばってる姿を近くで見てきたので、それがちゃんと生かせたらいいなと思いながら放送を観てました。サ上さん(サイプレス上野。番組でrisanoの先生役を務めた)とめっちゃ仲いいよね。
risano リリスクもずっとお世話になっている方だし、フィーリングがすごく合って。「気を使ったりしなくていいから」みたいにサ上さんが言ってくれて、やりやすい環境を作ってくれたので堂々とやれました。もともと私はラップバトルって怖いから観たくなかったんです。「なんで人を傷つけるんだろう」ってずっと思ってた。でも、自分が出るからには調べなきゃって思って、himeから教えてもらったバトルの映像もいろいろ観て、バトルってDisだけじゃないってことがわかったし、ヒップホップの素晴らしさを改めて感じられましたね。
──番組を観たhimeさんは「えいたそさんと汐りんさんを見てアイドルやってる自分がすごく誇らしくなった!」とツイートされていましたが、具体的にどういうことを思ったんですか?(参照:hime(リリスク) (@hime_514) | Twitter)
hime 私はアングラなヒップホップ、現行の流行りのヒップホップが大好きなんですけど、そういうヒップホップのリスナーの子たちってアイドルを毛嫌いしている人が多いんです。私も自分がアイドルをやってなかったらそっちタイプだと思うからわかるんですけど、アイドルにネガティブなレッテルを貼っていて。ヒップホップってリアル至上主義だけど、アイドルって極上のフェイクじゃないですか。体調が悪かったらそれも出しちゃうのがラッパーだけど、ウチらは具合の悪さとか絶対出しちゃいけないんですよ。そういうギャップがあって、私は揺れ動くというか、板挟みになっていて。アイドルって人を元気にしたり幸せにしたりする最高の職業だと思う反面、ラッパーとして見てもらうためにはハンデだと思っていたんです。
──ラッパー同士のフリースタイルバトルでは「アイドル」という言葉自体がDisとして使われることもありますよね。
hime でも、えいたそさん(元でんぱ組.incの成瀬瑛美)と汐りん(バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIの恋汐りんご)さんは、第一線で活躍してきたアイドルとしての生き様や覚悟をぶつけ合っていて、それがすごく刺激的で……「そうだ、アイドルってカッコよかったんだ」って気付かせてもらいまいた。
──確かに、番組に出るまでまったくラップの経験がなかった汐りんさんが、アイドルとしてのキャラクターを貫いてバトルに挑む姿は圧倒的でした。
hime 収録には私も付いて行ったので生で観てるんですけど、汐りんさん、試合はだいたい仁王立ちなんですよね。漢(a.k.a GAMI)さんみたいだった。
一同 ハハハ(笑)。
──risanoさんは今後もフリースタイルの練習を続けるんですか?
risano これで終わりはイヤだし、本当のMCバトル大会に出てみたいなとも思っていて(取材後に「戦極MCBATTLE 第23章」出場を発表。参照:risano (リリスク) (@risano_0928) | Twitter)。バトルはすごく緊張するんですけど、勝ったときの快感はハンパないし、あんなにヤバい審査員の方々の前で堂々とできた自分に誇りを持てたんです。これからもどんどんやっていきたいですね。
2020年のリリスク
──リリスクはコロナ禍の中でもいろいろな取り組みをしていた印象がありますが、2020年を振り返ると、どんな1年でしたか?
minan ……振り返りたくないですね。2020年をなかったことにしたいです。ってか留年したい、マジで。
一同 ハハハ(笑)。
minan みんな同じように時が止まったんだからいいじゃん、って考え方もあると思うけど、とはいえ……って思いますね。自分だけちょっと遅れてる気がしちゃう。やり直したくない?
hime もう1回2020年をやりたいよね。
risano でも私はやり直さなくても大丈夫かな(笑)。この機会に気付けたことがめちゃくちゃデカかったんです。コロナ前のリリスクは土日に絶対ライブがあって、リリース週は毎日ライブをやって、もしこういう機会がなかったら「このままだと喉が潰れちゃうよ」みたいなことしか思ってなかった自分がいて。まったくライブができない状態を経験して「やっぱ私はライブが一番好きなんだな」って感じたからこそ、1つひとつのライブやファンの皆さんとの時間をもっと大事にしようって気持ちになれた。それをプラスに思ってますね。
──確かにリリスクはいつもライブハウスにいるか、マルイの屋上にいるかっていう感じでしたよね。
risano 本当ですよね(笑)。マルイのアイドルみたいな。
hime 雨の日もマルイメンの屋上にいたよね。
hinako 屋根ないのに(笑)。
risano クリスマスも行ったし。お正月も行ったし。
一同 ハハハ(笑)。
──それがなかった1年だったと。minanさんは具体的に何をやり直したい気持ちがあるんですか?
minan リリスクとは関係ないんですけど、2020年は20代最後の年だったんです。友達ともたくさん会いたかったし、パーッと旅行にも行きたいねって話をしていたし。そういうことができないまま、煮え切らないまま、30代に行きたくなかったなって気持ちです。でもまあ仕方ないかな。もともとインドア派だからコロナがなくても家にいたかもしれないし(笑)。
yuu 私はrisanoとminanの両方の意見がわかるというか……コロナでライブとか予定されていたものが全部崩れちゃったので、グループとして、もう1回やり直したい気持ちもある一方で、個人的には得るものはすごく大きかった年だったと思っていて。私は水着グラビアに挑戦したんですけど(参照:yuu (リリスク) (@yuuuuuu_1220) | Twitter)、もともと写真を撮られること自体がすごく嫌いだったんですよ。でも露出することに対しては抵抗がなくて。
──そうなんですね。ファンの皆さんは驚いていたようですが。
yuu まあ抵抗がないと言ったら、嘘にはなるんですけど。
hime なるんかい!
yuu ハハハ(笑)。なんだろ、大勢のスタッフさんの前で薄い布しかない状態だから、緊張はするんですけど、家族からも「キレイなうちに撮っておいてもらったら?」みたいな感じで言ってもらえて、前向きにやれたんです。実際やってみたらイメージしていたよりも大変で、1つの角度を撮るだけでも、普段使わない筋肉をすごく使うんですよね。それでシェイプアップもして自信も付いたし、撮影も好きになりました。
──hinakoさんは3月に保健師国家試験に合格したことを発表していましたね(参照:hinako (リリスク) (@hinako_805) | Twitter)。
hinako そうですね。取れるものは取っておこうと思うし、それを仕事につなげられたらいいなとも思って、2019年は看護師、2020年は保健師の試験を受けるために、その前の年から必死で勉強していて。で、3月に合格したので、去年はむしろ勉強しなくてもいい年でしたね(笑)。
hime 私は逆に初めて勉強に時間がかけられましたね。中学生の頃からアイドル活動に追われていて、長期の休みとかもなかったし、学校で課題とかがあっても、それより新曲を覚えることとかを優先してきたので。大学4年生なので学生生活はもう最後なんですけど、じっくり勉強に取り組めました。
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リモートライブでわかったこと