アルバム構成にLUNA SEAの美学がある

──ライブアルバム「NEVER SOLD OUT 2」はもちろんなんですが、ベストアルバム「LUNA SEA 25th Anniversary Ultimate Best THE ONE」も曲の並び方が実際のライブのセットリストに近い印象を受けました。そこは意識したんでしょうか？

INORAN　そうですね。今回に限らず、どのアルバムを作るときもライブを意識して収録順を決めてます。序盤勢いよく始まって、中盤でちょっとテンポを落として、後半に上がってく構成に、みんなが愛してるLUNA SEAの美学があるんで。そこからは外れないですよね、ライブ感という意味では。特に今回はベストアルバムはSUGIちゃん、ライブアルバムはJが中心になっていろいろ考えてくれたんです。

J　ベストアルバムの曲順に関してはSUGIZOがいろんなアイデアを出してくれて、それに対してみんなでああでもない、こうでもないと意見を出していったんです。そんな中で僕は彼に1つだけ、「WISH」で終わる盤を作ろうって提案させてもらって。

──それがDISC 1なわけですね。そしてDISC 2のラストには、これもやっぱり最後に入れるしかないよなという20分超えの大作「THE ONE -crash to create-」が収められています。この曲はベストアルバム、ライブアルバム両方ともDISC 2の最後を飾っていますが。

J　そうですね。さすがに1曲目だとキツいかなと。途中に入ってるのもちょっと嫌ですけどね（笑）。そもそもこの曲のあとに入れる曲、悩みますから。

──それだけ強い曲なわけですもんね。

J　この曲を作り終えたとき以上に、今思うことがあって。「THE ONE -crash to create-」では終幕からの12年という時間の溝を埋めたかった。そのためには1曲の中に12年分の物語を封じ込める必要があったんです。ある意味、バンドとして次の扉へ進むための儀式みたいなものだったと思うし、自分たちにとっては大きな勝負だった。もしこの曲ができてなかったら、今のLUNA SEAはないんじゃないかなとも思うし、その後の時間がどう進んでいたかもわからない。そういう重要な意味を持つ曲だと今改めて思うんです。そうなると、やっぱり最後に入れるのがふさわしいんですよね。

INORAN　この曲を演奏するときはいつもライブの最後なんですけど、演奏してもやり終えた感ではなくて、その先に続くものの意味をなんとなく考えながら終えてました。今Jが言った「次の扉へ進むための儀式」みたいな感覚はいつもありますし、そういう意味ではやっぱりラストじゃなきゃいけないんでしょうね。

予定調和の中で動いていたくない

──今回の2作品を聴いて、LUNA SEAに影響を受けたバンド、アーティストはたくさんいるけど、正統的な後継者ってまだ出てきていない……改めてこの25年間、唯一無二の存在として君臨してきたんだなと実感しました。

J　この5人みたいな人間が、ほかにもう1人ずついたら嫌ですよ（笑）。時代背景も大きいでしょうけど、僕たちみたいなバンドが出てくることはもう難しいのかなあって思うときもあるんですよね。5人それぞれが強い個性の持ち主で、その個性がぶつかり合うことで起こるケミストリーが僕たちをさらに特別なものとして存在させてくれたんです。だから5人のうちの誰かが力を抜いたらそのバランスは崩れてしまうし、その時点でLUNA SEAではなくなってしまう。そのスリルを含めて、このバンドの魅力だと思います。

INORAN　みんなそうだったと思うけど本気で真剣にぶつかってきたから、その結果が今のLUNA SEAなんだろうなって。5人それぞれが自分なりにベストを尽くしてきた、それだけなんです。

J　ガムシャラにやってきたら、いつの間にかこういうバンドになっていたというのもあるけど、僕ら自身も自分たちと同じような姿勢で活動するバンドを見て、育ってきただけなんで。でもあまり人にはお勧めできないですけどね、こういうバンドのあり方は（笑）。皆さんを不安にさせることも多いし、苦労や迷惑はかけるし（笑）。だけど予定調和の中で動いていたくないからね。だってロックバンドなんだから。でも本当に、 すごく“人間っぽい”バンドだと思いますね。

「これが今のLUNA SEAだ」という絶対的なものを見せたい

──この2作品が発売された翌日の5月29日には、東京・国立代々木競技場第一体育館で25周年を祝うスペシャルライブ「LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE -The Unfinished MOON-」があり、その翌週の6月7日からは全国ツアー「LUNA SEA 25th ANNIVERSARY LIVE TOUR THE LUNATIC -A Liberated Will-」がスタートします。

J　まず代々木のライブは25周年というその日をみんなで楽しみたいと思ってます。だから「A WILL」に特化するわけではなく、ちょっとお祭り的なものにできたらいいなと。

INORAN　そうですね。25年続けられていることへの感謝と、これから先も愛してもらうために、本当にスペシャルなライブにしたいと思いますね。

J　で、そのあとから始まるホールツアーでは「A WILL」の曲たちを交えて、「これが今のLUNA SEAだ」という絶対的なものを見せていきたいなと思ってます。

──ホールクラスで32本というツアーも、それこそ終幕前以来ですから14年ぶりになりますし。

INORAN　“REBOOT”後に回れてなかった地方のみんなのもとにもやっと会いに行けるので、「ひさしぶりだね」っていう思いを込めたライブにしたいですね。

J　25周年を迎えて、新しいアルバムを持って全国へ向かえるなんて、本当に最高のタイミングだと思うので、LUNA SEAのベストオブベストを見せていけたらいいなと。これからの1年、各地でいろんな物語が起きると思うし、その1つひとつが僕らにとってものすごく重要なものになると思うと、今からドキドキしますよね。

INORAN　1本1本を大切にして、バンドとしても個人としても昨日を超えていくというか。まあ基本的には楽しむことが一番じゃないですかね。きっと想像してる以上にいろんなことがあるだろうし、ただベストを尽くすのみです。その積み重ねに対して音楽の神様がご褒美をくれるかもしれないし、あるいは罰をくれるかもしれない（笑）。ツアーが終わったときには「ああ、このツアーにはこういう意味があったんだね」っていうことを感じられると信じて、みんなと一緒に素敵な時間が過ごせるようにプレイしたいです。