古いデモから完成形へ / EPは激しいだけにあらず
──「斑」が実際のライブでどんな感じになるのかが楽しみです。そして4曲目の「A FIERCE BLAZE」は玲央さんが原曲を持ち込んだものということになるんでしょうか?
玲央 そうですね。最初、このEPを作ろうという話になったときに、「激しい感じ」というワードが出ていたので、それに沿って作ってきたんですけど、実のところ元ネタとしては10年ぐらい前から持っていたものなんです。当初はもうただのハードコアナンバーでしたね。今のようなサビとかもなかったし。で、僕から提示した段階で葉月のほうから「これはサビを追加しましょう」と。そのうえで構成を入れ替えたりした結果、この形になったんです。
葉月 構成自体が変わってるんで、「斑」でのAKとの共作のあり方とはちょっと違う感じですね。原曲をもらってほかは、昔のlynch.っぽいなと思いました。リフの感じとかもそうだったし、そういう意味でもこのEPに入れるのはいいんじゃないかな、と。タイトルについては最後まで悩みました。「BLAZE」の一語で行くことも考えたんですけど、それはちょっと違ったんですよね。
玲央 僕が付けてた仮タイトルは“メタルコア”でした。まあ、エフェクターの名前なんですけどね(笑)。そういういかにもな感じのイメージを持ってたんですけど、葉月が持ってきたサビによって今のlynch.らしさもちゃんと入った曲になって、ただのハードコアには終わらない広がりのある感じに持っていけたんで、すごく満足してます。
──もともとの“らしさ”と現在なりの“らしさ”が共存しているわけですね。そして最後に収録されているのが悠介さんの作曲による“REMAINS”です。これは完全に悠介さん節ですね。lynch.における立ち位置が出ている曲だと思います。
悠介 まあそれもありつつ、もうちょっとバンド全体の色みたいなものを引き上げたいというのがあって。実際、そういう曲を作れたかなと思います。曲自体はデモの段階からほぼほぼこのままの状態でした。
葉月 このEPに限ったことではなく、通常のアルバムでもそうですけど、1曲はこういう曲が必要だと思っていて。今回の場合もこの「REMAINS」があるから、ほかの曲で振り切れたなというのがあります。
──タイトルそのままの「remains」という単語が入った英文の歌詞がありますよね。そこを直訳すると「望みを抱く限りはチャンスが残されている」という意味になりますが、こうした歌詞が出てきた背景には、ここ数年のコロナ禍なども含む時間の流れとも無関係ではないように思うんですが。
葉月 いや、どうだろうな。もちろん自分で書いた歌詞なんですけど、今の話を聞いていて「そうか、そういう意味だったよな」と思ったくらいで(笑)。まずこの英詞が載る部分のメロディがあって、聴感的にそこの歌詞を「remains」という言葉で終えたいなと思ったんです。単純に響きの問題なんですけどね。そこからこの歌詞を作っていって、タイトルもこうなったという流れでした。だから歌を録ったときも、その部分の響きにはこだわりましたね、むしろ歌詞の内容以上に。まあ、歌詞全体を通じて書いているのは、いつも書いてきたようなことではあるんですけど、悠介君の曲に載せる歌詞はだいたいこういう感じになりますね。なんか……たそがれてます(笑)。
──その形容が相応しいのかどうかはわかりませんが、激しい方向に振り切った作品ではありつつも、暴れっぱなしのままでは終わらないのがこのバンドだな、とは感じさせられます。
葉月 実際、やっぱりそれだけのバンドじゃないですからね。完全にそっちに振り切るだけではありたくなかったし。
──こうした5曲が収められたEPを完成させたことで、次に作りたいもの、目指していきたい方向といったものが見えてきたようなところはあるんでしょうか?
玲央 例えば、今回は入らなかったけどこういう曲もlynch.としてはやってみたいよな、という欲みたいなものは、このEPができあがったからこそ出てきつつあります。各々、lynch.の外側でも忙しくプロジェクトを動かしてたりもしますし、僕自身もlynch.の動いてない時期のうちに次の作品に向けてストックを貯めておかないとな、とは考えてますね。
明徳 個人的には今回、玲央さんの曲で、サビのコードの載せ方についてすごく面白い発見があったんです。lynch.の場合、リフから作られてる曲、メロから作られてる曲が多いと思うんですけど、その発見を経たことで、コードの響きとかそういうのを大事にした曲、そういう面白さが出せる曲ができたらいいな、とも思うようになっていて。だからもっとコードを学ばないとな、とも思ってるんですけど(笑)。
晁直 僕の場合、作曲に関しては何をやるにしても挑戦ということになってくるわけですけど、作り続けることにやっぱり意味があると思うから。みんなに追い付くには数十年かかるかもしれないですけどね(笑)。まあでも、今後もトライし続けます。
悠介 僕の場合、次に向けての取り組みも始めかけてはいるんですけど、正直なところまだ次のビジョンが見えてなくて。曲作り自体はコンスタントにやってるんですけどね。ただ、今作でのニューメタルの話じゃないですけど、最近、System Of A Downが再始動してましたよね。ああいう要素を取り入れてもいいのかな、とは思ってます。
去年のツアーよりもきっといいものになる
──そしてこの作品が世に出ると、すぐにツアーも始まります。当然ながら激しいものになるはずですよね?
晁直 昨年秋のツアーがものすごく評判よかったし、しかも今回は新規の5曲が加わるわけだから、去年のツアーよりももっといいものになることは見込んでます。実際、そうなるはずだっていう自信はありますね。ただ、夏のツアーだからただでさえ暑くなるだろうし、先日の恵比寿LIQUIDROOM(5月26日に行なわれたFC限定ライブ)もかなりヤバかったので、だいぶヤバいことになるんじゃないかとは思ってます。
明徳 「この時期のlynch.が好き」というのが、きっとファンの方それぞれにあると思うんですけど、今回のEPはどの時期のlynch.に思い入れがある人にも刺さる作品だと思うんですね。だから最近あまり観に来てなかった人たちにも来てもらいたいし、その人たちにカマしたいな、という気持ちがありますね。ひさしぶりの人たちにも、きっと響くものがあるはずだと思うんで。
悠介 ステージの上からお客さんの声を聞ける環境がようやく戻ってきて、今回のようなまとまった本数のツアーをやることもひさしくなかったので、自分自身もそれに飢えているという部分もあるし、それ自体が楽しみです。あとは体力面の問題ですかね。僕の場合、このツアーの合間に自分がサポートを務めてるツアーも入ってきますし、今年の夏はさらに暑くなるという話も聞いてるんで、そこは注意しないといけないですね。だけどまあ、とにかく楽しめたらいいなと思います。
──やっぱり客席から声が聞こえてくるかどうかの違いというのは大きいですか?
悠介 全然違いますよよ。それが自分にとって活力になりますからね。声が聞こえてくると、その一瞬一瞬、もっとやってやろうという力が出てくるんです。そういう意味でも皆さんの声はすごく大事ですね。
葉月 ここ数年間、僕はそれまで以上に歌に真面目に取り組むようになり、鍛錬を積んできて、その成果がやっと出てきつつあるんですね。それが今回のEPでも出始めていて、先日のLIQUIDROOMでもそれを実感できたんですけど、それをツアーで全国の皆さんにちゃんと披露したいですね。ツアーとなると当然ダメージが蓄積されることになるじゃないですか。だけどもそこで正しい歌い方というか理に適った技術をもった歌い方をしていけば、そういった問題も解消されるはずなんです。そこを自分でもちょっと楽しみにしてる感じですね。不安もないわけじゃないんですけど、きっと大丈夫なはずだし、今までよりもいいクオリティで歌い切っていきたいですね。
玲央 コロナ禍以前のライブをする側、観る側の環境というのがやっと戻ってきたなというのを、昨年のツアーですごく感じたんですね。それによって音源を出して、ツアーを回って、それを観に来てくれた人たちに楽しかったと言ってもらえて、またツアーをやって音源を出していく、といういい意味でのルーティーンをようやく取り戻せる気がしてるんですよ。それはバンドとしてごくごく当たり前のことなんですけど、同時に感謝すべきことでもあると思うんです。ただ、そこで深く考えずに、その場にいた人間みんなが楽しかったと思える空間を作っていくことだけに集中して……。もちろんそのためには事前の入念な準備も必要になってきますけど、やっぱりライブって楽しいよね、と本当に思ってもらえるツアーにしたいなと思います。
イベント情報
「FIERCE-EP」発売記念サイン会
- 2024年6月29日(土)愛知県 タワーレコード名古屋パルコ店
START 13:00 - 2024年9月1日(日)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
START 13:00 - 2024年9月5日(木)東京都 タワーレコード新宿店
START 17:30
ライブ情報
TOUR'24 THE FIERCE BLAZE
- 2024年7月7日(日)宮城県 Rensa
- 2024年7月11日(木)東京都 新宿BLAZE
- 2024年7月13日(土)神奈川県 Yokohama Bay Hall
- 2024年7月20日(土)福岡県 DRUM LOGOS
- 2024年7月21日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2024年7月23日(火)京都府 KYOTO MUSE
- 2024年7月27日(土)岐阜県 岐阜club-G
- 2024年7月28日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2024年8月3日(土)北海道 CASINO DRIVE
- 2024年8月4日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2024年8月17日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2024年8月18日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
- 2024年8月24日(土)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
- 2024年8月31日(土)大阪府 大阪国際交流センター 大ホール
- 2024年9月4日(水)東京都 TOKYO DOME CITY HALL
プロフィール
lynch.(リンチ)
愛知・名古屋出身のロックバンド。2004年8月に葉月(Vo)、玲央(G)、晁直(Dr)の3人にサポートベーシストの4人を加えた形で始動した。2006年に悠介(G)が、2010年に明徳(B)が加入。2011年6月、アルバム「I BELIEVE IN ME」でメジャーデビューを果たし、ライブの会場規模を徐々に拡大させた。2020年3月にアルバム「ULTIMA」を発表。2021年2月に初の東京・日本武道館公演を予定していたが、コロナ禍の影響で中止に。開催予定日に配信ライブ「STREAMING LIVE “THE RESISTANCE”」を行った。5月より全国ツアー「TOUR'21 -ULTIMA-」を開催し、12月にメジャー・デビュー10周年を記念したボックスセット「2011-2020 COMPLETE BOX」をリリースした。同月末に愛知・Zepp Nagoyaでワンマンライブ「17th Anniversary Premium Live『THE IDEAL』」をもって一時活動を休止。2022年9月1日に活動を再開し、11月に日本武道館公演を行った。2023年3月にアルバム「REBORN」を発表。11月から12月にかけてツアー「THE CRAVING BELIEVERS」、12月31日に単独公演「THE IDEAL」を行う。2024年6月にEP「FIERCE-EP」を発表し、7月からツアー「THE FIERCE BLAZE」を開催。
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