日本ならではのサウンドで勝負したい

──元々プロ志向だったんですか？

はい、漠然とは考えてました。ただ想像していたアプローチとは違っちゃいましたね。まさか「Packaged」がヒットするとは思ってませんでしたから。

──VOCALOIDとの出会いが人生を変えたのかもしれませんね。

初音ミクが誕生した2007年は、ニューレイブやエレクトロが盛り上がったタイミングなんです。そのルーツってDAFT PUNKですよね。なので、僕らの世代はDAFT PUNKからの影響が大きくて。時代がたまたまエレクトロに寄っていたタイミングだったので、VOCALOIDにも自然と入りやすかったんです。

──そしてPerfumeの大ブレイクで、日本でもエレクトロがメインストリームになっていくという。

ですよね。ここまでエレクトロが盛り上がるとは思っていませんでした。中田ヤスタカさんの存在が大きかったと思いますね。

──その一方で、LADY GAGAのブレイクに代表されるように、アメリカやイギリスのみならず世界中でエレクトロがメジャーなスタイルとして定着したんですよね。アメリカでも初音ミクが盛り上がりつつある状況を考えると、livetuneの楽曲がビルボードを賑わす可能性だってあると思うんですが。

チャートインしてくれたら面白いですけど、livetuneはジャパニーズ感というか、日本発信であることが大切だと思ってるんです。なのでUKやUSで好まれるような方向に音を寄せる必要はないと思っていて。日本ならではのサウンドで勝負したいんですよね。例えば、きゃりーぱみゅぱみゅが今ウケてるのもそういうポイントだと思いますし。

──J-POPならではの独特な世界観や手法は、確かに世界進出の武器になりますよね。

その一方で、僕の別名義であるRE:NDZではダンスミュージックを作っているので、キックの音圧であったり、いろんなポイントで海外アーティストと同じ土台で勝負しなくちゃいけないと思ってます。でも、livetuneのようなポップスとしての音楽は、日本人だぞってテイストを強く出していきたいですね。キラキラ感っていうか、ファンタジスタ歌磨呂さんやmebaeさんと作るアートワークへのこだわりもそうですね。

──グローバルかつローカルな視点を持つことは、インターネット時代の音楽表現のあり方として正しいかもしれませんね。

はい。ちなみにPVはわかむらPにキャラクターを作ってもらってます。今回コラボしているクリエイターの皆さんは、日本発の独特な世界観を持っているので、海外に寄っていない独特なバイブズを発信していきたいと思っています。

3年7カ月ぶりの新作ミニアルバム「Tell Your World EP」

──ところで、ここ数年の状況の変化を受けて、曲の作り方にも変化はありましたか？

作り方は変わってないと思います。でも機材は4年間で進化しましたし、もしかしたら作りやすくなってるのかもしれません。単純に音が良くなりましたよね。エフェクトとかも安価で購入しやすくなりましたし。それから、機材って基本的に海外製なので、円高だとミュージシャンは恩恵が受けやすいんですよ。あと、ソフトウェアも個人で手が届く範囲の価格になってきましたし。

──そして、livetune名義として3年7カ月ぶりという、待望の新作ミニアルバム「Tell Your World EP」のリリースも発表されました。

「Tell Your World」のほかに、早く出してほしいとさんざん言われ続けてきた「Far Away」「Star Story」「Fly Out」などのフルバージョンをまとめて収録します。僕なりに2012年ってこういう感じだよね、と思った気持ちを込めているので、それが伝わるとうれしいです。そしてインターネットに対する愛の歌、インターネット讃歌「Tell Your World」もどうぞよろしくお願いします（笑）。