luzが2ndシングル「Rose」を1月27日にリリースした。
今作は昨年7月に活動10周年を迎えたluzが、自身のアニバーサリーイヤーを記念してリリースするシングル作品。表題曲「Rose」はluzが初めて作詞作曲を手がけた楽曲で、luzのクリエイターとしての新たな一面が垣間見える1曲に仕上がっている。自身が主催する「XYZ TOUR」が中止になり、アニバーサリーライブも配信ライブに切り替わるなど、社会の情勢により思うように活動ができない時期が続いたluzは、どのような思いを持って「Rose」という作品を完成させたのか。2020年の彼の活動を振り返りながら、ファンとluzをつなぐバラをモチーフにした新作が完成するまでの過程をじっくりと聞いた。
取材・文 / 倉嶌孝彦
活動していないと思われるのが一番よくない
──取材前にluzさんの2020年の活動を振り返ってみたんですが、2020年最初の活動はRoyal Scandal(luz、奏音69、RAHWIAの3人によるユニット)のツアーファイナルでした(参照:Royal Scandal、奏音69の地元・札幌でツアー終幕「とても幸せな新年の始まり」)。
2020年はいろいろありすぎて、もっと前のことかと思っていました(笑)。でも確かにそうですね。ライブのMCで「ライブ初めだ!」みたいなことを言っていたのを覚えています。まさか数カ月後にはライブが思うようにできない日常が訪れるなんて、少しも思っていなかったですね。
──具体的には「XYZ TOUR」のバレンタイン公演以降はすべて中止となってしまいました。1公演のみが行われた2020年冬の「XYZ TOUR」は本来どのようなツアーになる予定だったんですか?
ちょっと前の「XYZ」で始めたダンスを今回のツアーでも取り入れていて、出演者みんなでかなり振り付けの練習をしていたんですよ。でも新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、本番を1度迎えただけでツアーが中止となってしまい、すごく悔しい思いをしました。中止を決めたときは、言葉では表せないくらいショックが大きかったですね。
──ツアー開催は見送られましたが、それからluzさんを中心にいろんな企画を展開していましたよね。
ライブの延期を発表したとき、ショックを受けながらも「少し経てば元通りになるだろう」と思っていたんですが、ライブの振替公演すら開催できなくなったあたりで「これはもしかしたらヤバい事態かもしれない」と思いまして、急遽みんなに声をかけて生配信をやったんです。「XYZ TOUR」は現場、ライブにこだわって作り上げてきたものだったので、これまではあまり生配信のようなことを多くはやってこなかったんですが、ライブが開催できない=活動していないと思われるのが一番よくないなと思って。
──生配信とは別に「XYZ VS XYZ」と題したコラボ動画の投稿も精力的に行われていたので、印象としてはライブができなくても活動しているイメージが強かったと思います。
「XYZ VS XYZ」に関してはnqrseが提案してくれたんですよ。ファンの方々に参加してもらう企画もやってみたかったし、何よりこの投票企画がなかったらコラボが実現しなかった組み合わせもあると思うので、僕ら自身も定期的に楽しみながら曲作りをしていました。この企画は僕だけでは思い付かなかったから、nqrseには本当に助けられました。
luzのライブは怖くない
──7月にはluzさんソロの配信ライブが開催されました。これまでいろんな形態でライブを開催してきましたが、ライブを配信で届けるのは今回が初めてでしたよね?
初めてでした。自分が表現したい世界観を一番魅力的に魅せられるのはライブだと考えていたので、これまでは直接足を運んでもらった方に伝えることに注力していたんです。でもこういう状況になって1カ所にお客さんを集められないのであれば、配信でやれることをやるしかない。正直に言うと、配信ライブをする前はすごく不安だったんですよ。お客さんがいない中で、自分はどこまでできるんだろうって。でもよく考えたら、画面の向こう側にはいつもと同じようにみんながいるんですよね(笑)。それに気付いてからは気持ちが楽になって、いつも通りのパフォーマンスができたと思います。
──luzさんに限らず、顔出しをしていないシンガーたちの多くはライブの現場でのみ顔を出す、という傾向にありましたが、配信でライブ映像を届けるというのは、その傾向に一石を投じるものでもありますよね。それをluzさんはかなり早いタイミングでやってみせたなと感じていました。
僕も最初は抵抗があったんですが、時代に合わせて変化していくことも必要だと思って。僕が一番怖かったのは何もできなくなってしまうことだったから、配信ライブでもなんでもいいから、待っている人がいる限り何かを届けなければいけないという気持ちが強かったんです。そのためだったら、新しい一歩を踏み出すのも怖くなかった。ライブをやり終えてからも達成感が強くて、後悔のような気持ちは全然生まれなかったですね。
──実際に配信ライブを開催することで、おそらく今まで現場に来れなかった人もluzさんのライブを体感できたと思います。新しい層に響いている感覚はありましたか?
僕のライブはペンライトを振って観るわけじゃなくて、拳を突き上げたり、ヘドバンしたり、けっこう体を思いっきり使って楽しんでもらうスタイルだったこともあって、僕のライブの現場を「怖い」と思っていた方がいっぱいいたみたいなんですよね(笑)。でも配信ライブで体験してもらうことで「思ったより楽しめた」みたいな反応が多くて。「今まで行ってなかったのを後悔した」みたいな反応もありました。
最初はボカロ曲を作ろうとしていた
──シングルの表題曲「Rose」はluzさんにとって初めて作詞作曲を手がける曲でもあります。以前から作詞作曲には興味があったんですか?
ずっとやりたいなと思っていたんですけど、ソロのライブにロイスキャのライブ、それに年に2回の「XYZ TOUR」と、ライブの本数が半端なかったので、正直制作に充てる時間が取れなくて。作りたいという思いはあったんですが、なかなか行動にできない歯がゆい時間が続いていたんですよ。ただ今回のコロナ禍でライブのスケジュールがなくなって、何をするべきか考えたとき、これまでできていなかった作詞作曲に挑戦してみようと思い立って。とりあえずは何か作ってみようと思い、最初はボカロ曲を作ろうとしていたんです。
──ご自身で歌う曲ではなく、ボカロの曲だったんですね。
サウンドのイメージもボカロっぽいものに寄せようと思って作り始めたんですけど、作っていくうちに、新しい一歩としてちゃんとミュージックビデオも作りたいと思ったし、そのときに思い浮かぶ映像がイラストとかではなくて実写のものだったので、ちゃんと自分で歌う曲にしたほうがいいなと思って。それまではまったくの個人で曲を作ろうとしていたんですけど、ちゃんとレーベルの方にも相談してMV制作やシングルとしてリリースすることまで計画に入れて、本気で作り上げたのが今回の「Rose」という曲です。
──「Rose」を作る中でluzさんの頭に思い浮かんだ映像というのはどういうものだったんですか?
いろんなリファレンスを自分の中で考えていたんですけど、最初に思い浮かんだのはマイケル・ジャクソンの「Dangerous」。楽曲の細かい要素とかではなく、「Dangerous」で描かれていたようなマフィアのボスを自分が演じて、周りに部下たちがいて、一緒にパフォーマンスをする。その世界観をまず思い浮かべて、曲をそこに寄せていく形でした。
──なるほど。MVで出演者たちが被っている帽子は「Dangerous」由来のものだったんですね。
そうです。「Dangerous」へのオマージュは「Rose」の中にいくつもちりばめられています。これは意外だったんですが、「Rose」のコメント欄を見ると、海外からのコメントが多いんですよ。もしかしたら海外の方のアンテナに引っかかるような映像が作れたのかなと思って、1つ手応えを感じました。ただ映像のイメージが先にありすぎて、撮影のために今回はずっと髪の毛を伸ばしていたんですが、それが撮影まではうっとおしくて仕方がなかったですね(笑)。乾かすの大変だし。イメージが先にありすぎるとこういうこともあるのかとちょっと反省しました。まあ人生で一度は髪を伸ばしてみたかったので、これはこれでよかったなと思っていますけど。
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「指先。」で出会ったキーパーソン