luz「FAITH」特集 luz×堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)|2人が打ち立てた“信仰”の向こう側へ

今までのluzを全否定する

堀江 実は「Despair」という曲が作れたのは、今回楽曲を提供してくれた奏音69さんのおかげだなと思っていて。

──それはどういうことですか?

堀江 奏音69さんはこれまでずっとluzくんにいろんな曲を提供してきているから、おそらくluzくんの描く世界観ややりたいことをかなり深く把握されている方なんです。そんな彼が「ブラックレディー」という書き下ろし曲で、「信仰」というテーマを否定するような、もっと言えばこれまでのluzくん像を全否定するような曲を書いてくれて。

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luz これまで奏音69さんが書いてくれた「R18」や「Sister」といった楽曲のオマージュとして、それらの曲と真逆のことが書かれているんです。僕も最初聴いたときは驚きました。

堀江 奏音69さんは打ち合わせのときから「全部否定する内容でもいいですか?」と言っていたんですよ。最初はどういうことかわからなかったんですが、楽曲を受け取って、最後を飾る曲をどうするか考えたときにようやく奏音69さんがやりたかったことがなんとなく見えてきた気がして。要は否定することでテーマを壊したあとに、luzくんが何を作り上げるのかを見てみたい。そういう思いが「ブラックレディー」に込められているんじゃないかと。

──アルバム終盤は堀江さんが編曲を担当する曲が続き、最後の1曲「Despair」は堀江さん自身が作曲をしています。終盤の流れをどうするか、サウンド面でも堀江さんの中で思い描いていたイメージがあったということですよね。

堀江 自分ではそこまで意識はしていなかったんですが、最後に自分が編曲を担当した曲が固まっているのはそういう意識の表れかもしれないですね。アルバムの11曲目に「ブラックレディー」を入れているんですが、いろんな信仰を歌ってきたluzくんが、11曲目で一度自分を全否定する。で、その壊れた状態で「Glare」という一番人間らしい弱い信仰を歌った曲を入れ、その流れで「Despair」という曲を作ることができた。もし「ブラックレディー」や「Glare」がなければ「Despair」は書けなかったし、アルバムのプロデュースで参加してなければ生み出せなかった曲でもあったと思います。

かいりきベア×堀江晶太の中毒性

──サウンドプロデューサーとして携わった堀江さんが、今作の中で特に聴きどころだと思う曲はどれですか?

堀江 サウンドとして注目してほしいのは「涅槃」。レコーディングの日、luzくんが絶好調で。いい歌が録れたのはもちろん、作曲者のケンカイ(ヨシ)さんがめちゃくちゃ独特だけど面白い人で、その空気感に当てられてluzくんのテンションもちょっと変になってたんですよね(笑)。

luz 確かに、ちょっと変なテンションになってたかも……。

堀江 普段のluzくんだったら出てこないような珍しい歌声が聴けた気がする(笑)。だからluzくんが普段は表現していないような領域にまで手が伸ばせた楽曲になったのが「涅槃」。で、それだけではなくてもう1曲、「Despair」はいろんな人に聴いてほしい曲になりました。自分で作った曲なので手前味噌で恐縮なんですが、今までの活動の結果たどり着いたluzくんの集大成的な姿と、ここからの変化を予見するような期待感が込められた曲だと思っていますから。もちろん全曲素晴らしい曲が詰め込まれているので、どの曲にも愛情は注ぎ込んでいますが、強いて挙げるならこの2曲です。luzくんが思う聴きどころは?

luz 僕は「Glare」ですね。堀江さんが提供するような激しいロックサウンドが僕の持ち味になりつつありますけど、蝶々Pさんに毎回書いていただいているようなバラード調の曲も僕は大好きで。今回は作曲が蝶々Pさんで、編曲が堀江さんなので、単なるバラードとは違う、今まで歌ったことのないような世界観になっていて特に気に入っています。

堀江 さっき話した通り、「Glare」はアルバムの12曲目に収録されていて、アルバムの最後の流れを作りたい気持ちもあって、けっこう大きくアレンジを変えたんですよ。アレンジを大きく変えすぎると作家によってはよく思わない方もいると思うんですが、蝶々Pさんはめちゃくちゃ優しい人で「すごくいいですね」と言ってくださって。

luz 「こういう曲をもっと歌いたいな」と思えるような曲になりました。それと僕自身にすごく刺さったなと思うのが、かいりきベアさん提供の「ドローレ」。かいりきさんと編曲を担当した堀江さんのコンビが強すぎて。

堀江 たぶん、かいりきさんと僕の音楽の好みが一緒なんですよ。ちょっと毒々しい感じのいいサウンドに仕上がりました。

luz 本当に中毒性がヤバくて。自分でも音源繰り返し聴いちゃうくらい好きな1曲で、これはluzのキラーチューンになり得る曲だと感じています。

──「Despair」という楽曲がこれからを予見しているという話もありましたが、「FAITH」というテーマを掲げてきたluzさんはこれから先のビジョンをどう見ているんでしょうか?

luz 今回のアルバムが自分のやりたいことを詰め込んだ作品になったので、これから先の課題は今自分を知ってくれている人だけではなく、新しく知ってくれる人にluzの音楽を届けることだと思っています。そういう意味で「FAITH」という“信仰”をやり切って、次に向かうというアルバムで描いていたストーリーは、本当に自分の物語でもあるという自覚があります。今回タッグを組むことで、堀江さんには自分の可能性をたくさん引き出してもらったと思うので、ここから先は自分の信念に従いながらも、ここまで導いてくれた道から逸れないように歩いていくことかなと思います。

堀江 今作の制作でがっつり組んで作品作りをすることで、僕にもluzくんにもこれから先でやりたいこととか、課題とかが見えてきたと思うんです。次も一緒に作ることもできるかもしれないけど、一度落ち着いてひと息ついてからまたタッグを組むのが面白いかなと思っていて。ここから先のluzくんの歩みを見てから、そのときに必要とされる役割を担えたらいいですね。

luz 僕自身、今作で出し尽くした感覚があるので、まずは立ち止まって次の方向性をじっくり考えようと思います。

左からluz、堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)。

luz ツアー情報

luz 6th TOUR -FAITH-
  • 2021年12月17日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2021年12月19日(日)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2021年12月22日(水)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2021年12月24日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2021年12月25日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2021年12月27日(月)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2021年12月29日(水)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
luz(ルス)
luz
ネットのミュージックシーンを中心に活動する男性シンガー。2011年に“歌ってみた”動画を初投稿。「EXIT TUNES ACADEMY」をはじめとしたライブイベントに多数出演して知名度を高め、2014年10月に1stアルバム「tWoluz」を発表した。同年2月より自身が企画から携わったライブツアー「XYZ TOUR」を実施。以降、「XYZ TOUR」は定期的に行われ、2019年9月には神奈川・横浜アリーナにて「オールナイトニッポン0(ZERO)presents XYZ TOUR 2019 -YOKOHAMA ARENA-」を開催した。2019年12月には奏音69、RAHWIAとともにRoyal Scandal名義で1stアルバム「Q&A -Queen and Alice-」を発表。2020年7月には自身の活動10周年を記念した配信ライブ「luz 10th Anniversary Project -REVIVE-」を開催した。2021年1月には初めて自身が作詞作曲を手がけた「Rose」をシングルリリースした。10月にはサウンドプロデュースに堀江晶太(PENGUIN RESEARCH)を迎えて4thアルバム「FAITH」を発表。12月にはアルバムを携えた全国7都市ツアー「luz 6th TOUR -FAITH-」を開催する。
堀江晶太(ホリエショウタ)
5月31日生まれ、岐阜県出身。10代の頃より作編曲家として活動し、上京後に音楽制作会社に入社する。2011年にボカロP・kemuとして、イラストレーターのハツ子、動画クリエイターのke-sanβ、アドバイザーのスズムからなるKEMU VOXXを結成し、動画共有サイトに楽曲を投稿。いずれも大きな反響を呼ぶ。2013年に独立して以降は、LiSA、ベイビーレイズJAPAN、茅原実里、田所あずさ、三月のパンタシア、luzらに楽曲を提供。アレンジャー、コンポーザーとしての地位を確立させる。PENGUIN RESEARCHのベーシストとして、2016年1月にシングル「ジョーカーに宜しく」でメジャーデビューし、バンドマンとしても精力的に活動中。