LUCKY TAPES|枠から抜け出し奏でる多彩なポップミュージック

終わることを知っているからこそ……

──このアルバムを聴いて、僕はLUCKY TAPESが作るポップスとしての深みがすごく増したなと思ったんです。ちょっと大きな質問になってしまいますが、海さんにとって、「ポップスを作る」ということに対するこだわりなどはありますか?

高橋健介(G)

うーん……自分の中では、あんまり「ポップスを作っている」っていう意識はないんですよね。だから、今回のアルバムにもこれだけいろんな音楽の要素が入ってるんだと思うし。自分の生き方的にも「ポップスを作らなければいけない」って制約を作ってしまうのは、やっぱりしっくりこないし。もちろん、J-POPや欧米のポップスを聴いて育っているので、無意識のうちに自分の作るメロディのわかりやすさみたいなものはあると思うんですけど、アレンジに関してはむしろ「わかりやすく作ろう」とは思ったことは一度もなくて。どちらかと言えば「わかりやすさ」とは対極の部分を求めていると言うか、どうやったら複雑に、面白く聴かせられるのか?ということを常に考えていたりして。

──今のポップスって、決して「わかりやすいもの」がど真ん中にある時代ではないですよね。むしろ、どれだけ作家のエゴやフェティシズムが濃く出ているのか?というところを、聴き手は求めている部分もあると思うんですよ。そういう意味で、海さんの感性はすごく現代的なポップス作家の感性だな、という気もするんです。この「dressing」というアルバムには、海さんの変な部分もたくさん出ていると思うので(笑)。

ははははは(笑)。変態性……みたいなことですよね(笑)。でもやっぱり、学生の頃に「自分は人とは違う」と信じていたのと同じように、作曲家なら誰でも作れるような普通のわかりやすいポップスは絶対に作りたくない、と勝手に対抗心を燃やしているタイプではあるので。特にJ-POPはある特定の形式に則って作られているものがほとんどですけど、自分はそこに対して面白さは一切感じていないんですよね。

──海さんの中に一貫してある、周りと違うことを求める感覚って、集団に属したりすることに対する拒否反応のようなものでもあるんですかね?

それは大いにあると思います(笑)。拒否反応と言うか、単純に苦手なだけなんだと思うんですけど、少数でいるほうが居心地はいいですね。音楽でも人でも、多くなれば多くなるほど、1つひとつの個体の個性は薄くなってしまう。人が大勢でいる場所もそうだし、似たような形式の音楽があふれている音楽シーンもそうだし……そこに面白みはあんまり感じないですね。少人数でごはんに行ったり、話をしたりするほうが、それぞれの個性も際立つし、深いところまで話せたりするから。そういうほうが、自分には合ってるなあと思います。

──僕はラストに収録された10曲目「ワンダーランド」がすごく好きで。この曲について伺いたいんですけど……この曲はサウンドも歌詞も、温かくて、どこか悲しくて、美しい曲だと思ったんです。この曲はいつ頃できたんですか?

この曲は、前作を作っていた頃にできたデモを広げていった曲なので、ほかの楽曲よりは早い段階でストックとしてありました。「Lonely Lonely」もそうなんですけど、「ワンダーランド」は、僕が今まであまり書いてこなかった恋愛のことを歌っているんです。ただ、恋愛のことをそのまま歌詞にするのも少し違和感があって。単純に恥ずかしいのかもしれないですけど(笑)。それで「恋愛」というモチーフを、「人生」に照らし合わせながら書けないかなと思ったりして。今まで書いてきた歌詞って、「何もかも忘れて踊ろうよ」「今を楽しもうよ」みたいなことをよく歌ってきたんですけど、それって、言葉だけみれば、ほとんどパリピの感覚と似てるなって(笑)。「一緒に踊ろうぜ」「楽しもうぜ」みたいな(笑)。

──言葉だけを受け取れば、そうですよね。

でも、上辺だけで成り立っている楽しさは自分は好きではないから。自分の作品を聴いてくださった方によく言われるんですけど、「楽しい時間はいつかは終わってしまう。その事実を知りながらも楽しもうとしているのが、高橋海の音楽なんじゃないか」って……まさにそうだと思うんですよね。恋愛もそうだし、人生もそう。そもそも命自体がいつかは終わってしまうものだから。終わることを知っているからこそ、今生きているその瞬間がより大切なものだと思えたり、より美しく見えてくるものだと思うし。相手のことを愛おしく思えたりする。「ワンダーランド」は、そういう限りある時間の中で生きる我々の儚くも美しい人間らしさ、みたいなものを恋愛に照らし合わせて書いてみました。

LUCKY TAPES

LUCKY TAPES 高橋海が選ぶ「dressing」に影響を与えた10曲

高橋海のチェックポイント

Thirdstory「Still In Love feat. Eryn Allen Kane」
コーラスワーク、ゴスペルでのアコースティックピアノのアプローチなど
ジョーイ・ドシク「Game Winner」
メジャーキーでのソウル感、メロディの温かさ
マット・クエンティン「Morning Dew」
ギターのフレーズ、コード感
Snakehips「Forever (Pt. II) feat. Kaleem Taylor」
サンプリングと生楽器の共存感
Brasstracks「Say U Won't」
ブラスセクションの積み方
ルーマー「What The World Needs Now Is Love」
壮大で豊かなオーケストレーション、儚さ
SOMA「In My Phone」
佇まいと艶やかさ
BASI & THE BASIC BAND「Rainy」
BASIさん、脱力感のある日本語ラップの魅力
Offonoff「춤」
温度感、Cosmo Pykeのギター
サーペントウィズフィート「bless ur heart」
神聖で神に召される感じ
LUCKY TAPES「dressing」
2018年10月3日発売 / Victor Entertainment
LUCKY TAPES「dressing」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
3996円 / VIZL-1424

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LUCKY TAPES「dressing」通常盤

通常盤 [CD]
2916円 / VICL-65043

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LUCKY TAPES「dressing」配信
CD収録曲
  1. 22
  2. Punch Drunk Love
  3. COS feat. BASI
  4. Balance
  5. Gossip
  6. Lonely Lonely feat. Chara
  7. Gravity
  8. Joy
  9. MOOD
  10. ワンダーランド
初回限定盤DVD収録内容

「LUCKY TAPES "22" Release One Man Tour」東京キネマ倶楽部公演ライブ映像

  • レイディ・ブルース
  • NUDE
  • Balance
  • Gravity
  • シェリー

ミュージックビデオ

  • MOOD
ツアー情報
"dressing" release tour 2018
  • 2018年10月3日(水) 大阪府 Shangri-La
  • 2018年10月6日(土) 広島県 CAVE-BE
  • 2018年10月8日(月・祝) 福岡県 BEAT STATION
  • 2018年10月10日(水) 静岡県 HAMAMATSU FORCE
  • 2018年10月12日(金) 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2018年10月14日(日) 大阪府 Shangri-La
  • 2018年10月19日(金) 岡山県 IMAGE
  • 2018年10月20日(土) 香川県 DIME
  • 2018年10月27日(土) 北海道 Sound Lab mole
  • 2018年10月31日(水) 宮城県 仙台MACANA
  • 2018年11月2日(金) 新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
  • 2018年11月4日(日) 石川県 vanvanV4
  • 2018年11月8日(木) 東京都 マイナビBLITZ赤坂
LUCKY TAPES(ラッキーテープス)
LUCKY TAPES
高橋海(Vo, Key)、田口恵人(B)、高橋健介(G, Syn)からなる3人組。結成直後に発表した5曲入りの作品「Peace and Magic」はわずか3カ月で完売し、2015年4月にデビューシングル「Touch!」、8月にデビューアルバム「The SHOW」を発表した。2016年7月に2ndアルバム「Cigarette & Alcohol」をリリースし、「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演を果たす。2018年5月に5曲入りのCD「22」でメジャーデビューし、10月にはメジャー1stアルバム「dressing」をリリース。同月よりライブツアー「"dressing" release tour 2018」を行う。