音楽ナタリー Power Push - ろん
人気歌い手とプロデューサー恩田快人、それぞれが考える「J-POPの魅力」
ニコニコ動画を中心に活躍する歌い手・ろんが、アルバム「ろんかば -J-POP ZOO-」を完成させた。タイトル通り、1990年代から最近までのJ-POPの数々をカバーした同作。サウンドプロデュースには、ボカロシーンで活躍するクリエイターに加え、亀田誠治や恩田快人、鳥海剛史、フルカワユタカ、ミト(クラムボン)、鈴木Daichi秀行など第一線のミュージシャンやプロデューサーが集う。
今回の特集では、ろん本人へのメールインタビューに加え、JUDY AND MARY「そばかす」のカバーでアレンジを手掛けた恩田快人への取材が実現。アルバム制作の裏側やろんのキャラクターに加えて、JUDY AND MARY時代のエピソードなどについても恩田に話を聞いた。
取材・文 / 柴那典 撮影 / 上山陽介
J-POPとボカロは用途がまったく別物
──「ろんかば -J-POP ZOO-」完成おめでとうございます。できあがったときの感触はいかがでしたか?
ありがとうございます! なんとも言えない気持ちでした。達成感が一番強かったと思います。音源を通しで聴いたときには泣きそうになりました。いや、たぶん泣いてました。
──J-POPのカバーアルバムを作ろうというアイデアはどういうところから生まれたんでしょうか?
ろんの“中の人”のモットーは「時の流れに身を任せる」なので、気付いたらこうなってました。レーベルの担当さんに頭が上がりませんが、作れてよかったです。
──ボカロなどのネットシーンを中心に活躍しているろんさんから見て、J-POP全般にはどんなイメージを持っていますか?
いわゆる歌い手とは別の人間、「歌手」が歌っているので、J-POP自体ボカロ曲とはまったく別物だと思います。うまく言い表せませんが、J-POPはウォークマンやカーステレオで聴くもので、ボカロは画面を見ながらコメントと一緒に楽しむものだと思ってます。
──ろんさんは海外にいらっしゃったと聞いていますが、そういった環境で日本のポップスはどういうふうに届いていました?
正直に言うと、中学生以降J-POPはまったくと言っていいほど聴いておりませんでした。なので、今になって名曲を知ったりします。今回のアルバムの選曲でもいろいろなJ-POPを聴きました。新しい発見があったりして、面白かったです。
──収録された楽曲はどんな基準でセレクトしていきましたか?
ろんが歌いたい曲というだけでなく、皆さんがろんの声で聴きたいと思うような曲を選びました。
──1990年代、2000年代、そして2010年代とさまざまな年代のJ-POP楽曲が選ばれていますが、その理由は?
もしかすると頭の切れる担当さんがそう仕向けたのかもしれませんが、ろんとしては偶然でした。若い子たちにも昔の名曲を聴いてもらえたらうれしいです!
──ろんさんの考える「J-POPの魅力」とは?
当たり前ですが「日本語」が魅力的です。シャイな日本人だからこそ、J-POPの気持ちを伝える能力はぴかいちだと思います。
歌った経験はなかったけど、なぜか自信だけはあった
──そもそも歌い手としてニコニコ動画に「歌ってみた」動画を投稿したきっかけは?
動画を観る側から、投稿する側になってみたかったというのが最初です。それは実況でもMADでもなんでもよかったのですが、一番自分ができそうなのが「歌ってみた」だったということです。
──それ以前、小さな頃から歌を歌っていたんですか? レッスンを受けていたり、バンドをやっていたりなどの経験はありましたか?
歌は好きでしたが、バリバリのスポーツ人間だったので、ちゃんと歌った経験はゼロでした。初めて動画を投稿した頃、なぜか自信だけはありました。
──思春期に、自分の声や歌についてどう思っていましたか?
母親の声を聞いて「将来あの声になるのか……」と思うくらいしか、声について考えたことはなかったです。
──「おちゃめ機能 歌ってみた」など、投稿した動画が大きな反響を呼んだとき、どう感じましたか?
不思議とあまり驚きませんでした。すごい再生数だなあと他人事のように思っておりました。今考えると本当にすげえ!
──歌い手としての手応えを感じたのは?
感じてないと思います。ただ楽しいと思っております。今も昔もずっと変わりません。
──2011年には1stアルバム「EXIT TUNES PRESENTS ろん BEST -ひっしに歌ってみた編-」をリリースしました。この作品を今振り返って、どう感じますか?
あのときの全力だと思います。海外に住んでいたのでとても忙しい中での制作でした。大好きな方々に囲まれてうれしそうに歌っているのを感じます。この1stアルバムがあったからこそ、今回のアルバムに一歩踏み出すことができたのだと思います。
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- ろん J-POPカバーアルバム「ろんかば -J-POP ZOO-」2015年8月26日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定直筆サイン入りストラップ同梱盤 [CD+グッズ] 2808円 / WPCL-12183 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2376円 / WPCL-12172 / Amazon.co.jp
収録曲(カッコ内はオリジナルアーティスト)
- RPG(SEKAI NO OWARI)
produced by 亀田誠治 - そばかす(JUDY AND MARY)
produced by 恩田快人、鳥海剛史 - 午前8時の脱走計画(Cymbals)
produced by ミト(クラムボン) - スピカ(スピッツ)
produced by ジミーサムP - First Love(宇多田ヒカル)
produced by keeno - ESCAPE(MISIA)
produced by フルカワユタカ - ブルーバード(いきものがかり)
produced by 鈴木Daichi秀行 - ENDLESS STORY(REIRA starring YUNA ITO)
produced by おさむらいさん - JOY(YUKI)
produced by ジミーサムP
<ボーナストラック>
- スイートマジック(2015 Summer ver.)
produced by Junky
ろん
ニコニコ動画を中心に活動する歌い手。初めて動画を投稿した際にイギリス・ロンドン在住だったことから「ろん」と名乗るようになった。2010年5月に投稿した動画「おちゃめ機能 歌った」で一気に注目を集め、6月には自身初のミリオンを達成。同動画は2012年3月にニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリ史上初の600万再生となり、2015年8月の時点で再生数は1040万を超えている。2011年11月に初のソロアルバムとなる「EXIT TUNES PRESENTS ろん BEST -ひっしに歌ってみた編-」を発表。2015年8月にはJ-POPカバーアルバム「ろんかば -J-POP ZOO-」をリリースする。キュートかつ愛らしい歌声で中高生を中心に絶大な支持を集め、Twitterのフォロワー数は22万人を超える。
恩田快人(オンダヨシヒト)
兵庫県神戸市出身のベーシスト / 音楽プロデューサー。1982年にヘヴィメタルバンド・PRESENCEを結成し、1990年にヘヴィメタルバンド・JACKS'N'JOKERに加入した。その後、映画「いつかギラギラする日」の撮影で出会ったYUKIとともに1992年にJUDY AND MARYを結成し、同バンドのリーダーを務める。JUDY AND MARYは「Over Drive」「そばかす」などの大ヒット曲を飛ばし、「NHK紅白歌合戦」への出場や東京ドーム公演などを行う国民的人気バンドとなるが、2001年に解散。その後はWhiteberryなどのプロデュースや、さまざまなアーティストへの楽曲提供、辻仁成率いるZAMZA N'BANSHEEへの参加など、多方面での活躍を見せている。