ナタリー PowerPush - LOVE PSYCHEDELICO
1人ひとりに寄り添う デリコ流グッドミュージック
SMAPとの仕事で得たもの
──音楽を取り巻く環境が変化してきた中で、音楽を作る意味は変わりましたか?
NAOKI それが環境によって変わることはないけど、たまになんのために作ってるんだろうなって、わかんなくなるときもある(笑)。最初の頃から自分たちが音楽を作るのは、売るためというより、「その曲を世の中に存在させるため」っていう感じが強かったから。ただ、それがネットの時代、ダウンロードの時代になって、余計そうなってきたとは思いますね。今って曲がクラウド的に世の中に存在して、それをみんなで共有している感覚になってきてるじゃないですか。もともと音楽って、形のない、モノとしての質感がないものだから、世の中に存在させたあとは、もうみんなのものだと思うんですよ。CDを買ってくれる人もいれば、ダウンロードしてくれる人もいれば、カバーをする人もいる。さっきKUMIが普遍的って言ったのも、そういうことなのかなって。
KUMI 音楽とリスナーの間の媒体のような存在でありたいかなっていう感じかな。
──例えば近年はSMAPに曲を書いたりもしていて、あの曲(「This is love」)は現在の彼らの代表曲のような存在になって、彼らのライブでもすごく重要な楽曲になっているじゃないですか。そういう仕事も媒体としてのLOVE PSYCHEDELICOの功績の1つと考えてもいいのでしょうか?
KUMI そうですね。曲との向き合い方や、そこに込める思いは変わらないけど、あの曲は彼らが歌うっていうのは意識して作ったから、自分たちが演奏する曲を作るより大変だった。
NAOKI 彼らにふさわしいコード進行や言葉があって、普段よりも理路整然とさせようとか、より普遍的なコード進行を多用しようとか、何にオマージュを捧げようとか、いつもとは違う作業だった。リズムトラックを作るだけで1カ月くらいかかったし(笑)。でも音楽を作る上での情熱は変わらないですね。
──ああいう形で自分たちの曲が広まっていったことが、今回のアルバムのポップス感にフィードバックを与えたところはありますか?
NAOKI 彼らと一緒に何度かライブや収録をしたのは大きかったかもしれない。同世代っていうこともあって、何かを共有している感覚もあるし。
KUMI うん。フィードバックっていう感覚は確かにあったと思う。音楽を作る理由の1つとして、やっぱり楽しい気持ちとか明るい気持ちとか希望を伝えたいという思いがあって。それを私たちが作った曲で彼らが伝えたときに、私たちにはできないような可能性を彼らはいっぱい持っていて、そういうところまで届くのを目の当たりにしたのは、とても素敵なことだったし。音楽ってすごく夢があるなって、改めて思いましたね。
これまでやってきたことは間違ってなかった
──今作「IN THIS BEAUTIFUL WORLD」からは、この世界のブライトサイドに光を当てようという強い意志を感じました。それは今の自分たちの役割だと感じているからですか? それとも今の時代にとって必要だと思ったからですか?
KUMI 今の時代に必要だからとか、そういう理屈ではなかった。自然とそういう曲が生まれていったね。曲を作りながら、今回は明るい曲が多いなあ、ポジティブだなあって気付いていった感じかな。
NAOKI うん。たまっていった曲を聴きながら、「あれ、今の俺たちってポジティブ?」みたいな。1曲1曲を通して音楽とピュアに向き合うっていうこと自体が、今の自分たちにとってすごくポジティブに思えることだったので。それがそのまま歌詞に現れたんじゃないかな。これまで以上にピュアな状態で音楽に向き合うことができたから。
──それはどうしてでしょうか?
KUMI 「ABBOT KINNEY」を作れたっていうのもあるし、事務所から独立したっていうのもあるし。そしてやっぱり震災の時期を超えたのが一番のきっかけかな。
NAOKI 震災のときに思ったのは、今の自分たちがやらなきゃいけないことは、新しい音楽を生み出して、みんなに素敵な日常のきっかけをプレゼントすることだって思って。「音楽の力を信じてがんばろうぜ」っていうんじゃなくて、ただグッドミュージックをみんなに届けるっていう、そういう音楽とみんながアクセスできることを強く願った。それって要するに、音楽の力を信じてたってことなんだけど。それを無理に言葉にしないで、純粋にただのグッドミュージックとして届けたかった。聴いてくれる人それぞれが主役みたいな、そういう音楽を作りたくて。そのためには、これまで以上にピュアに向き合うしかなかった。
KUMI 震災みたいな大変なことが起きて、みんなもう1回世の中に対してとか、自分自身に対してとか、いろんなことと向き合ったと思うんだよね。それは私たちもそうだったし。そこで向き合った結果、やっぱり自分たちには音楽しかないってことだったり、これまでやってきたことやそのやり方は間違ってなかったなってことが改めてわかったから。そういう確信があったから、すごくピュアでポジティブでいられたんじゃないかな。やっぱり音楽を信じていいんだって。
- ニューアルバム「IN THIS BEAUTIFUL WORLD」 / 2013年4月17日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3675円 / VIZL-524
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3675円 / VIZL-524
- 通常盤 [CD] / 3045円 / VICL-64007
収録曲
- No Reason
- Calling You
- Beautiful World
- Shining On
- It's You
- It's Ok, I'm Alright
- Good To Me (Album Version)
- Almost Heaven
- Good Days Ahead
- Dry Town ~Theme of Zero~
- Favorite Moment
- Bye Bye Shadow
初回限定盤DVD収録内容
- 「Beautiful World」(ミュージックビデオ)
- 「It's You」(ミュージックビデオ)
- 「Dry Town ~Theme of ZERO~」(ミュージックビデオ)
- 「Beautiful World」ミュージックビデオ撮影オフショット映像
- アルバムレコーディングオフショット映像
- 最新フォトセッション撮影オフショット映像
LOVE PSYCHEDELICO(らぶさいけでりこ)
1997年に結成された、KUMI(Vo, G)とNAOKI(G, B, Key)によるロックデュオ。2000年4月にシングル「LADY MADONNA~憂鬱なるスパイダー~」でデビューを果たし、流暢な英語と日本語とが行き交うKUMIのボーカルスタイルや、洋楽をほうふつとさせる楽曲がシーンに衝撃を与える。その魅力は瞬く間にリスナーに広がり、2001年発売の1stアルバム「THE GREATEST HITS」は200万枚を超えるメガヒットを記録する。その後も数々の名曲やヒットアルバムを作り続ける一方で、2004年には初のアジアワンマンツアーを開催し、2008年にはアルバム「THIS IS LOVE PSYCHEDELICO」でアメリカデビューを果たすなど海外での活動も展開している。2010年1月に自分たちのルーツをコンセプトにした5thアルバム「ABBOT KINNEY」をリリース。2013年4月に「ABBOT KINNEY」から3年3カ月ぶりとなるアルバム「IN THIS BEAUTIFUL WORLD」を発表した。