「SNS」をテーマに武瑠が作詞

──シングルにカップリングとして収録される「M.B.S.G.」にはフィーチャリングアーティストとして武瑠（sleepyhead、ex. SuG）さんが参加しています（参照：luzが1stシングル発表、カップリングに武瑠参加の新曲も）。luzさんと武瑠さんは活動しているフィールドが異なるだけにこのコラボは驚きました。

実は2016年に行った僕の1stツアー「GENESIS」を観に来ていただいて、そこで挨拶をしたときから交流があったんです。ライブのサポートをしていただいたA9のヒロトさんが「武瑠はあまり人のライブとかを観に行かないから、すごく珍しいよ」と言ってたので、すごくありがたいなって。

──実際にお会いしてみてどうでしたか？

僕なんかが言うのもおこがましいんですけど、なんとなく通じるものがあるような気がしたんです。絶対的に曲げないものがあると言うか、他人にどれだけ否定されてもそれを貫き通す音楽性やファッション性を持っている人だと感じました。

──どういう経緯で武瑠さんに作詞をお願いすることに？

楽曲自体はLedaさんが先に作っていて、ずっとどういうテーマで歌えばいいか悩んでいたんです。あるとき、ふと「SNSをテーマにした皮肉めいた感じの歌詞にしたいな」と思い付いて、「SICK'S」（SuGが2015年12月に発表したシングルの表題曲）で“現代病”をテーマに歌詞を書いていた武瑠さんに作詞をお願いしたんです。

──武瑠さんはさらにラップでも参加していますね。

はい。Ledaさんと「作詞を担当した武瑠さんにラップを歌ってもらうのはどうか」という話になり、連絡してみたらすぐにOKの返事をいただいたんです。武瑠さんって自分がやりたくない仕事は受けない人だと聞いていたので、引き受けてくれてすごくうれしかったですね。

──歌詞は「SNSをテーマに」とオーダーしたようですが、ネット上での活動をきっかけに歌手になったluzさんだけに、「M.B.S.G.」ではご自身が表現したいメッセージも込められているのかな、と感じました。

インターネットは使い方を間違えなければすごく便利なものなんですけど、ネット上で音楽を発表していくことの難しさは常に感じていて。当たり前のようにSNSでみんながみんな言いたいことを言えるようになったんだけど、いい使い方をしている人もいれば悪い使い方をしている人もいて、マナーとかそういうものがすごくないがしろになっていると思うんです。“ネット社会が生んだ闇”というものがSNS上にはあると感じていて。注目されればされるほど、言いたいことが言えなくなっていく窮屈なこの感じを歌にできないかっていうのが、この曲を作り始めるうえでの出発点でしたから。ネット社会に関して思うところがなかったらこの曲は生まれなかったと思いますし、こういうモヤモヤした感情を作品に昇華することができるのって、僕らアーティストの特権だなって、この曲を作っていて感じました。

今までの積み重ねの到達点

──シングルにはluzさんの代表曲「クイーンオブハート」の“SISTER Edition”も入っています。なぜこのタイミングでアレンジを？

「クイーンオブハート」って僕にとって初めてのオリジナル曲なんです。動画を投稿してから4年ぐらい経っていて、いつかはしっかりリメイクしたいと考えていて。1stシングルという自分にとって節目となる作品のリリースに合わせて、再録させていただきました。

──ホーン隊のサウンドもかなりゴージャスになっていますね。

「SISTER」と同じく岸さんにアレンジをお願いして、ボーカルも楽器も全部録り直してるんです。歌ってみて自分でもビックリしました。「4年でこんなにも変わるものか」って。あと、自分の声がちょっと老けたなって思いました（笑）。

──老けたかどうかはわかりませんが、luzさんのボーカルが以前より太くなっているのは感じました。

「クイーンオブハート」は、僕がライブでよく歌う曲でもあって。この4年で繰り返し披露してきた曲でもあるわけで、歌い込んできた分がちゃんと音でもわかるんだなって改めて思いました。4年前の音源は恥ずかしくて聴けないぐらいですから（笑）。

──シングルの通常盤には蝶々Pの提供で「光彩」というバラードが収録されています。蝶々Pの書き下ろし曲を歌うのは、2ndアルバムLavyrinth」収録の「僕の外側」以来ですね。

もともと蝶々Pさんの曲が大好きですし、ファンの方々から「歌ってほしい」ってリクエストをいただくことも多くて。今回のシングルはけっこう激しめな曲が多く入ることになりそうだったから、バランスを考えて1曲くらいはバラードを入れたいなと考えてたんです。それで蝶々Pさんに書き下ろしをお願いしました。

──書き下ろしをお願いする際は、どんなオーダーを？

シングルにはわりとファンタジックな感じの曲が多いから、現実的な歌詞にしようってところからスタートして、今回は「孤独」というものを歌おうと決めたんです。友人だったり、家族だったり、いろんな関係がある中で僕らは生きているけど、いつかその関係が断たれてしまうことがあるんじゃないかと思っていて。それは例えば些細なことでケンカをして会わなくなってしまうからかもしれないし、寿命が来て先立たれてしまうからかもしれない。根本的には人間は1人で生きていかなくてはならない、って感じの曲に仕上げていただきました。ただ孤独だとしても、大切な人と過ごした時間はなかったものにならないから、それを大切にしようって気持ちも「光彩」の中には込められています。

──収録曲すべてがそれぞれ個性的なので、音源を聴いていてミニアルバムみたいな濃さがある作品だと感じました。

今回のシングルって僕がこれまで培ってきた経験を積み重ねていって、ようやく表現できた1つの到達点だと思っているんです。luzとしてやりたかったことがそれぞれ叶っていって、今回のシングルが完成したところもあって。1stシングルではあるんですけど、これまでのluzの集大成的な作品にできた自負はありますね。