LUNA SEA / INORAN×J|結成30周年、バンドの礎を築いた2人が語り合う

ガキの頃から同じ夢を今も追えて本当にうれしい

──お二人の会話を聞いているとバンドっていいなあと思います。で、聞いてみたいのが、INORANさんからみたJというベーシストはどんなベーシストですか?という質問です。

J こういうの一番嫌なインタビューだよね。ナタリーのためだから答えるけど(笑)。

──ありがとうございます(笑)。では改めて、INORANさんから見たJというベーシストは?

INORAN 本当にストイック。いつの時代もストイックだよね。

──では、Jさんの作った曲で一番好きな曲は?

INORAN そういうのはナタリーさんのためでも言えない(笑)。

──(笑)。ではJさんから見るINORANさんは?

J 優しいよね。自分自身の芯の強さを持ちつつ、相手のことをしっかり立てる。その部分は昔から彼の強さだなと思う。俺は彼みたく我慢できないからさ(笑)。

INORAN いい意味で、俺とJは逆なんだよ。だからずっと一緒にいられるんだと思う。

──ではJさんとの忘れられない思い出を1つ挙げるとすると?

INORAN 終幕の東京ドーム公演のあと、楽屋打ち上げが終わったときに、もしかしたらもう一生会わないかもしれないなと思って、心がちょっとザワザワっとしたよね。そのザワザワした気持ちを俺は一番、Jに強く感じた。じゃあ終幕中に電話しろよって話なんだけど、そういうんじゃないんだよ。時代が終わったというわけじゃなく、なんか自分の青春が終わった……卒業に近い感じだったのかなあ。それが思い出の中で一番強く残っている。出会ったときのことよりもそっちのほうが覚えている。だって、いなくなっちゃったんだよ? ガキの頃から同じ夢を見ていたJがさ。だから、こうやってまた同じ夢を追えて本当にうれしいよね。

──Jさんは?

J 思い出はいろいろあるけど、思い返してみるとまだ友達になる前に、俺がINORANに初めて声をかけたときかな。とあるアーティストのアルバムが聴きたくてしょうがなくて。それをINORANが持っているという話を友達から聞いて、ずっと声をかけたかったんだ。でも多感な年頃だったし、タイミングがなくて。だけど、あるとき「あのアルバム持っているんだって? 貸してくれる?」と言ったのがすべての始まりだから、それは覚えているな。ハワード・ジョーンズの「What Is Love」が入っているアルバム(1984年発表「Human's Lib」)。それがすべての始まりだったなあ。

──INORANさんも覚えていますか?

INORAN もちろん。

──なんだかThe Rolling Stonesのキース・リチャーズとミック・ジャガーみたいですね。ミックがチャック・ベリーとマディ・ウォーターズのレコードを持っていたのをキースが見てストーンズの運命の石が転がり出したように、LUNA SEAも1枚のレコードから運命の扉が開いたと。

J そうだね。なんか似てるね。

これからのLUNA SEA

──この30年でさまざまなことを経験してきたLUNA SEAですが、お二人はLUNA SEAというバンドを今後どんなふうにしていきたいですか?

INORAN よく言うんですけど、ライブ中に真ちゃんのドラムソロを横で観ていて、何かが1つでも欠けたらこの風景ってないんだな、この一瞬って本当に尊いんだなって思ったんです。だから「どうしていきたいんですか?」という質問の答えは俺の中にはないです。尊い時間を全力で、自分の気持ちを燃やしていきながら積み重ねていく。一生、積み重ねていく。それがLUNA SEAとして生かされている責任なんだと思いますね。さらには音楽人として、人として。なんかそんなことばっかり考えてます。でも、それでいいと思うんです。これからも、いろんなことへの感謝と同時に一瞬一瞬の音に、演奏にすべてを込める……それは表面的にはわからないかもしれないけど、どんどん音を出すことにストイックになっていってますから。あんまりそういうふうには見えないと思いますが(笑)。

J 今まで30年間という時間を気にして活動してきたわけではなかったけど、これだけ長い時間音楽を作っていくことができて、しかもいまだにこの5人は夢を見ているわけですよ。だから、それを積み重ねていくのみ、そういう気がするんですよね。それと個人的には、その時代その時代に自分たちが思い描くカッコいいものをやり続けていきたいなとはすごく思ってます。当然自分たちがやってきたことに対しての自負というかプライドもあるし。それプラス、これから先のストーリーを俺たちは作っていかなくちゃいけないという責任もあるし、見てみたいという欲求もある。それを自分たちで止めないこと。30年前、何もわからない中で、バンド、音楽、ロックにがむしゃらになった。それを続けてきたし、ずっとそんなふうにカッコよくありたいな。当然30年前のバンドと今とでは違うし、ここから先またどんどんどんどん違っていくんだろうし、人は歳を取っていく。その中で変わっていくものもあるだろうし。その都度その都度カッコいいものを作っていきたいし、やっていきたい。俺たちが見てきた海外のロックバンドはいまだにバリバリなバンドもたくさんいて、歳を取ってもカッコいいなと思うわけ。で、日本もそういうバンドが出てきていいと思うし、当然出てくるんだと思う。その一端を俺たちの世代が担っているんだと思うんだよね。だってロックって自分たちが生きている時代の空気を刻み込んだ音なわけで。だから俺たちは今の時代の新しいロックヒーローにならなくちゃいけない。LUNA SEAならそうなれると思うんだ。

──30周年の節目となる今年5月29日にニューシングル「宇宙の詩 ~Higher and Higher~ / 悲壮美」がリリースされます。最後にこのシングルに込めた思いを聞かせてください。

INORAN 着実にメンバーそれぞれの音色が入っているんですよね。決して奇をてらっているわけではないけど、メンバー全員それぞれの音色がきちんと刻まれているんです。そして、LUNA SEAというバンドは音色がもうその人でしかなく、それをすごく表している曲だと思っています。だからその音色を感じてほしいですね。

J ちょうど30年という節目の中で生まれてきた曲たち。実際自分たちも作っていく中で手応えとみなぎる熱を当然感じています。しかも、今LUNA SEAがバンド的にもエポックなタイミングにあるのを自分自身でも感じていて、実は水面下ではすごいことが起きているんですよ。パズルに例えるのなら、今みんなに見えているピースはこのシングルだけだけど、パズルのピースが全部はまって完成したら、すごいものが見えるはずです。完成したパズルを早く見せたいよね。その1つが今制作中のアルバムだし。それがまた新しい自分たちの世界、第何章かの始まりになると思う。そして、それにワクワクしている自分が確実にいるし。そのオープニングとしての曲として今回のシングル曲はうってつけの曲だと思っています。

左からINORAN(G)、J(B)。