lyrical school|5つの個性がビートを刻む ガールズラップの可能性

lyrical schoolがビクターエンタテインメント内のレーベル・CONNECTONEに移籍。その第1弾となるアルバム「BE KIND REWIND」を9月11日にリリースした。

アイドルシーンを主戦場とするガールズラップグループとして誕生し、さまざまなトライを重ねながら独自の道を切り開いてきたリリスク。新天地であるCONNECTONEにはヒップホップ界の大先輩であるRHYMESTERをはじめ、SANABAGUN.、Neetz(KANDYTOWN)、集団行動、Reolといった個性の強いアーティストたちが顔をそろえている。適材適所とも言えるレーベルから届けられる新作「BE KIND REWIND」は、ライブを重ねてより強固になったスキルとチームワークがしっかりと反映された、ラップグループとしてさらに一歩踏み出した意欲作となった。

現体制となって2度目の夏を終えたリリスクは、どのような状態にあるのか。今回の特集ではメンバー5人にインタビューを行い、それぞれの変化を探った。また特集後半には、リリスクの生みの親であるプロデューサーのキムヤスヒロと、現在のリリスクのキーとなる楽曲を数多く提供している大久保潤也(アナ)へのインタビューも掲載している。

取材・文・撮影 / 臼杵成晃

勉強熱心+バイブス、メンバーも沸くフリースタイル

──今の5人編成になってから、ほとんど振り付けを定めず全員が自由に動き回るようになったり、いろいろ変化を加えたりする中で徐々にこの5人でのスタイルが固まってきたように思います。そのあたりは活動を続けながら少しずつ?

minan そうですね。具体的に「こんな感じにしよう」とメンバー間で話し合ったりすることもなく、自然に。ライブをやりつつ、ライブで作ってきた感じですね。

lyrical school

──ライブスタイルを作っていくうちに、5人それぞれの役割もはっきりしてきたというか、個性や武器ができてきたようにも感じます。

hime それは確かに。

──risanoさんは最初の印象として「歴代のリリスクメンバーの個性を煮詰めたような人だな」と思っていたんですけど、持ち前の明るさとかバイリンガルならではのガヤとか、ハスキーボイスとか、実は今までのリリスクから大きく変化する要因になっているのがrisanoさんなんじゃないかと最近は感じています。ご自身では加入当初と今でどう変わったと思いますか?

risano 自分の中での判断がやっとついてきました。前までは思ったことを全部言ってみて、プロデューサーにあとで「あれは違ったね」とNGをもらってたんですよ。だけど今は「これはカッコ悪いな」という判断が最低限つくようになったかなって。

──周りから見てどうですか?

minan risanoはめちゃくちゃ勉強熱心だから、ラップも勉強としてたくさん聴いてるし、ラッパーのライブDVDを買って研究したりしているんですよ。そうやって勉強したことを取り入れてきたからこその努力の賜物というか。もちろん、もともと持ってるバイブスもありつつ、勉強熱心なところが強みになっていますね。今日もこのインタビューのために、自分なりの考えをまとめたノートを持ってきてるんですよ。

risano

risano でも私、好きなことしかがんばれないんですよ。ラップ好きなんですね、私。あははは(笑)。好きだからこそもっとこうしたい、こうなりたいという思いが強くなってきました。

──その努力があってか、リリスクのラップがかなり本格的なものになっているように感じるんですね。そんな中で、子供の頃からラップが好きだったhimeさんの本性が剥き出しになっていて、アイドル然としたラップを期待していた初見の人なんかは場合によっては引いてしまうんじゃないかと。

hime うふふ(笑)。もともと私が観てきたものに近付けたいという気持ちはあって。最近はみんなが知ってるようなパンチラインを普通に言っちゃったり、前奏とか間奏で今っぽい煽り方をしたりしてますけど、確かに今までのリリスクだったら入れてなかったかもしれない。今のリリスクはそれが自然にやれるようになったんです。

──フリースタイルについては、普段からそれ用のトレーニングをしているんですか?

hime

hime うーん、あまりがんばってやるようなことじゃないと思うので……振り付けがあった時代は、立ち位置も覚えなくちゃいけないので「がんばってやるもの」だと思ってたんですけど、今のリリスクはそうじゃないなって。昔はフリーのパートもガチガチに用意してたけど、今はその場の空気を読んでやっています。

minan himeは昔から好きで聴いてきてるから、体の中に基礎が入っているんですよ。がんばらないほうが自然に出てくる。

risano そうだよ。うらやましいよ。

hime (笑)。でも最近はメンバーみんなそうですよ。感覚を大事にしてる。

risano himeは最初もっとアイドルっぽい印象だったんですよ。メンバーの中で一番年齢が若いのもあるし。けど、こっちのhimeが好きだな。

yuu 生き生きしてる。ラップをしてる後ろ姿を見るとめっちゃカッコいいんですよ。

hinako himeの作るラップ好き。「プチャヘンザ!」の前奏はいつもフリースタイルなんですけど、そこがいつもカッコいい。

risano 本番でそれを聴いて沸くんですよ、私たちも(笑)。

リリスクを進化させる2つの歌声

──himeさんとrisanoさんがラップ面での地力を上げている中、minanさんとyuuさんはメロディライン、フロウの個性を担う部分も大きくなっているように思います。

yuu

yuu 歌パートを任されることが多くなって、minanちゃんとのハモリも多くて……お客さんにいいねと言ってもらえるようになったりして、回数を重ねていくうちに自分でも「もっと歌のクオリティを上げたい」と意識するようになりました。もともと好きだったアーティストさんのことも違った視点で見るようになって。

──ライブを観ていて一番変わったなと感じるのがyuuさんですね。最初の頃は表情が読めない感じがあったんですけど、最近は以前よりも生き生きしているというか。

risano うん。すごく変わったと思う。私、喉を壊して一時期観ている側だったんですよ。4人のステージを外から観ていて、yuuに感動しちゃったんですよね。

hinako ダンスもできるし、歌もきれいだし、ラップもちゃんとできるし。

minan ちゃんとできる(笑)。

hime yuuも勉強熱心なんですよ。「研究するー」が口癖で(笑)。

minan 「ちょっと研究してみるー」(笑)。いろいろ考える中で、ステージでやりたいことがはっきりしてきたんじゃない? 昔よりも堂々としてる。

──一方、minanさんはソロでもシングルをリリースという新たな動きもありました(参照:リリスクminan、自身が作詞した曲と全英語詞2曲を収録したソロシングル発売)。やはりminanさんの歌が1つリリスクの大きな武器となっているのかなと。

minan

minan 私はそうは思わないですけど……歌がよくないと説得力がないですよね。そこがしっかりしてないと、いつまでも成長段階を見られるアイドルのままだなと思うので、責任は感じています。

──皆さんから見てminanさんの変化を感じるところはありますか?

yuu めちゃくちゃ変わったと思う。アルバムのレコーディングのときにすごく感じたんですけど、声の太さや伸びが全然違って、レベルアップしてる。

risano もともとうまいんですけど、パンチが加わってるというか。「ヤベえ私も録り直したい」って思うくらい、カッコいいと思うんですよね。

minan うれピーマン。

risano いやでも……うれピーマン!? いや、今思ったんですけど、minanちゃんの「こうしよう」という気持ちが前よりも強くなったと思っているのね。それによって、ステージングとかグループとしてのまとまりがワンランク上がったような気がしていて。なんか決意とかあったの?

minan なんで急にインタビュアーになったの(笑)。

──せっかくなので答えてください(笑)。

minan これを機に、というのはないんですけど……今、このメンバーで目指しているところまでいけなかったら、めちゃくちゃもったいなくない?と思うんです。自分で言っちゃうけど。このままくすぶって終わるのはもったいないなと思うんですよね、最近。

かわいいだけじゃない頼もしさ

──いろんな面が強化されている中で、hinakoさんはリリスクの愛嬌の部分を大きく担っているように思うんです。本格的なラップグループが「TOKYO IDOL FESTIVAL」に出るに足る愛嬌というか。その役割は加入当初から変わらないように思いますが、ラップやパフォーマンスは変化していますよね。

hinako

hime 新しいアルバムを聴くと、エモめなパートをhinakoが任されている部分が多いんですよ。それは1年前だともしかしたら違ったかもしれない。最近お客さんからラップを褒められることが多いよね?

hinako 昔と比べたらよくなったよ、ってことだと思うんですけど(笑)。

hime 昔は愛嬌100%で乗り切っていたところを、今日はカッコよくやってみようとか、hinakoなりに研究していると思うんです。ただかわいいだけじゃない頼もしさがあるなって最近思います。

minan 川崎のワンマン(参照:lyrical schoolショートツアーで夏を先取り、アルバム新曲初披露)でさ、「そりゃ夏だ!」の最後の煽りをhinakoがやったじゃない? 普段ならhimeやrisanoがやるんですけど、あの日は「hinakoがやってみない?」って話になって。あれ、すごくカッコよかったよね。

hinako 七夕の願いごとを3つ言ったんですよ。「ディズニーランドでライブがしたい」「『TIF』で見つかりたい」「このメンバーでもっと大きなステージに立ちたい」って。煽りとかやってみてと言われてもわかんないんです、正直。でもそういうときに、メンバーは「hinakoらしくやってみればいいじゃん」って言ってくれるんです。「忘れたら『忘れた』って言いな」って。普通は煽りで七夕の願いごとを言おうなんて思わないじゃないですか。私も最初はお客さんを煽るようなことを言おうと思ってたんですけど、メンバーが「hinakoらしくやりな」って言ってくれたから。お客さんにも「hinakoらしくてよかった」と言ってもらえたし、伸び伸びやらせてもらってるなって。