歌詞を通じて誰かに何かを伝えることに興味がなかった

──「LIGHTNING」も「THE MORNING GLOW」もメッセージ性の強い歌詞が印象的ですが、作詞の際にはどういうことを注意しましたか？

僕は今まで、歌詞にメッセージを込めることをしてこなくて。歌詞を通じて誰かに何かを伝えたいとか、そういうことに興味がなかったんです。歌詞は絵を描くように書いて、曲の世界観を引き立たせてあげるのが役割だと考えてたんですよ。インタビューでも歌詞について質問されると「メッセージ性は全くないんですよ」って答えれば、最初のうちはインパクトがあるわけじゃないですか。でもそういうことに飽きてしまって。だったら自分の中で挑戦の意味も込めて、今回は歌詞にメッセージを込めるというコンセプトの元に書いたんです。今までのlynch.を知っている人からすると「こんなにわかりやすいこと言うの？」って感じるんじゃないかな。でもそう思ってもらえたら大成功ですね。

──そうやってメッセージをストレートに表現することに対しては躊躇しませんでしたか？

いや、何かを伝えるにはわかりやすい言葉じゃないとダメだと思ったんで、なるべくわかりやすく書こうとしました。でもこんな書き方に慣れてないから、そこでの迷いはありましたよ。

──躊躇というよりも苦労のほうが大きかったと。

そうですね。ただわかりやすく説明しただけの、手紙みたいな歌詞はイヤだったので。内容のわかりやすさと響きのカッコよさのバランスを取るのが難しくて、作詞は今まで以上に大変でした。

今回のシングルはより多くの人に聴いてほしかった

──本作の制作において、ほかに意識したことって何かありますか？

実は今回初めて、珍しくいろんな人の意見をすごく聞いたんですね。

──それはどういうことですか？

メジャーに移ってからはスタッフに「好きにやらせてください」と宣言していて、今まで全くといっていいほど周りに意見を求めなかったんです。だからレコード会社の人たちも「どうぞどうぞ」という感じで、何も言わなかった。でも今回のシングルはより多くの人に聴いてほしいという思いがあって、どうしたらlynch.を全く知らない人の元にまで曲を届けることができるんだろうと考えて。それでレコード会社の人たちに話してみたら、「じゃあこっちも言っていいんだね？」みたいなモードに入ったんです。で、いざ意見を聞いてみたらみんな手厳しくて（笑）。そこから何度も何度もメロディを練り直して、最終的に20パターン以上録ったんです。

──「より多くの人に聴いてほしい」という思いに至ったきっかけは？

今までも、それこそ音楽を始めた当時からたくさんの人に聴いてほしいという意欲はあったし。今になって急にというわけではないんですけど、人に聴いてもらうにあたってやらなきゃいけないことっていくつかあって、そのひとつが他人の意見を聞くってことだと思ったんです。それに対して今回初めて素直に向き合えたというか。今までは本当に自分の好き勝手にやってきたから、また違った意見が聞けると思ったんです。

──なるほど。

外側から見たlynch.の一番おいしいところはどこなのか、そういうことをまず知りたくて、今回は音楽制作チームだけじゃなくてデザインチームの人とか宣伝部の人とかにも意見を聞きました。それはメロディひとつにしてもそうだし、歌詞にしてもそうだし。「え、これじゃダメなんだ？」と思うようなことも言われたけど、完成してから振り返ると「ああ、なるほどな」って自分でも納得できたんです。