lynch.|結成13周年ライブに向けて 明徳(B)復帰を前にしたバンドの意気込み

険しい道のりを乗り越える覚悟

──明徳さんが不在の間、皆さんがどういう気持ちで、どんな問題を抱えながら活動してきたかは、彼からすれば想像するしかないことですもんね。

晁直 うん。それがわからないのは仕方ないと思うんですけど、それでも「わかってんのか?」と言いたい衝動に駆られると言うか。要するにそういうキャラだということなんです、あいつが(笑)。

──実際、彼はバンド内で最年少でもあるわけですが、やっぱりこの輪の中だとどこか弟っぽさがあると言うか。

左から増田勇一、lynch.。

玲央 ええ。バンドって、バランスだと思うんです。飛行機やロケットと一緒で、どこか1つのエンジンのパワーだけが突出してると、まっすぐ飛ばないんです。バンドを長く続けていくうえで必要不可欠なのは、自分たちなりのバランスを確立させることだと思っていて。「そのバランスを保つために明徳が必要だ」という判断になったのは大きいですね。今、晁直が言ったような気持ちになることは僕にもありますし(笑)、従来のバランスに戻るにはまだ時間がかかるとは思いますけどね。

──なるほど。先ほど葉月さんから、リハで明徳さんのベースの音を聴いたときにそれまで欠けていたものの正体に気付いたという話がありましたが、僕はカウントダウンライブで聴いた、彼のバッキングボーカルにもそれを感じました。「そうそう。本来はこの曲のこのパートでこの声が聴こえてたんだ」と。

葉月 それについても面白い話があって。彼のいない間はずっと、コーラスを玲央さんが担当していたんですよ。結果的に玲央さんが歌えるようになったからあいつ、「僕、もうコーラスやんないほうがいいっすか」とか言ってたんです(笑)。「2人でやってよ」と答えたんですけど。

玲央 そこは謙虚なのかよ、みたいな(笑)。

──ステージに立った彼自身がしっかりと自分の言葉で話をしたことも印象的でした。

玲央 当初はちゃんと話せる自信がないから、あらかじめ用意した原稿を読みたいと言ってたんです。でも、それは失礼だから「絶対に原稿は見るな」って当日伝えて。「それよりも、その場で思ってることを全部言えばいいから。真剣に話せばきっと伝わるはずだから」と。そうしたら想像以上に長くしゃべったんで、ちょっと驚きましたけど。もちろんすべての人に伝わったかどうかはわからないけど、伝わり切らなかった人たちには今後の活動を通じて自分たちの姿勢と音楽を提示することで、また振り向いてもらえるようにするしかないと思うんで。だからこそ、これからの道のりが険しいわけです。

ステップアップした姿を示すための3.11

──実際にあのカウントダウンライブは、幕張に向けての流れのいいスタートになったことと思います。準備の第1段階になったと言うか。

悠介 そうですね。あと具体的には演奏環境の確認でもあったんです。幕張では規模的にイヤモニを使って演奏することになるんですね。だいぶ前に使ったことはあったんですけど、しばらく遠ざかっていたんで。その感覚を取り戻して慣れておく必要があったから、あの日も幕張を想定した機材を使ってみたんです。

──そういう具体的な準備でもあったんですね。そして当然、この年明けから3月11日までの時間的なブランクというのは、丸々その準備のために費やすことになるわけじゃないんですよね?

葉月 実はわりと忙しいんですよ。なにしろ曲を作らないといけないんで(笑)。幕張については、一応セットリストもすでに考えてあって、「ここでこういう演出をしよう」とか、そういった話を進めつつあります。同時に、つい最近、会場内の座席配置とか正式なキャパシティも決まってきて。「えっ、そんなにたくさん入るの?」みたいな数ですよ(笑)。とは言え、まだ具体的には想像し切れてないですけど。ただ僕の中でこの公演の一番デカいテーマは、幕張メッセで新たな一歩を踏み出して、1段、また1段と上に行くことなんです。lynch.というバンドがステップアップしたんだな、また違う世界に歩みを進めたんだな、と感じてもらえるようなものにしたい。だからこそ、1つ上の世界のバンドとして恥ずかしくないようなパフォーマンスや振る舞いを見せなくちゃいけない。そういう漠然としたシンプルな思いしか、今はないですね。

lynch.

玲央 明徳がいなかった8カ月にわたり、サポートベーシストの方々が僕らを支えてくださったわけですけど、カウントダウンライブのときに人時さんが明徳にベースを手渡したのは、「サポートしてきた全員の気持ちを託すよ」という意味だったんです。実際にその言葉を聞いたとき、皆さんのそうした思いを託されたのは明徳ばかりじゃなく、僕ら自身でもあるんだなと思わされて。だから「人時さんが弾いてたときのほうがよかった」「ほかの誰かがサポートのときのほうがよかった」と言われるようなライブにしてしまっては絶対にダメだというのが最低限のボーダーとして見えてきたとのと同時に、グッとハードルが上げられたなと思うんです。

──人時さんのメッセージに愛を感じますね。

玲央 「この先輩は後輩のケツを叩くなあ」と思いましたよ(笑)。でも、それがすごくありがたかった。明徳だけじゃなく、「僕らもこのままじゃダメなんだ」と奮い立たせていただけましたし。だから大勢のファンの方を満足させることが第一なんですけど、実際に観に来てくださるならば、そうしてサポートしてくださった皆さんにも「カッコよかったよ」と言われるようなライブにしないといけない。そういう目標も見えてきました。

晁直 カウントダウンを終えてから数日の間で、幕張のライブについての捉え方が自分の中でガラッと変わったところがあって。それまでは単純に、幕張公演はlynch.のステップアップのためのライブだと思ってたんですね。ただ、明徳の復帰ということもあって、それを喜んでくれる人もいれば、そうじゃない人もおそらくいる。そうした人たちすべてが観に来てくれるんであれば、その全員を満足させなくちゃいけない。そのためには自分たちが気にすべきことが今まで以上にあると思うんです。結局のところライブはライブでしかないという部分もあるけど、あえて言うなら、みんなを黙らせるようなライブができればそれでいいわけです。それを乗り越えることによって結果的にステップアップできるんじゃないかとも思ってます。

悠介 今まで通りではいけないとは思っています。「次はもっと高みに行ってくれるんじゃないかな」と思わせるようなライブにしないといけないし、ただデカいところでやりました、と言うだけでは意味がない。そこで新たなスタート地点に立てるかどうかが肝心だと思うんです。みんなに「これからもlynch.に付いて行きたい」と思わせられるかどうか。そこが大事になってくると思います。

葉月 だからこそ万全の態勢で、バンドとして健康な状態で幕張のステージに臨みたいと思います。それさえできれば目指していたものを絶対クリアできると確信できるくらい、ちゃんと準備を整えて、その日に向かっていくつもりなんで。

──楽しみにしています。そして、今後発表されるであろう次のアルバムに向けての曲作りを進めていくわけですね?

葉月 はい。発売時期とかについてはまだ決めてないんですけど、幕張までには曲もそろっているだろうし、その頃にはもっと詳しいこともお話しできると思います。言ってしまえば、幕張を経てステップアップしているはずの自分たちを見据えながらのlynch.の理想像を、今まさに曲にしているわけです。その理想に、ちゃんと追いつける自分たちでありたいなと思いますね。

lynch.
lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]
lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]

2018年3月11日(日)千葉県 幕張メッセ 国際展示場
OPEN 15:00 / START 16:00

プレイガイド情報

lynch. TOUR'18「THE NITES OF AVANTGARDE #2」"A BLOODY REVENGE"
  • 2018年4月30日(月・振休)大阪 なんばHatch
    OPEN 16:45 / START 17:30
  • 2018年5月2日(水)愛知県 Zepp Nagoya
    OPEN 18:15 / START 19:00
  • 2018年5月11日(金)東京都 Zepp Tokyo
    OPEN 18:15 / START 19:00
lynch.(リンチ)
lynch.
名古屋出身のロックバンドで、2004年8月に葉月(Vo)、玲央(G)、晁直(Dr)の3人にサポートベーシストの4人を加えた形で始動。2005年4月に1stアルバム「greedy dead souls」をリリースし、並行して精力的なライブ活動を行うことで、地元・名古屋で話題を集める。2006年に悠介(G)が加入し、年内に4枚のシングルをリリース。2010年12月にはサポートメンバーだった明徳(B)が正式加入。2011年6月、アルバム「I BELIEVE IN ME」でメジャーデビューし、ライブを行う会場の規模を徐々に拡大させていく。2015年10月にはアルバム「D.A.R.K. -In the name of evil-」でヨーロッパデビュー。2016年9月にアルバム「AVANTGARDE」を発売し、10月にはヴィジュアル系の大型ライブイベント「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」に出演する。同年12月に明徳が脱退したことによりライブ活動を一時休止するも、2017年2月に活動再開を発表。4月に東京・新木場STUDIO COASTでワンマンライブ「THE JUDGEMENT DAY」を行い、成功を収めた。5月にゲストベーシスト5人を迎え、新作CD「SINNERS-EP」を発売。6月より全国ツアー「THE SINNER STRIKES BACK」を実施し、千秋楽を東京・日比谷野外大音楽堂で迎えた。11月にシングル「BLOOD THIRSTY CREATURE」をリリースし、12月に開催した地元愛知でのカウントダウンライブ「lynch. COUNTDOWN LIVE『2017-2018』」では、明徳(B)の復帰をアナウンスした。2018年3月11日に千葉・幕張メッセ 国際展示場で行う結成13周年ライブ「lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]」をもって再び5人編成となり、4月からは東名阪ツアー「lynch. TOUR'18『THE NITES OF AVANTGARDE #2』"A BLOODY REVENGE"」を実施する。