Frankie Valli and The 4 Seasons
「ANTHOLOGY」
「LONDON NITE」のイメージって僕の中ではパンクじゃなくてオールディーズなんです。初めて遊びに行ったとき、「アメリカン・グラフィティ」とかアメリカの青春映画みたいな世界が突然目の前に現れたような衝撃を覚えて。当時、「A STORE ROBOT」っていうショップの店員さんが50'sっぽい格好で遊びに来てたんですけど、その人たちがビリヤードしてたり。田舎から出てきた自分にとっては、とにかく煌びやかで眩しい世界でした。そうそうたる有名人が遊びに来ていたし。「『宝島』に載ってる人たちが本当にいる!」みたいな(笑)。そういう光景を思い出すたびに、頭の中に流れるのがFrankie Valli and The 4 Seasonsとか、このあたりのオールディーズだったりするんです。
The Clash
「London Calling」
僕はSex Pistolsよりも圧倒的にThe Clash派です。パンクバンドではあるんだけど、The Clashからは破壊的な衝動ではなく、むしろ愛を感じたんですよね。あと常に理想と現実の間で葛藤してるような姿勢にもグッときます。ほかのバンドは障害にぶち当たると、あっ気なく解散しちゃったりするんだけど、The Clashはボロボロになるまでバンドを続けて。本当にカッコいいなと思います。一番思い入れがあるアルバムは「London Calling」。この作品を通じて、レゲエをはじめとするいろんな音楽に興味を持つようになりました。あとポール・シムノンのルードボーイ然とした佇まいにも憧れましたね。ハットをかぶるようになったり、ファッション的な部分でも影響を受けています。
The Special AKA
「Bright Lights / Racist Friend」
The Specialsから派生したバンド。「in the studio」というアルバムが大好きで、自分の作品を作るときはいつも「in the studio」を聴いて、「これを超えられるようなアルバムを作ろう!」と気合いを入れてレコーディングに臨んでます。The Specialsのボーカリストだったテリー・ホールが結成したFun Boy Threeも好きですけど、僕的にはラテンやジャズなど、さまざまな音楽を意欲的に取り込んでいったThe Special AKAの音楽的な成長の仕方にシンパシーを感じます。例えばロンナイから巣立っていった須永辰緒さんが、パンクからヒップホップを経て、ジャズにたどり着いたり。1つの道を突き進むのもカッコいいですけど、そういう成熟の仕方が僕には理想的に思えるんですよね。
SHOTS「SHOTS」
DJの松岡徹くんと藤井悟くんが90年代初頭にやってたユニット。サウンド的には当時最先端だったグラウンドビートです。徹くんとは同い年なんだけど、「同世代で、こんなに音楽に詳しい人がいるんだ」って出会った頃にすごく驚かされました。で、悟くんはモッズシーンにも出入りしてて、とにかくスタイリッシュな人。2人共モデルと付き合っていて、彼らを見て「DJってモテるんだな」と思ってました(笑)。ロンナイ周辺にいたカッコいい不良の代表格と言うか、僕にとってのルードボーイのお手本。徹くんも悟くんも音楽的にすごく鋭い感覚の持ち主で、いち早くワールドミュージックとかをDJセットに盛り込んでましたね。常に意識が世界を向いててアンテナの張り方がヤバかった。
THE BLUE HEARTS
「THE BLUE HEARTS」
僕の中で、藤井悟くんと松岡徹くんはロンナイに“優しさ”を持ち込んだ人たちだと思っていて。2人共ホントに性格がいいんです。ロンナイは揉め事も多かったんだけど、彼らがいたことで現場の雰囲気がよくなっていたような気がします。で、そんな悟くんと仲がよかったのが甲本ヒロトさん。ヒロトさんもモッズシーン出身ですからね。ロンナイにも遊びに来てたけど、腰が低くて優しい人っていう印象があります。僕が考えるにTHE BLUE HEARTSの功績というのは、日本のパンクシーンに“優しさ”を持ち込んだことだと思うんです。それまでのパンクシーンって閉鎖的で殺伐としてたんだけど、彼らが登場したことでシーンの間口が広がった。そういう意味でも革命的なバンドだと思います。
The Style Council「Cafe Bleu」
ポール・ウェラーがソロになって初めて来日したとき、僕がラフォーレ原宿でやってたセルロイドっていうショップに来店したことがあったんです。お店にThe Style Councilのライブ盤があったからサインをお願いしたんだけど、「これは俺にとって過去のレコードだから、君には申し訳ないけどサインはできない」って断られて。その言葉を聞いて、自分もこんな人になりたいなと思ったんです。ポール・ウェラーはモッズカルチャーの代表的な存在ですけど、ファッションではなく生き方がモッズなんですよね。このアルバムではThe Jam時代のパンキッシュなサウンドから一転、ジャズやボサノバといった新たな音楽的要素が彼独自のセンスでブレンドされています。
The Pale Fountains
「Pacific Street」
Aztec CameraとかOrange Juiceとか、いろんなネオアコバンドがいますけど僕が一番好きなのがThe Pale Fountains。ほかのバンドに比べてサウンド全体に哀愁が漂っていると言うか、若さゆえの陰りみたいなものを感じます。トランペットが入ってるのも僕的には大きなポイント。例えばStray Catsで言えば「Lonely Summer Nights」だとか、昔から管楽器が入ってる曲になぜか惹かれてしまうんです。THE ZOOT16を結成するとき真っ先にサックスのメンバーを入れたのも、そういう理由からですね。The Pale Fountainsはジャケットのアートワークも素晴らしくて。写真やロゴも含めすべてにおいて世界観が統一されていて、大切にモノ作りをしている感じが伝わってきます。
Les Negresses Vertes
「Mlah」
ロンナイにはパンクっぽいファッションの人たちが多かったんですけど、何人かスタイリッシュなスーツを着て遊びに来る人たちがいて、その人たちのことがずっと気になっていたんです。で、あるとき「普段、どんな音楽を聴いてるんですか?」って尋ねたら、Les Negresses Vertesの存在を教えてくれて。彼らはフランスのバンドなんですけど、必死に探してこのレコードを買いました。同時期にMano Negraというフランスのバンドにもハマって。イギリス以外のヨーロッパの音楽って、それまで全然知らなかったから自分の中ではすごく新鮮な感覚でした。そういった未知の音楽に出会えたのもロンナイのおかげかなと思います。いろんな嗜好性を持つ音楽ファンが集まっていたので。
The Ska Flames「Wail'n Skal'm」
日本が世界に誇るスカバンド。代表曲の「Tokyo Shot」はロンナイで必ず誰かがプレイしてる印象があります。世界を見渡しても、ここまで男らしいオーセンティックなスカを演奏してるバンドっていないんじゃなかな。以前、フレイムスとイベントで競演したとき同じ車で移動したことがあったんですけど、バンド内でトラブルがあったみたいで移動中ずっと車内に険悪な雰囲気が流れてたんですよ。「一体、今日のライブはどうなるんだろう?」と思ってたんですけど、本番になったら過去最高レベルの素晴らしい演奏を聴かせてくれて。何があっても各自が職人的に自分の役割をまっとうする姿勢と言うか。30年続いてるバンドの底力みたいなものをまざまざと見せつけられました。
- The 37th Anniversary LONDON NITE X'mas Special 2017
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2017年12月17日(日)東京都 clubasia
OPEN&START 16:00LIVEギターウルフ / THE NEATBEATS / 勝手にしやがれ / THE ZOOT16 / Lemon & The Availables / THE TOKYO
DJ大貫憲章 / ヒカル / 稲葉達哉 / SHOJI / katchin' / Yossy / U-ichi / YU-TA
ゲストDJ松田“CHABE”岳二(LEARNERS)
- 渡辺俊美(ワタナベトシミ)
- 1966年12月6日生まれ、福島県出身のアーティスト。TOKYO No.1 SOUL SETのボーカル&ギタリストであり、ソロユニットTHE ZOOT16でも活動。2010年に、福島県出身の松田晋二(THE BACK HORN)、山口隆(サンボマスター)、箭内道彦(風とロック)とともに猪苗代湖ズを結成。2012年6月に初のソロアルバム「としみはとしみ」をリリースした。2013年12月にTOKYO No.1 SOUL SETのアルバム「try∴angle」を発表。2014年4月に刊行した初の著書「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」がベストセラーとなり、翌2015年にテレビドラマ化された。2015年6月リリースのシシド・カフカのミニアルバム「K5(Kの累乗)」では常磐道ズとして「くだらない世の中で」の作詞・作曲・プロデュースを担当。また2016年に上映された映画「パパのお弁当は世界一」では武田玲奈と共に主演を務めた。