ナタリー PowerPush - lynch.
新境地へと導く意欲作「LIGHTNING」
ラジオやテレビで流れたときにサビを聴いてほしい
──シングルっていうのは特にバンドを知るきっかけになりやすいものだと思いますが、今回はその考えがより明確になってきたんでしょうか?
そうですね。例えばラジオで一瞬流れたフレーズを聴いて「今のバンドは誰?」と検索に至らせるにはどういう力が必要なのか、そういうことも改めて研究したし。今までは「これだけ激しいビートとシャウトが乗った曲をメジャーで流通させたら、みんなびっくりするだろうな」くらいの気持ちで、ちょっと天の邪鬼的な発想でやってたところがあったんです。実際メジャーに移ってからのリード曲って激しいものばかりなんですよ。
──確かにそうですね。
全部速い曲だし、サビでシャウトしかしてない曲もあったくらいで。「LIGHTNING」みたいな曲って実はインディーズの頃は結構やっていたんですけど、メジャーに移ってからシングルではやってなかったんです。
──メロディアスなサビから始まる「LIGHTNING」は、最近のシングル曲やアルバムリード曲と比べるとよりキャッチーさが強まってますね。
ラジオやテレビでパッと流れたときに、やっぱりサビを聴いてほしいんですよ。「LIGHTNING」は特にサビを意識したアレンジになっていて。ほかの取材で言われたんですけど、「LIGHTNING」は全体の7割近くがサビらしいんですね(笑)。
──あはは(笑)。それはキャッチーなはずですよ。
ラジオで流れたとき、単純にそれだけサビがあったほうが聴いた人の耳に引っかかるチャンスが多いだろうと。
シングルのカップリングに一番変な曲を用意することが多い
──葉月さんにとってシングルとはどういった意味があるものなんでしょうか?
アルバムと比べると、シングルはもっと自由なものだと僕は考えていて。アルバムのように全体の流れを組まなくていいから、好きなことがやれるという印象がありますね。変な言い方ですけど、lynch.ってシングルのカップリングに一番変な曲を用意することが多くて。lynch.の持つ振れ幅の一番端のほうの曲を、アルバムには入れないでシングルのカップリングに入れてるんです。
──確かに今回の「THE MORNING GLOW」も、特にここ2作のアルバムでは聴くことができないタイプの楽曲ですね。じゃあカップリングではちょっと実験的なこともあえてやってる?
そうですね。実はlynch.のファンが好きな曲って、僕の中のlynch.の本筋から離れたところにあるものが多いんですよ。僕的に「これ、ちょっと大丈夫かな?」って思ってる曲があとあと大人気になってしまうこともよくあるので、カップリング曲を楽しみにしてるファンも割と多いんじゃないかな。
──これは正しい表現なのかわかりませんが、「THE MORNING GLOW」はいわゆる王道のV系ナンバーというイメージがあって。2本のクリーントーンギターを駆使したアレンジから特にそういう印象を受けました。
それは面白い感想ですね。実は僕の中で、「INFERIORITY COMPLEX」を作り終わって次にやりたいことがなかなか見えてこなくて。そんな中で初めて作った曲が「THE MORNING GLOW」だったので、今までにない感じの不思議な曲に仕上がったのかなと思ってます。
──意識せずに自然と出てきたものが「THE MORNING GLOW」だったと。
これでした。まず冒頭のベースラインがあって、これを元に曲を仕上げたかったんです。本当にそれ以外何も考えてなかったし。ぶっちゃけlynch.がやることすら考えてませんでした(笑)。
──最高にキャッチーな「LIGHTNING」と今までにないタイプの「THE MORNING GLOW」を経て、来年には「INFERIORITY COMPLEX」に続くアルバムも制作すると思いますが、現時点ではまだどんな内容になるかは見えてない?
うーん、見えてないと言えば見えてないですね。今もずっと曲は作っているんですが……あえてテーマを設けないようにしてます。「INFERIORITY COMPLEX」のときは「より激しく」というテーマがあったけど、今は「次はこうしよう、こういうことをやろう」と決めずにどこまでいけるのかを見てみたい。
──その結果さらに激しいものができているかもしれないし、逆に「LIGHTNING」のような世界観をもっと追求した作品になる可能性もあると。
そうですね。どっちもあり得ると思います。
CD収録曲
- LIGHTNING
- THE MORNING GLOW
lynch.(りんち)
葉月(Vo)、玲央(G)、悠介(G)、明徳(B)、晁直(Dr)の5人からなるロックバンド。2004年8月に葉月、玲央、晁直の3人にサポートベーシストの4人を加えた形で始動。2005年4月に1stアルバム「greedy dead souls」をリリースし、並行して精力的なライブ活動を行うことで、地元・名古屋で話題を集める。
2006年に悠介が加入し、年内に4枚のシングルをリリース。続いて2007年には名盤と名高いアルバム「THE AVOIDED SUN」を発表し、レコ発ツアーファイナルを東京・Shibuya O-WESTで飾る。その後もライブを行う会場の規模を徐々に拡大させ、耳目を集める存在に。2010年に明徳が正式メンバーとなり、あわせてメジャーレーベルであるキングレコードへの移籍が発表された。2011年6月、前作から約2年ぶりとなるアルバム「I BELIEVE IN ME」でメジャーデビュー。2012年10月、ニューシングル「LIGHTNING」を発表する。