luz|ファンとの絆を表す「Rose」が完成するまで

「指先。」で出会ったキーパーソン

──「Rose」に限らず、シングルの収録曲はすべてケンカイヨシさんが編曲を手がけています。luzさんがケンカイさんと一緒に仕事をしたのは、「XYZ VS XYZ」のコラボ企画で発表された「指先。」が最初ですよね?

はい。「指先。」を作るときに、大人な雰囲気の曲に合う方を探していて初めてケンカイさんにお願いしてみたんです。そうしたらそれがすごくよくて。「指先。」はリスナーさんの反応もすごくよかったんですよね。

──ということは「指先。」での手応えが、シングル「Rose」での編曲参加につながったわけですね。

まさにその通りですね。ケンカイさんはシングルのキーパーソンだと思います。例えば「Rose」のようにジャジーな雰囲気がありながら、ロックの要素もあって、なおかつ大人びた雰囲気で……みたいな無茶を言っても、ケンカイさんはいろんな音の引き出しで僕の要望に応えてくれるんですよ。僕の理想の塩梅をケンカイさんに見つけてもらった感覚です。

──コロナ禍でなければluzさんは作詞作曲にチャレンジできなかったかもしれないし、「XYZ VS XYZ」の企画が動いてなければケンカイさんにも出会っていなかったかもしれないわけですよね。

だから、もし世の中がこうなっていなければ「Rose」という曲は生まれなかったと思います。

──カップリング曲の「棘」は、「Rose」と同じく作詞作曲がluzさんで、編曲がケンカイさんという布陣で作られた曲です。「Rose」と「棘」という相互に関係のある言葉でくくられたこの2曲は対になっていますよね?

「Rose」が女性目線で、「棘」は相手の男性目線の曲になっています。「Rose」の舞台裏というか、B面的な含みを持たせた曲です。曲調も「Rose」が洋風だったので、「棘」は1990年代のJ-POPサウンドを意識して歌謡曲のテイストを取り入れています。

──luzさんが作詞作曲を手がけた曲は「Rose」「棘」の2曲ですが、そのほかのカップリング曲「アイビーラスト」「アリアドネ」も「Rose」の世界観とつながっていますよね。

「アイビーラスト」にはこの男女のやり取りを俯瞰で見ている神の視点が入っています。この曲はゲストボーカルとしてoscuroさんに参加してもらっているので、僕が男性目線の詞を、oscuroさんが神の視点で僕に問いかけてくるようなイメージで曲を作りました。「お前は何回同じことを繰り返すんだ」というようなことを男性側に問いかけるわけなんですよね。「アイビーラスト」はケンカイさんに書いてもらった曲なんですが、この曲、よくよく読み解いていくと、神の視点というのは実はもう1人の自分みたいなものなんです。結局は自分の迷いが生んだ自問自答だった、という。

──「アイビーラスト」に関しては、歌うのがものすごく難しい曲だと感じました。ラップも入っているし、ポエトリーリーディングのようにメロディが進行する部分もあります。

自分でもよく歌えたなって思いました(笑)。デモが届いたとき絶句したんですよ。めちゃくちゃカッコいいけど、これは僕に歌える曲なのかって。

──以前「M.B.S.G.」という曲のインタビューの際に、確か「ラップに苦戦してしまい、作詞をお願いした武瑠さんにラップの部分を歌ってもらった」とおっしゃっていた記憶がありまして。当時「ラップは苦手」と言っていたのに、今回のシングルではこの難しいラップをちゃんと歌いこなせていて驚きました(参照:luz「SISTER」インタビュー)。

「SISTER」(2018年6月発売のシングル)のときだから2年くらい前ですね。この2年でちょっとは成長できているんだと思います(笑)。

──4曲目「アリアドネ」は、これまでの3曲とはちょっと違うアプローチの曲ですね。

「アリアドネ」という曲は「愛がなきゃ生きていけない」という普遍的なテーマを、誰の目線でもなく歌う、映画で言うとエンドロールで流れるみたいなイメージの曲ですね。特に3曲目「アイビーラスト」がけっこうドロドロした曲なので、ライブのアンコールで歌って笑顔になれるような明るい曲がほしくて、ちょっと希望が差すような曲として「アリアドネ」を書いてもらいました。ライブの終盤に歌ったら絶対気持ちいですし、シングルで描いた物語も「アリアドネ」があるおかげで、救いのある結末を迎えられたと思っています。

「Rose」の由来はリスナー

──シングルの発売がアナウンスされたとき、luzさんは「初めて曲を作るとしたら曲名は必ず『Rose』にしようとかなり前から決めていました」とコメントしていました。「Rose」という言葉にはどういう思いが込められているんでしょうか?

「Rose」は僕というより、僕のリスナーさんたちのおかげで生まれたタイトルなんですよね。僕の活動を応援してくれるリスナーの方々が、いつからかTwitterの名前のあとにバラのマークを付けていたんですよ。最初僕は「なんでだろうな」と思っていたんですが、みんなが付けてくれているから僕もバラのマークを付けるようになって(笑)。このバラのマークがファンの証、というのがいつの間にか僕の中で大事になっていたし、バラの花言葉って色や本数で意味が変わるんですよね。例えば6本だったら「敬い分かち合う」とか、99本で「永遠の愛」とか。そういう言葉を交えながら男女の恋愛観を描く曲を書いてみたいなと思って温めていたのが「Rose」という曲なんです。

──ファンがバラのマークを付けたから生まれた曲なんですね。

もしみんながバナナの絵文字を付けてたらバナナの曲になったかもしれない(笑)。「バラを付けてくれてありがとう」ってみんなに伝えたいですね。

何も聞かされないまま白馬に乗ることに

──シングルの初回限定盤には「白馬の王子への道やけど」というタイトルの映像が収録されるようですが、これは……?

厩舎で馬の世話をするluz。(撮影:小松陽祐[ODD JOB])

タイトル通り、僕が白馬に乗りに行く映像が収録されています(笑)。

──なぜ白馬に乗ることに?

それは僕にもわからないんですよ。とりあえず何も聞かされないまま地方に連れていかれて「馬に乗ります」と伝えられて。「わかりました。馬に乗ります」と現場に向かったんですが、そう簡単に馬には乗れず、糞の片付けやブラッシングなど馬の身の回りのお世話から始めることになり……。

──それらの工程は実際に乗馬をする際に必要なもの、ということですよね?

そうなんです。まずは馬とコミュニケーションを取ってお互いに信頼し合わなきゃいけないんです。僕の相棒になる白馬がそれはもう大きな馬で、いろんな試練を経て乗せてもらったときは本当に感動しました。目線が高いんですよ。馬に乗ると。

──その過程がDVDで楽しめるわけですね。

はい(笑)。普段は体験できないようなことに挑戦しているので、ぜひ見てもらいたいですね。馬もおとなしくて、すごくきれいなので、動物好きの方にもおすすめです。

──最後に2021年の展望を聞かせてください。昨年7月に活動10周年を迎えて、現在luzさんはアニバーサリーイヤーの活動を展開しているわけですが、10周年の後半はどのような活動が待っているのでしょうか?

まだ明かせない情報がたくさんあるのであまり具体的なことは言えないんですが、コロナ禍でも楽しめるコンテンツをたくさん用意しています。制作も進んでいますし、コロナ禍であることを計算に入れて進めているので、楽しみがなくなるようなこともないと思います。2020年、ライブができなかったときにしっかりと温めたものがどんどん出てくる2021年になると思います。

白馬に乗るluz。(撮影:小松陽祐[ODD JOB])