「Tell Your World」後の反動と葛藤

──2012年の始めに「Tell Your World」がリリースされたわけですけれども、あそこで非常に熱量の高い曲を作ったことの反動は、その後にはありましたか？

反動というか、あれはほんとに特別なものだから。もうあのことは考えないようにするのが一番いいなっていう感じでしたね。あれと同じ熱量の曲を作るというのは、例えて言えば国家の曲とか、国連のテーマソングを作るとか、そういう規模の話だと思うんです（笑）。

──ははは（笑）、なるほどね。

僕にとってはGoogleの次に何が来るかって考えたら、たぶん国なんですよ、正直（笑）。そういう規模になってくる気がしてて。だからもうあれは切り離して考えよう、あれに引っ張られる必要はないのかなって。それでも「Redial」を作るときは1カ月ぐらい悩みましたね。ひさしぶりにボーカロイドのソフトに触ったらやっぱり「Tell Your World」を思い出しちゃって。「Weekender Girl」は直接打ち込んでるのが八王子Pだから、ソフトに触ったのも1年ぶりくらいで。そうすると、やっぱり悩んじゃって。ちらちら見えてくるんですよ、ヤツ（=「Tell Your World」）の影が。それで半月悩んで、挙げ句にできたものが変にシリアスになっちゃってて。「これはちょっとどうだろうね」っていう判断もあって先延ばしにして、さらに半月悩んで、ようやく吹っ切れてポップなものがちゃんと作れた。それが「Redial」だったんです。

──今作は「Redial」という表題曲と「Magnetic」という2曲が新曲として収録され、加えてこれまでに作った楽曲がすべて今のサウンドにリファインされたアルバムになっています。アルバムのコンセプトは、いつから考えていたんですか？

コンセプトに関しては、このアルバムを作ろうっていうふうになってから考えたことで。まず、とにかくリファインしたい。最初にその意識があって。で、新曲も「Redial」ってタイトルだけが最初に決まってたんです。そこには過去にアクセスするっていう意味もあるし、あとは最初に言ったようにパーソナルな意味でステージが大きくなってきたので、自分の足元をもう一度照らし直そうっていうのもあって。これまでを振り返りながら、自分がどういうふうにやってきたかを見つめ直そうっていう。「Redial」はそういう曲ですね。

──なるほど。「Magnetic」は？

「Magnetic」は何も考えてないです（笑）。あれは歌詞を読んでわかる通り、ほんとに疲れてて。旅行に行きたいっていう、それだけの感じです。

──過去の曲を作り直したいというのは、クリエイターとしての本能的な部分で？

そうですね。やっぱり5年経ったものをそのまま入れるわけにはいかないっていう。どうしてもそこには抵抗がありました。同じことを「Fly Out」のPVを作ってくれたyakoくんも思ってたらしく、フルバージョンを頼んでただけなのに全編をリファインしてて、「あぁ、考えることはみんな同じなんだな」って（笑）。

海外の視点を気にする必要はない

──いろんなタイミングがきっかけになって、livetuneはこの先海外からの注目もさらに大きくなってきていくと思いますけれど、そこに関してはどういうふうに捉えてますか？

僕自身はあんまり気にすることないんじゃないのかなって思ってます。海外を意識したようなサウンドを作ってしまったら逆にダメになってしまう。どこかの国をターゲットにして、そこにローカライズしなきゃいけないってことじゃなくて、むしろ、海外の人は今の僕らが普通に楽しんでやってることに対して興味を持ってくれてると思うので。例えば今きゃりー（ぱみゅぱみゅ）が海外で人気があるっていうのは、やっぱり純粋にその人たちの国にはない存在だからですよね。アニメーションやゲームを見ててもそう思うんです。スーパーマリオブラザーズも、ポケモンもそう。あれが日本の文化だし。だから、僕らは海外の視点とかを気にする必要は正直ないと思ってて。「またアホなことやってるな」っていうような感じのものを作ってくってことがすごく重要なんじゃないかと思います（笑）。

──なるほどね。そこで常に自分を乗り越える戦いを続けていく、と。

そう。そこだけあればいいのかなって思います。