ガールズラップのパイオニア
──今回のアルバムはビクター内のレーベルCONNECTONEからのリリースということで、リリスクにとっては2度目のメジャーデビューになります。CONNECTONEはラップグループの大先輩でもあるRHYMESTERをはじめ、個性あふれるアーティストが多数所属しているレーベルです。適材適所とも言える場所からの再デビューについて、皆さんはどういう心構えでいますか?
risano 私とyuuとhinakoにとっては初めてのメジャーなので「やっとここまで来れた!」という喜びもあるし、ラッパーさんも多いレーベルからデビューできるうれしさもあるし……絶っ対に売れたいです。
──ちなみにrisanoさんが今日持参したインタビュー用のメモには、ニューアルバム「BE KIND REWIND」についてなんと書いてあるんですか?
risano (ノートを開いて)前作は“1日”を通して表現した作品だったんですけど、今作は全部moment……瞬間というか、1つずつ“青春”がコンセプトになっている……んですかね?
一同 あはははは(笑)。
risano 役に立たないな、このノート(笑)。
──アイドルというフォーマットの中でヒップホップをやる、という成り立ちで変化を重ねながらスタイルを作り上げてきたリリスクですけど、そもそも女性で大人数のラップグループって、国内はおろか海外でも実はレアケースですよね? ニューアルバムの資料には「ガールズラップのパイオニア」とありますけど。
risano マジのパイオニアかもしれない(笑)。
──男性だと国内でもRIP SLYMEやJABBA DA FOOTBALL CLUBの4MCスタイルなどがありますけど、5人5様のラップを聴かせる女性グループと考えたとき、そう言えば前例が思い付かないなと。
minan そうか。あまり考えたことなかったね。
──新しいアルバムを一聴して、その5人5様の強み、ビートの上で複数の個性が展開するヒップホップの面白みを改めて感じました。
hime KANDYTOWNやBAD HOPもアルバムを出すとなると3人ずつとかだったりして、フルメンバーでまるまる1枚ってなかなかないと思うんですけど、リリスクは1枚のアルバム通してずっと5人でやっていて。そのぶん、アルバムだと聴いていて飽きてしまうんじゃないかという不安もあるんですけど、今回のアルバムはいちリスナーとして聴いてまったく飽きのこない内容だなと思いました。5人フルでラップしてるけど、それぞれ曲によって声色を変えたりしていますし、ラップの面白さはどの曲でも出せている実感があります。
「絶対いいアルバムになる」と確信
──冒頭の「Over Dubbing」や「秒で終わる夏」はビートありきで突き進むラップミュージックとしての面白みがこれまで以上に強いですよね。メンバーのスキルが上がったことでより難解なラップにも挑戦できるようになって、作る側も遠慮が要らなくなってきたのかなと思ったのですが。そのあたり、今までとは違うという実感はありますか?
hime はい。「Enough is school」でAuto-Tuneを使ったり、初めて挑戦することが多かったです。
──特に難しかった、レコーディングが大変だった曲は?
hinako 「YOUNG LOVE」は苦労しましたね。「こんな感じで」という指示に寄せられなくて。この曲のレコーディングは私が最後のほうだったので、みんなのラップとテンション感を合わせていくんですけど、家で考えてきていた感じだとうまくハマらなかったんです。あとは……「ドゥワチャライク」が好きです。
minan ただの好み(笑)。
hinako めっちゃ好きなんですよ。まず題名がよくないですか? 好きなことしようよ、みたいな。超楽しいですもん。
risano 合ってるよね、hinakoに。
──risanoさん、hinakoさん、yuuさんにとっては今回が2度目のアルバムレコーディングですけど、前回のレコーディングと比べての変化や発見はありましたか?
yuu いっぱいライブをやってきたからこそできたことがある、というのをレコーディングでは一番感じました。
hime yuuは吸収がめっちゃ早いんです。yuuのレコーディング中、自分で確かめたいことがあったからちょっと席を外して練習したんですよ。少し経って戻ったら、ついさっきまでできていなかったことが、もうできるようになっていて。私、それに感激しちゃって。それを見て「絶対いいアルバムになる」と確信しました。
──risanoさんは楽々こなしているような印象を受けましたけど、実際はどうでしたか?
risano そう思ってたんですけど……前作で周りからすごくいいと言ってもらえたからこそ、今度はもっといいものを作らなくちゃいけないという思いが強すぎて、レコーディングは前回よりも苦戦しました。録り終わったあとにも「あー、ここもうちょっとできたな」「録り直したいな」と思ったり。
──表現できるようになった分、自分に求めるハードルが高くなっているのかもしれませんね。
minan レコーディングのときは、事前にいっぱい練習して、そのとき思う自分の100%を出せるようにがんばるんですよ。だけど、あとで聴いたときに自分のパートで満足したことが私は一度もなかったんですよ。でも今作は自分の中であまり違和感がなくて、いいテイクが録れたかなと……でもでもでも、それでも自分のパートは「あー聴きたくない!」って思っちゃいますね(笑)。みんなのパートは聴きたいんですよ。今まで全部そうだけど、中でも今作は、まだ聴ける。
──(笑)。ラップも歌も、どの曲でも一段ハイレベルなものを求められているように感じますし、5人がそれにしっかり応えているという印象を受けました。
risano いや、本当にどの曲もムズくなかった? こんな難しいの歌わされるのかーみたいな(笑)。
それぞれの時間を重ね合わせてもらえたら
──皆さんそれぞれアルバムの中で気に入っている曲、心に刺さった曲を挙げてもらえますか?
yuu 私は「LAST DANCE」が大好きで。MVもみんなで作ったので思い入れが深いです。みんなとの時間が詰まっているというか、聴いている人にもそれぞれの時間を重ね合わせてもらえたらいいなと思います。
hime 私は「大人になっても」ですね。Jinmenusagiさんがライブに通うほど大好きなんですけど、アイドルに曲を書くような方ではないだろうと勝手に思っていて。というか、やってほしくなかったんですよ。でも、もしアイドルに曲を書くようなことがあったらリリスクがいい(笑)。だからそれがうれしくて。Jinmenusagiさんの曲にもいろんなパターンがあるけど、あんまりアップテンポじゃない曲のほうがリリスクに合うだろうなと思っていたら、本当に私の願っていた通りの曲で。タイプライターさんも大好きで……いろんな曲を流して聴いていて「これ好きだな、誰が作ってるんだろう」と確認したらタイプさんだった、ということが多いんです。曲はタイプさんだし、歌詞はJinmenusagiさんだし、私にとっては神みたいなタッグで。今回ほかの曲は短いマイクリレーが多いけど、この曲はロングヴァースで、ファンとして聴いていたtengal6時代を思い出すようなところもありますね。この曲が中間に入っているのが、アルバムの流れとしてもすごくいいなと思います。
minan 私も「大人になっても」が刺さりました。歌詞は全員、自分のことを歌っていて。私たちが過去にどんなことを考えていたか、昔どんなものが流行っていたか、そういったことをそれぞれ書いてお送りしたうえで歌詞にしてもらったんです。「大人になったら無敵で、なんでも叶うんだろうなあ」という気持ちと、大人になった今感じる気持ち。歌にしてくださったことでそれが昇華されたような気がして。
hinako 私は「ドゥワチャ」です。本日2回目(笑)。「贅沢に死のうぜ」って歌詞が大好きで。「うわー生きててよかった」と思いながら歌えるんですよ。
minan でも最初はその意味がわかんなかったんだよね?(笑)
hinako うん(笑)。最後に贅沢をして死ぬのかなって思ってたんですよ。どうせならディズニーランドで死にたいなあとか(笑)。めっちゃおなかいっぱい食べて、めっちゃ太って、ディズニーで死のうと思ったら「違うよ?」って。「贅沢に生きようぜ」って意味なんです。「YOUNG LOVE」も好きです。楽しい!
risano 楽しい。でも「YOUNG LOVE」は初めに聴いたときの印象は全然違ったんです。リリスクらしくないというか、「本当に私たちが歌うの?」って。それがライブで歌ってみてまた変わった。すごくライブ映えするんですよ。個人的には「Enough is school」が好きです。himeの影響で踊Foot Worksさんが好きになっていたので、曲をもらったときは「カッコいいのきた!」とうれしかったのと同時に「私たちに同じようにできるかな」という不安もありました。仮歌がすでにカッコよかったんですよ。「このまま発売しましょうよ!」と言いたくなるぐらいよくて(笑)。その分たくさん練習しましたけど、今の5人ならこのクオリティの曲もやれるんだと確信が持てました。
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大事なのは、私たち自身が常に準備万端でいること