ナタリー PowerPush - livetune

SEKAI NO OWARIのFukaseを迎えた「Take Your Way」

どこを見ても敵だらけ。それがすごくいい

──周囲を見て「負けないぞ」と思う精神みたいなものもありますよね。

kz

それはありますよ。例えばtofubeatsが活躍してるのを見て「こっちもやったろうじゃん!」っていう気持ちも生まれるし、banvoxが海外に呼ばれてるのを見て「この野郎!」って思うし。幸せなのは、周りのみんなががんばってるっていうことですね。同年代のPandaBoYとかfu_mouとかもそうだし。

──自分の周りの活躍しているトラックメーカーに刺激を受ける。

それだけじゃないですね。同年代って意味では、DJ YUMMYとか、それこそFukase(SEKAI NO OWARI)くんとか、あとはキリショー(鬼龍院翔 / ゴールデンボンバー)さんとかもそう。同年代でがんばってる人たちがめちゃくちゃたくさんいる。そこに対して自分も何かしないと置いてかれるなっていうのはすごく思う。

──なるほど。

あとは、上の世代の人たちに対してもありますよ。菅野よう子さんとか、中田ヤスタカさんとか、☆Taku Takahashiさんとか、それこそ山下達郎さんとか、音楽業界にはいろんなレジェンドがたくさんいますからね。上もいれば下もいるし、自分と同世代もいるし、どこを見ても敵だらけ。それがすごくいいなって思う。

今、やらなきゃいけないのは純粋にポップスを作ること

──そういう中で、自分なりに考える「livetuneならではの戦い方」ってどういうものですか?

真っ当なポップスを作ることですね。それが一番だと本当に思う。ついつい奇をてらったことをやりたくなっちゃうんですよ。けれど真っ当なことって逆になかなかできない。それを形にするのが、何よりlivetuneでしなきゃいけないことだと思います。だからこそ最近はダンスミュージックには全然こだわってない。「Take Your Way」とか、全然キック弱いですし。ダンスミュージックを基軸にポップスを作るのって、別に今さらやることでもないし。今、やらなきゃいけないのは純粋にポップスを作ること。それがいかに難しいことかがわかってきてるので、それをやり続ければいいのかなっていうのが最近のlivetuneっていうプロジェクトに関する思いですね。

──奇をてらったことをやりたくなる、というと?

例えば、最近だとみんなダブステップをやりたがったり、トラップに走ったりするんですよ。僕もやってたし。でもそういうのは、なんかもういいやと思ってしまった(笑)。ここ半年は特に、改めてポップスっていうものについて考えてたんですよ。「Transfer」は複雑なメロディだったから、それをもっと簡略化してシンガロングにしなきゃいけないとか思ったりしたし。そういうようなことをいろいろ考えてました。

ファンタジスタ歌磨呂さんは毎回150%か200%くらいの力でやってくれる

──今回の曲、ファンタジスタ歌磨呂さんが監修したPVも拝見しました。

どうでした?

──前の「Transfer」のときもそうですが、ファンタジスタ歌磨呂さんはlivetune関連の仕事では、とにかく身を削ってきてるなと思いました。

kz

削ってますよね、やっぱり!(笑) 会うたびに命の灯がどんどん小さくなっていってるような気がして、大丈夫かなって思うんです。そこまでお願いしてるわけじゃないので逆に申し訳ないなって思うんですけど。でも毎回150%か200%くらいの力でやってくれてるのは、本当に感謝ですね。またとんでもないもの作ったなって思います。

──あの映像には、歌磨呂さんなりの「この曲の持ってる熱量にはこれで打ち返さなきゃ!」っていう熱さを上乗せしてきてる感がありますね。

そんなことを言ってた気がします。歌磨呂さんだけじゃなくて、アニメスタッフの方も相当すごいんですよ。あの映像をCGじゃなくて手描きでやる時点でぶっ飛んでる。さらにわけのわからないことをしちゃったなっていう。歌磨呂さんも、もう二度とやりたくないって言ってましたね。このセリフを聞いたの3回目くらいですけど(笑)。

いつかチバユウスケさんとやってみたい

──livetuneのこの先についても話を聞ければと思うんですけれども。まずボーカルに関しては、今後も1人に絞らずいろんな歌い手が個性を発揮するプロジェクトになっていくんでしょうか?

今後は1人に絞ることもあるかもしれないですけど、それはそういう歌い手が見つかってからですかね。今はとりあえず流浪の旅を続けてます(笑)。アルバムを1枚作るまではとりあえずこういう形でやっていきたい。でも、これってすごく体力がいるやり方なんですけどね。

──例えばどんな人と一緒にやってみたい、とかあります?

チバユウスケ(The Birthday)さんのあのシャウトには惹かれますね。チバさんといつか何かやれたらいいなって思いますけど、それにはより僕の音楽の幅が広がんないと彼を受け止めることができないんじゃないかなと思います。何年か越しでいいのでお願いできたらと思っています。

──曲だけじゃなく、今、こういうことをやってみたいというアイデアは何かありますか?

声の話だけじゃなくて、今はなんかパフォーマンスとして楽しいことをしたいなっていうのがあるんですよね。とりあえずバカが集まってただ楽しんで踊るみたいなことを、1回だけやりたい(笑)。マイケル・ジャクソンの「スリラー」みたいに、みんなで踊るPVとか。とにかくバカなことを1回やってみたいなっていうのはありますね。

──バカなことをやりたいと思ったのは?

なぜか曲が毎回シリアスになってるんで、考えが詰まっちゃう傾向があるんですよ。だからたまにはバカみたいなことがやりたい。あと僕のDJは基本的にバカみたいなやつしかかけないんで。僕、意外とそっちのほうが好きなんですよ。まだ詳しくは何も決まってないですけど、いつかそういうのが実現したら、「ああ、ナタリーで言ってたやつか」と思ってくれたらうれしいです(笑)。

ニューシングル「Take Your Way」 / 2013年6月5日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / TFCC-89442
初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / TFCC-89442
通常盤 [CD] 1000円 / TFCC-89443

CD収録曲
  1. Take Your Way / livetune adding Fukase(from SEKAI NO OWARI)
  2. Ready for Calming
  3. Each and All / livetune adding Rin Oikawa(from Q;indivi)
  4. Take Your Way(Inst)
  5. Each and All(Inst)
初回限定盤DVD収録内容
  1. 「Take Your Way」MV
  2. 「Take Your Way」MV Ver. AUTHENTIC
  3. 「Take Your Way」MV Ver. CELL FRAME
  4. 「Take Your Way」MV Ver. BLACK & WHITE
  5. 「DEVIL SURVIVOR2 the ANIMATION」OP映像

Toy's Hop

livetune(らいぶちゅーん)
livetune

音楽プロデューサーのkzによるユニット。2007年9月、ボーカロイド「初音ミク」を使用して制作したオリジナル楽曲「Packaged」を動画サイトに投稿し一躍注目を浴びる。2008年8月にアルバム「Re:package」でデビューしたのち、さまざまなアーティストの楽曲の作詞、作曲、リミックスなどを手がける人気クリエイターとして活動する。2011年12月に「Google Chrome “あなたのウェブを、はじめよう。”キャンペーン」のCMソングとしてlivetune名義の新曲「Tell Your World」を制作。YouTubeで公開されたCM映像は1週間で100万再生回数を超え、大きな話題を集める。2012年8月に八王子Pとのコラボシングル「Weekender Girl / fake doll」を、9月に中島愛、Yun*chiをボーカリストに迎えたシングル「Transfer」を発売。2013年3月には初音ミクのボーカロイド楽曲のベストアルバム「Re:Dial」を発表した。同年6月、Fukase(SEKAI NO OWARI)をボーカリストに起用したシングル「Take Your Way」をリリースする。