「ヴァッケン」を経て、日本人バンドの誇りを持って作品作りができた
──今作「CLOCKWORK IMMORTALITY」の収録曲はこれまでよりも1曲1曲の方向性がはっきりしているし、より綿密に作られているように感じました。例えば、シンフォニックな楽曲でも派手にストリングスを鳴らすのではなく、全体のバランスを見てしっかり音の調整をしているというか。
miyako あ、そうですね。デモの編曲の段階でシンセも全部入れるんですけど、ストリングスはなんとなく入れるものではないし、単純にシンセの音を入れたらいいってことでもないので無駄な音は1つもないです。1音1音しっかり考えて入れてますね。
miho あとは1stミニアルバム(2017年5月リリースの「THE LOVEBITES EP」)の頃から同じチームにミックスとマスタリングを手がけてもらってるので、作品を重ねるたびに仕上がりがよくなっていることも関係してると思います。最初の頃は「もうちょっとこうしてほしい」っていう注文があったんですけど、今は一発目でほぼほぼOKっていう。
──あとは、メロディがよりキャッチーになったと思います。
asami 確かに今回はメロディアスな曲が多いかもしれないですね。
miyako あと、私たちの曲は全部英詞なんですけど、歌詞を書いてるasamiも慣れてきたところがあるんだと思います。メロディや音の動きに対する歌詞の乗せ方がわかってきたというか。
asami そう。最初の頃は英語詞というものに対するイメージがみんなあやふやだったので、メロも日本語用のものになっていたんです。だからそこに英語を詰め込むのが大変で、ただの早口言葉になっちゃったりして。でもそれから少しずつ英語が乗せやすいメロが確立されていって、今回は私も英語の曲に慣れてきたこともあって書きやすかったですね。
──そういった見えない工夫が楽曲のわかりやすさにつながっていたんですね。
miyako メロだけじゃなくて、歌詞のキャッチーさも絶対に大事ですね。日本語も同じだと思うんですけど、一度聴いて忘れない言葉やメロってあるじゃないですか。あれはメロの動きと歌詞がバチッとハマったときにそうなると思うので、そういう意味では今回はいい感じでメロに言葉を当ててくれたと思います。
miho 「BATTLE AGAINST DAMNATION」のときは「ヨーロッパに進出するぞ!」っていう気持ちが強くて、ヨーロッパを意識しすぎたところがあったんですけど、「ヴァッケン」みたいな海外のフェスに出たことで自分たちの日本人としてのアイデンティティを改めて再確認できたので、それが今回の作品につながった部分もあると思います。
──より自然体で臨めたと。
miho もちろん、ヨーロッパのメタルへのリスペクトはふんだんに盛り込んでいるんですけど、私たちはヨーロッパのバンドではないので日本人のバンドとしての誇りをもって臨めたんじゃないかと思います。
──だからなのか、今作には本当にさまざまなタイプの曲が詰まっていて、「自分たちはこれがやりたいんだ」っていう開き直りのような思いが伝わってきました。
miyako そうですね。今までは「こういう曲を書かなきゃ」っていう意識もあったし、メンバーやプロデューサーからのオーダーを聞いて作ることもあったんですけど、今回は本当に自由にやりました。もちろんみんなの意見も聞くけど、基本的には「私はこれがカッコいいと思ったから、みんながよければこのまま進めます」って感じでしたね。ほかのメンバーも曲を書きましたけど、それぞれのらしさが出た曲がそろったと思います。
ツインギターのメロを歌っても成り立つし、歌をギターが弾いても成り立つ
──asamiさんは作品の最後を飾るバラード「EPILOGUE」で初めて作曲に挑戦していますが、これもasamiさんのルーツが伺える等身大のメロディですよね。アレンジを変えたらR&Bとしても十分に通用する曲だと思いました。
asami ほかのメンバーと同じことをするぐらいならその人が書いたほうがいいと思うし、こういうバラードなら自分らしさが出せると思ってありのままを出しました。
──そして、LOVEBITESはギターが本当にたまらないですね。
asami ツインギターはLOVEBITESの花形なので。
miyako このバンドをやってるうちにmidoriのクセがわかってきたので、今回はツインギターをより生かした曲を作ろうと思ってました。実際、バッキングではほぼハモってるし、お約束のギターソロでもツインハモを「これでもか」っていうぐらい入れてるので、これがライブでバッチリ決まったら「優勝!」って感じですね(笑)。
──あはは!(笑)
miyako あと、これまではmidoriが速いフレーズを弾いて、自分はメロウな泣き系のフレーズを弾くことが多かったんですけど、今回はそれも生かしつつ、速めのパッセージを入れてみたりもしましたね。速弾きは昔から苦手なんですけど、「できないからやらない」だとアーティストとして成長しないので。
──素朴な疑問なんですが、どうやったらあんなフレーズが出てくるんですか?
miyako 自分のギターソロに関しては、何回もバックで曲を流してジャムセッションのように構築していきます。フレーズが1つ固まったら録っておいて、次の小節に移っていくっていう。ツインハモは歌メロと同じ要領で鍵盤で作ります。ツインハモのパートはお客さんにも歌ってほしいので、今回はそういうフレーズを意識しました。
──ああ、今の話を聞いて合点がいきました。LOVEBITESはある意味、ギターもボーカルのように歌っているし、ボーカルも楽器のように鳴っていると感じていたので。
asami 私たちは歌も含めて全部が楽器として同じラインに並んでいるのがいいと思っているし、ボーカルだけが前に出ることを求めていないんですよ。だからツインギターのメロを私が歌っても成り立つし、私の歌をギターが弾いても成り立つと思います。
ガールズメタルバンドとは呼ばれたくない
──こういうボーカリストとギタリストがいる中、mihoさんが演奏面で意識するのはどういうことなんですか?
miho 2人がギターソロに徹してもらえるように意識してますね。例えば、ギターはバッキングからソロに移ると急にフレーズが上に行くので、そういうときにベースでどう支えるのか考えてます。
──まさに縁の下の力持ち。今日の話を聞いた限り、LOVEBITESの肝はメロディなんですね。
miyako もっと言うと、そこにハメる言葉によってメロの印象がまったく変わるから、メロと歌詞のマッチ感じゃないですかね。
miho 日本人がやってるとは思えないようなサウンドに、日本人らしさが感じられるメロディが乗っているのがLOVEBITESだと思ってます。
──なるほど。ところで、自分たちの活動を通じてメタルの地位を高めたいという意識はあったりしますか?
miho けっこうあります。私たちを通して日本でメタルがもっと広まったらいいなと思ってます。
──日本だとまだまだメタルは偏見の目で見られることが多いですよね。
miyako 全部が全部白塗りとかのイメージもいまだにありますしね。
asami 日本には以前の私みたいな人がまだわんさかいるんですよ。実際、私の周りも「え、メタルやるの!?」って感じだったし。メタルっていう言葉だけで敬遠する人が本当に多いんですよ。なんでこんなにカッコいい音楽が「えっ……!」って思われるようなジャンルになってるのか不思議ですね。
miyako 白塗りとかを誇張したマンガとかでイメージが付いちゃってる部分もあると思うんですよね。そういうほうがネタとして面白いし、メディアもそういうのを面白おかしく取り上げるから、そういうイメージがお茶の間に定着してるのかもしれないですね。
asami ボーカルの私が言うのも変ですけど、歌次第だと思うところもあって。楽曲がいくらカッコよくても、歌い方とか表現次第で引いちゃう人がけっこういると思うんですよ。自分自身もそうだったし。
miho なので、彼女の歌がLOVEBITESの生命線ですね。彼女の感性や歌がバンドに対してうまく作用してると思います。
──今後、どういう存在を目指していきますか?
miho 日本を代表するメタルバンドですね。いわゆる“ガールズメタルバンド”ではなくて。
asami 私たちは自分たちのことを、俗に言う“ガールズメタル”とは思っていません。ただのメタルバンド。あと、私たちは最初に決めたことは絶対に崩さないって決めてるんですよ。例えば、日本語で歌ったらいいのにっていう意見をよく聞きますけど、今のスタイルを崩したら自分たちは終わりだと思ってるし、これからもやりたいことを貫けばいいと思ってます。
──結果を残せば周りは付いてきますからね。
miho 「ヴァッケン」に出られたりヨーロッパツアーを回れたり、音源の評価もついてきてるので、自分たちがやってきたことは今のところ間違ってないってみんな思ってます。だから、今後もこのまま突き進んでいくだけですね。
- LOVEBITES「CLOCKWORK IMMORTALITY」
- 2018年12月5日発売 / Victor Entertainment
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完全生産限定盤A
[CD+Blu-ray]
5940円 / VIZL-1476 -
完全生産限定盤B
[CD+DVD]
4860円 / VIZL-1477 -
通常盤 [CD]
3132円 / VICL-65080
- CD収録曲
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- Addicted / アディクテッド
- Pledge Of The Saviour / プレッジ・オブ・ザ・セイヴィアー
- Rising / ライジング
- Empty Daydream / エンプティ・デイドリーム
- Mastermind 01 / マスターマインド01
- M.D.O. / M.D.O.
- Journey To The Otherside / ジャーニー・トゥ・ジ・アザーサイド
- The Final Collision / ザ・ファイナル・コリジョン
- We The United / ウィ・ザ・ユナイテッド
- Epilogue / エピローグ
- 完全生産限定盤Blu-ray / DVD収録内容
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「BATTLE AGAINST DAMNATION TOUR」東京・TSUTAYA O-EAST公演
- ジ・アウェイクニング THE AWAKENING
- ザ・クルセイド THE CRUSADE
- ウォーニング・ショット WARNING SHOT
- ブレイク・ザ・ウォール BREAK THE WALL
- スクリーム・フォー・ミー SCREAM FOR ME
- シャドウメイカー SHADOWMAKER
- アバヴ・ザ・ブラック・シー ABOVE THE BLACK SEA
- インスパイア INSPIRE
- ジ・アポカリプス THE APOCALYPSE
- ザ・ハマー・オブ・ラス THE HAMMER OF WRATH
- ライアー LIAR
- バーデン・オブ・タイム BURDEN OF TIME
- ドント・バイト・ザ・ダスト DON'T BITE THE DUST
- アンダー・ザ・レッド・スカイ UNDER THE RED SKY
- エッジ・オブ・ザ・ワールド EDGE OF THE WORLD
- ブレイヴハーテッド BRAVEHEARTED
- ツアー情報
CLOCKWORK IMMORTALITY TOUR IN JAPAN 2019 -
- 2019年1月12日(土) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2019年1月13日(日) 愛知県 ElectricLadyLand
- 2019年1月27日(日) 東京都 マイナビBLITZ赤坂
- 2019年2月10日(日) 福岡県 DRUM SON
- 2019年2月15日(金) 宮城県 仙台MACANA
- 2019年2月23日(土) 北海道 DUCE SAPPORO
- LOVEBITES(ラブバイツ)
- 女性5人によるメタルバンド。日本のメタルシーンで名の知られていたmiho(B)とharuna(Dr)の2人が2015年に結成へ向けて動きはじめ、VAMPSやUVERworldなど、そうそうたるアーティストの作品にコーラスとして参加してきたasamiをボーカルに迎え、男勝りの激しいメタルサウンドに女性らしい伸びやかなボーカルを乗せるというサウンドメイキングの方向性が固まる。2016年にmidori(G / ex. 激情★めたりっちぇ)と、サポートメンバーのmi-ya(G, Key / 21g、ex. a DROP OF JOKER)がバンドに加わり、強力なツインギターを武器にLOVEBITESとして本格始動した。初ライブは2016年11月で、2017年5月には1stミニアルバム「THE LOVEBITES EP」をリリース。同年8月にmi-yaが正式加入し5人体制となると、10月に1stフルアルバム「AWAKENING FROM ABYSS」を発売し、12月に東名阪とイギリスにてライブを行った。2018年6月に発表された2ndミニアルバム「BATTLE AGAINST DAMNATION」からmi-yaがmiyakoに改名。この年には国内の「Vans Warped Tour Japan 2018 Presented by XFLAG」、ドイツの「Wacken Open Air」、イギリスの「Bloodstock Open Air」と大型フェスにも多数出演した。12月には2ndフルアルバム「CLOCKWORK IMMORTALITY」をリリース。なおLOVEBITESのすべての作品は、NightwishやChildren Of Bodomの作品で知られるフィンランドのエンジニアチームが手がけている。