ナタリー PowerPush - livetune
SEKAI NO OWARIのFukaseを迎えた「Take Your Way」
kzによるユニット・livetuneがニューシングル「Take Your Way」をリリースする。
アニメ「DEVIL SURVIVOR2 the ANIMATION」の主題歌となったこの曲で、livetuneとSEKAI NO OWARIのFukase(Vo)によるタッグが実現。livetuneにとっては初のアニメ主題歌で初の男性ボーカル曲、Fukase(SEKAI NO OWARI)にとっては初のコラボ参加という、お互いにとって挑戦に満ちたナンバーになっている。
今回ナタリーではシングルのリリースを記念してkzにインタビューを実施。ボーカリスト起用の意図から、楽曲の魅力、そして彼自身のクリエイターとしての信念を探った。
取材・文 / 柴那典 インタビュー撮影 / 佐藤類
少年のようなボーカルが欲しいと思っていた
──まず、なぜFukase(SEKAI NO OWARI)さんを起用したのか、そこから教えてもらえれば。
曲の最初の出発点がまず「DEVIL SURVIVOR2 the ANIMATION」というアニメのタイアップのお話だったんですよ。僕はいつもボーカルをどうしようか悩むんですけど、今回はその作品世界をなんとなく知っていたんで、お話をいただいたときに男性ボーカルでいきたいって思ったんです。それが作品にすごくマッチするんじゃないかなって。かといって、むさ苦しいおっさんが活躍するアニメでもないので、いわゆる男性的な男性じゃない。もっと中性的な、少年のようなボーカルが欲しいと思っていたときに、思い浮かんだのがFukase(SEKAI NO OWARI)くんだった。彼の声って少年っぽいんですよね。ティーン感がある。それが主人公たちのキャラクターに近い感じがすると思ってお願いしてみたら、快諾してくれたという。
──まずはアニメの世界観に対してのアプローチとして、少年の声の曲を作ろう、と。
そうですね。
──そこにはどういう理由があったんでしょう?
感覚的なものですかね。僕のアプローチで女性ボーカルだったら、ある種、客観的な感じになっちゃうと思っていて。主人公は男の子ですし、もう少し主観性を帯びたほうがいいかなっていうのがあった。主人公の年代の代弁者的なボーカルのほうが合うと思ったんですよね。
運命共同体みたいな感じはなるべく崩さないように
──SEKAI NO OWARIのメンバーとはいつ頃から知り合いだったんですか?
「Tell Your World」(2012年1月発表)をSEKAI NO OWARIのSaori(Show Produce, Piano)ちゃんが聴いてくれていて、Saori(SEKAI NO OWARI)ちゃんがFukase(SEKAI NO OWARI)くんを洗脳する勢いで家でずっとかけてたらしいんですよ。そのおかげで僕のことは知ってくれていたんです。会ったのはそれから1年くらいしてからですね。最近はお互いのライブとかDJイベントとかでちょくちょく会うようになりましたけど、その頃はまだ全然面識もなかった。だからSaori(SEKAI NO OWARI)ちゃんには大感謝ですよ。彼女がいなかったらたぶん、セカオワとは仲良くなれてなかったと思うんで(笑)。
──kzさんからSEKAI NO OWARIというバンドはどういうふうに見えてたんでしょう? 曲を聴いて、まずFukase(SEKAI NO OWARI)さんのボーカルに「何かある」と感じた?
そうですね。この声で曲を作ってみたいなっていうのはありました。そしたらどうなるかなっていうことも思ってました。
──レコーディングはどういう感じだったんですか?
まず、セカオワでレコーディングしてるいつもの場所があるんで、そこで録ろうっていう話になって。SEKAI NO OWARIというチームを離れたことがないFukase(SEKAI NO OWARI)くんなんで、突然違うスタジオに行ったらいつものテンションになるのが難しくなっちゃうかもしれなかったし。ボーカルのディレクションに関してはSaori(SEKAI NO OWARI)ちゃんにも手伝ってもらいました。僕が言うのとSaori(SEKAI NO OWARI)ちゃんが言うのでは、同じことを言っていても伝わり方が違うと思いますしね。やっぱりSEKAI NO OWARIって、運命共同体みたいな感じがあるじゃないですか。そこらへんはなるべく崩さないようにしたほうがいいのかなって思って。特にレコーディングには関わってないですけど、DJ LOVE(DJ / SEKAI NO OWARI)くんも遊びに来てたりとかしてて、みんなでやってましたね。
何かを作るときはだいたい戦ってます
──曲のテーマについても聞いていきたいんですけれども。この曲の歌詞では「選択する」ということがひとつのキーワードになっている。それはどういうところから?
アニメーションからですね。アニメにはほかにも「絆」とか、いろんなテーマがあるんですけど、僕が軸にしたのは選択の重要性ということ。アニメでもときには選択に失敗してますからね。でもこういうのって、みんな普通に生きてて感じることだと思うんですよ。あっちの高校に行っとけばよかったとか、あっちの会社に入ればよかったとか、あの仕事やっとけばよかったみたいな、いろんな選択肢がある。そこからそれを軸に曲を作ろうと思ったんです。
──実際kzさん自身、振り返ってそういうターニングポイントになる選択肢を経てきた実感がある?
それはありますね。「あれやっとけばよかったな」って思うことなんてたくさんあるし。でも、それも全部含めて今だから。何が間違ってたかなんてわからないですよね。「Re:Dial」でも「傷付きながらでも前に進まなきゃいけない」っていうことを言ってたんですけど、そういうテーマってすごく普遍的だなと思って。だからこそアニメソングっていう枠内ではあるんですけど、ストレートなポップスに仕上げた感がありますね。
──「Take Your Way」もそうだし、「Transfer」も「Re:Dial」もそうなんですけど、livetuneの曲って、エモくて熱いところがよさだと僕は思ってるんです。
うん。
──だから僕としては、kzさんの曲のよさが出るのって「戦ってるとき」だと思っていて。
ははははは(笑)。基本的に戦うの好きですから。何かを作るときはだいたい戦ってますね。それは自分自身かもしれないし、何かよくわからないものかもしれないですけど。闘争心はありますね。
──今言われたように、戦うっていっても決して相手を貶めたり打ち負かしたりするような戦いじゃないわけですよね。そういうタイプの闘争心って、いつぐらいからあったと思います?
最初からじゃないですかね。もともとピアノを弾いて、それでコンクールとかも出てたし。あれはいかにうまく自分が弾くかっていう競争だったわけだし。そもそもクリエイティブって他人を貶めるものじゃないですからね。自分で完結しちゃうんで。
- ニューシングル「Take Your Way」 / 2013年6月5日発売 / TOY'S FACTORY
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / TFCC-89442
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / TFCC-89442
- 通常盤 [CD] 1000円 / TFCC-89443
CD収録曲
- Take Your Way / livetune adding Fukase(from SEKAI NO OWARI)
- Ready for Calming
- Each and All / livetune adding Rin Oikawa(from Q;indivi)
- Take Your Way(Inst)
- Each and All(Inst)
初回限定盤DVD収録内容
- 「Take Your Way」MV
- 「Take Your Way」MV Ver. AUTHENTIC
- 「Take Your Way」MV Ver. CELL FRAME
- 「Take Your Way」MV Ver. BLACK & WHITE
- 「DEVIL SURVIVOR2 the ANIMATION」OP映像
livetune(らいぶちゅーん)
音楽プロデューサーのkzによるユニット。2007年9月、ボーカロイド「初音ミク」を使用して制作したオリジナル楽曲「Packaged」を動画サイトに投稿し一躍注目を浴びる。2008年8月にアルバム「Re:package」でデビューしたのち、さまざまなアーティストの楽曲の作詞、作曲、リミックスなどを手がける人気クリエイターとして活動する。2011年12月に「Google Chrome “あなたのウェブを、はじめよう。”キャンペーン」のCMソングとしてlivetune名義の新曲「Tell Your World」を制作。YouTubeで公開されたCM映像は1週間で100万再生回数を超え、大きな話題を集める。2012年8月に八王子Pとのコラボシングル「Weekender Girl / fake doll」を、9月に中島愛、Yun*chiをボーカリストに迎えたシングル「Transfer」を発売。2013年3月には初音ミクのボーカロイド楽曲のベストアルバム「Re:Dial」を発表した。同年6月、Fukase(SEKAI NO OWARI)をボーカリストに起用したシングル「Take Your Way」をリリースする。