LUCKY TAPESが10月3日にニューアルバム「dressing」を発表した。
メジャーデビュー後、初めてのフルアルバムとなるこの「dressing」には、デビュー曲「22」のほか、BASI(韻シスト)やCharaをフィーチャリングゲストとして迎えた新曲などを収録。ポップスを軸としながらも、これまで以上に解放的でバラエティに富んだ聴きごたえのある作品が誕生した。
音楽ナタリーでは本作が誕生した経緯をコンポーザーでありフロントマンの高橋海(Vo, Key)に聞いた。また特集の後半では高橋海が「LUCKY TAPES 高橋海が選ぶ『dressing』に影響を与えた10曲」をテーマに制作したプレイリストも公開中。新作とあわせてチェックしてほしい。
取材・文 / 天野史彬 撮影 / マスダレンゾ
LUCKY TAPESのイメージから解放された
──今作を聴いたとき、これまでのLUCKY TAPESのアルバムとは違った質感を感じました。今まで以上に自由でエモーショナルなものを感じたと言うか。本作を作るに当たって、何かコンセプトのようなものはありましたか?
前作の「22」を作り終えたあと、少しは余裕ができるかなと期待していたんですけど、アルバム用の楽曲制作の締め切りまで1、2カ月しか時間が残ってなくて。結果、今回は時間をかけてコンセプトを作り込んだと言うよりは、できた曲を詰め込んでいった感じになりました。だからこそ、幅広い音楽性の入った作品になったなと自分では思っていて。今までは「LUCKY TAPESの音楽はこうあるべきだ」とか、「LUCKY TAPESとはこういうものだ」みたいな、リスナーや自分の中のイメージに沿って曲を作ることが多かったんです。それゆえにジャンル的にも偏りがあったと言うか。
──自分自身でどこかLUCKY TAPESを縛ってしまっている部分があった。
はい。ソロワークもやっている分、そことの区別も慎重になっていたし。ただ「22」あたりから、もっと自分のやりたいことをこのバンドでも出していいんじゃないかと思い始めて。これまでのLUCKY TAPESの音楽性に縛られず、好きなように曲を書けるようになってきたんです。その先に、このアルバムは存在している気がします。アートワークもそうなんですけど、どこまでもクリアでカラフルな多様性のある作品になったなと。
──このアートワークは象徴的ですよね。クリアケースの中に紫色のCDが入っている。無色透明な土台の上に「音楽」が色付いていると言うか。
まさに、そうですね。「dressing」というアルバムタイトルには、サラダにかける「ドレッシング」の意味もあるし、「着飾る」とか「着こなす」っていう意味もあって。人間って最初は何も色付いていない、無色透明な状態で生まれてきますよね。それから生きていく中で、何を着るか、何を買うか、どんな言葉を使うか、どんな人と関わっていくのか……そういうさまざまな選択によって、その人の色や味が形成されていくものだと思うんです。今回のアルバムの曲を聴きながら並べていく中で、改めてそういうことを考えさせられました。
自分には、自分なりの生き方があるはずだ
──「自分が選んだものが自分自身を形作っていく」という感覚は、海さんの中にずっとあるものですか?
そうですね。例えば僕は、インタビューで尊敬する人や目指しているところを聞かれることはよくありますけど、そういうロールモデル的な存在や目標設定って、今まで自分の中にあったことがないんですよね。何かを目指して未来を設定してしまうのは、違うなと思うんです。実際にそこに立ってみないと見えない道だってあるだろうし、今の時点で未来を決めてしまうと、それによって制約されることだって多いと思うんですよ。それよりも僕は、そのときどきの自分の好きなものや興味に従って生きていきたいという思いがあって。音楽を作り始める前からずっと、「こうなりたいからこれを選択した」と言うよりは、「こうやって築いてきたから今の自分があって、今の自分にはこっちが惹かれる」っていう後者の感覚のほうが強いんです。
──未来に向かって今を生きると言うより、瞬間を積み重ねてきたことで今の自分がある。海さんにはそんな感覚が強いんですね。でも、どうして目標やロールモデルを設定しない生き方を選んでくることができたのだと思いますか?
なんでだろう……理由なのか定かではないけど、学生の頃から、自分はちょっと変わっていたと言うか(笑)。「人とは違う」っていう感覚があって。学生時代はずっと自分が何をしたいかもわからずに、中途半端に一般の私立大学に入って……結局、大学は辞めちゃったんですけど。それでも、いずれはみんなと同じように就職するのかなあって、フワフワとしていたんですよね。でも、当時の自分は、そうやって大学を卒業して就職していく人たちのことを見て「自分はこのままでいいのかな」ってずっと自問自答していて。自分はそことは違う、同じにはなれない感覚があったんです。具体的に何か大きな確信があったわけではないんですけど……感覚的に。
──なるほど。
そういう感覚がずっとあるからか、何かを目指して生きていくことができないんですよね、きっと。すでに誰かが完成させた道を、後追いのようにして生きていくことができない。それに、根拠はなかったけど、根拠がないなりに常日頃から「自分には、自分なりの生き方があるはずだ」と思っていて。今では、それが音楽という形で見つけられて、その道を進むことができている状態ですね。これから先、興味の矛先が音楽以外に向くことも容易に想像できますけどね。
──だとしたら、当時の海さんの感覚に間違いはなかったわけですよね。9曲目「MOOD」の歌詞にある「ここまでは上手く生きてきたんだし 金も名誉もないけどさ 好きなことばっか追いかけ回して死にたい」というラインは、そうした海さんの生き方が一貫して今でも軸にあることを示しているような言葉だと思います。
そうですね……あの頃特に、ただただ感覚的に「あいつらとは違う」っていう変な意地とプライドがあっただけ、なんですけどね(笑)。「人とは違う」と思うことで、優越感を感じていたこともあったけど、周りになじめないことで生まれる居心地の悪さもあったし。
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もう壁はなくなりました
- LUCKY TAPES「dressing」
- 2018年10月3日発売 / Victor Entertainment
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初回限定盤 [CD+DVD]
3996円 / VIZL-1424 -
通常盤 [CD]
2916円 / VICL-65043
- CD収録曲
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- 22
- Punch Drunk Love
- COS feat. BASI
- Balance
- Gossip
- Lonely Lonely feat. Chara
- Gravity
- Joy
- MOOD
- ワンダーランド
- 初回限定盤DVD収録内容
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「LUCKY TAPES "22" Release One Man Tour」東京キネマ倶楽部公演ライブ映像
- レイディ・ブルース
- NUDE
- Balance
- Gravity
- シェリー
ミュージックビデオ
- MOOD
- ツアー情報
"dressing" release tour 2018 -
- 2018年10月3日(水) 大阪府 Shangri-La
- 2018年10月6日(土) 広島県 CAVE-BE
- 2018年10月8日(月・祝) 福岡県 BEAT STATION
- 2018年10月10日(水) 静岡県 HAMAMATSU FORCE
- 2018年10月12日(金) 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2018年10月14日(日) 大阪府 Shangri-La
- 2018年10月19日(金) 岡山県 IMAGE
- 2018年10月20日(土) 香川県 DIME
- 2018年10月27日(土) 北海道 Sound Lab mole
- 2018年10月31日(水) 宮城県 仙台MACANA
- 2018年11月2日(金) 新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
- 2018年11月4日(日) 石川県 vanvanV4
- 2018年11月8日(木) 東京都 マイナビBLITZ赤坂
- LUCKY TAPES(ラッキーテープス)
- 高橋海(Vo, Key)、田口恵人(B)、高橋健介(G, Syn)からなる3人組。結成直後に発表した5曲入りの作品「Peace and Magic」はわずか3カ月で完売し、2015年4月にデビューシングル「Touch!」、8月にデビューアルバム「The SHOW」を発表した。2016年7月に2ndアルバム「Cigarette & Alcohol」をリリースし、「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演を果たす。2018年5月に5曲入りのCD「22」でメジャーデビューし、10月にはメジャー1stアルバム「dressing」をリリース。同月よりライブツアー「"dressing" release tour 2018」を行う。