Little Glee Monster アサヒ&manakaインタビュー|「半妖の夜叉姫」エンディングテーマで表現した、個性を主張しないボーカル表現

Little Glee Monsterにとって18枚目のシングル「透明な世界」がリリースされた。

表題曲「透明な世界」は、テレビアニメ「半妖の夜叉姫」弐の章のエンディングテーマとしてオンエア中の美しいミディアムナンバー。アニメの世界観に寄り添った歌詞と、透き通るような彼女たちのボーカルワークが耳に残る1曲だ。音楽ナタリーではメンバーのアサヒとmanakaに、アニメタイアップに対する思いや楽曲のレコーディング秘話、佳境に突入した全国ホールツアー「Little Glee Monster Live Tour 2020→2021 >BRIGHT NEW WORLD<」について聞いた。また特集の最後には撮り下ろしカットを集めたフォトギャラリーを掲載する。

取材・文 / 川倉由起子撮影 / 梁瀬玉実

高橋留美子先生の作品に音楽で関われて光栄

──ニューシングルの表題曲「透明な世界」がエンディングテーマに採用されたテレビアニメ「半妖の夜叉姫」は、高橋留美子先生の原作マンガ「犬夜叉」の世界観を受け継ぐ新たな物語なんですよね。お二人は「半妖の夜叉姫」については以前からご存知でしたか?

manaka

manaka エンディングテーマを担当することが決まってから「半妖の夜叉姫」の1期をメンバーで観させていただきました。「犬夜叉」はもちろん知っていたし、私は高橋留美子先生の「うる星やつら」や「らんま1/2」のアニメを保育園のときからずっとテレビで観ていて。特にラムちゃん(「うる星やつら」に登場する宇宙人少女のキャラクター)がすごく好きなんですよ(笑)。リトグリの音楽で高橋留美子先生の作品に関わらせていただけるのは、すごく光栄なことだと思いました。

アサヒ 私も「犬夜叉」を小さい頃にテレビで観ていたので、manakaと同じく、高橋留美子先生の作品に携われることがまずうれしかったです。今回は約2年半ぶりのアニメタイアップで、以前、「MIX」というアニメでエンディングテーマ(2019年5月発売のシングル曲「君に届くまで」)を担当したときに今までにないリスナー層の広がりがあったんですよ。だから今回もアニメを通じてリトグリを知ったり、リトグリってこういう曲も歌うんだ……と新鮮に感じたりする方もいらっしゃるのかなとワクワクしています。

manaka メジャーな作品からコアな作品まで、アニメというジャンルは世界中の人に知ってもらうきっかけとしてすごく影響力が強い。アニメのテーマソングを担当させていただくたびに感じますね。

アサヒ アニメのタイアップ曲は、フェスやイベントで披露したときに「あのアニメの曲!」とお客さんに喜んでもらえることが多いんです。そういう意味でも今回すごくありがたい機会をいただいたなと思っています。

抑えるように、控えめに歌うという挑戦

アサヒ

──「透明な世界」のトラックを最初に聴いたときはいかがでしたか?

アサヒ 最初は音も歌詞も仮の状態で。徐々にアニメに寄り添った雰囲気ができあがっていって、最終的には「半妖の夜叉姫」にぴったりな楽曲になったと思います。個人的にはメインキャラクターの日暮とわ、せつな、もろはの思いがすごく詰まってる気がしたので、アニメの情景もいろいろと思い浮かべながら歌いました。

manaka リトグリはメッセージ性の強い応援ソングを歌うことが多いのですが、「透明な世界」はアニメの世界観も大切にしながら作られた1曲。「半妖の夜叉姫」のストーリーに寄り添いつつも、聴く人の受け取り方や捉え方によって見える景色が少しずつ変わってくる歌詞だなと思いました。私が特に印象的だったのは、後半の「響き合い重ねた想い」からのフレーズ。その前までは自分自身を抑えて控えめに歌うような無機質さがあるんですが、このフレーズからは何かが弾けたように急に開けていく。歌い方もそういう広がりを意識しましたし、光が見え始めて、景色がガラッと変わるポイントになっていると思います。

──manakaさんも今話されていましたが、歌をパワフルに響かせる曲が多いリトグリの中で今回のボーカルワークは新鮮でした。

アサヒ いい意味で、誰がどのパートを歌っているかがわかりづらいというか。掛け合いで歌が被さっている部分が多かったり、意外に密度の高い歌割りになったりしていて、そういう雰囲気でナチュラルに進んでいく展開も新しいなと思いました。

manaka ずっと声がせわしなく響いているんですよね。でも全体の無機質なムードによってあまり騒がしく感じない。あと今回は、自分の色を出すというより、いかに強弱なくなめらかに歌えるかというのを突き詰めた気がする。その点はディレクションでも細かく見てもらって、「もう少し控えめに歌える?」とか指示も普段求められる内容とは真逆だった。何度も工夫して調整して、5人の声はこういうテイストにも溶け込むんだなって自分たちの中で発見できたのもよかったです。

左からmanaka、アサヒ。

──でも難しさもあったのでは?

manaka そうですね。自分らしさは前面に出さず、控えめに、なだらかに……凸凹してはいけないので、そこを調整していくのに苦労しました。

アサヒ 私も難しさは感じましたね。今まではアクセントとかで声に色を付けていたところも「透明な世界」では素のまま表現されてる。語尾の長さやニュアンスを意識したり、細かいところまで気を付けて歌うのも新たな挑戦でした。

──10月2日の“弐の章”初回放送のエンディングで「透明な世界」が流れたとき、放送後に「#リトグリ_透明な世界」で感想を募集していました。どんな反響が多かったですか?

アサヒ ファンの方から「いつもならここは誰の声とかすぐわかるけど、今回はちょっと難しい」という声があって。作戦通りだなと思いました(笑)。

manaka 新鮮に感じてくれた人は多かったみたいです。「リトグリって言われなきゃ気付かない」とか、純粋なアニメファンの方から「エンディングを観て(ハッシュタグに)飛んできました!」という声もあって、次々に更新されていくタイムラインを見ているだけで楽しかったです。

アサヒ 今までのリトグリと違う感じだから、ファンの方がどう捉えるか、どう受け取ってくれるのかというのは私たちも気になっていて。ドキドキもありつつ、それがリアルタイムで知れるのはとても面白い体験でしたね。

左からmanaka、アサヒ。

VRの世界に入り込んだ美しいMV

──ミュージックビデオはVRアーティストのせきぐちあいみさんとのタッグで、楽曲の世界観にマッチした透明感たっぷりの仕上がりになっています。VR空間に描かれた3Dアートとメンバーの姿が融合する美しい映像ですね。

アサヒ VRを使ったMVはリトグリでは初で、ほかのアーティストさんのMVを観ても、まだやっている方はそんなに多くないのかなと。どこか違う世界に入り込んだようなMVは私たちも新鮮で面白いなと思いました。

manaka 「こんな形になります」って最初に映像を観せてもらったとき、5人がゲームの中にいるように感じました。非現実の世界の自分たちが、そこに描かれているビジュアルに実際は触れてはいないのに触れているような映像になっていて、これはすごい!と。

──撮影はブルーバックの背景で行われたんですよね。

manaka はい。なので、現場では見えてないけど、「ここにはあとでこういうものが入る」っていうのを毎回確認しながら。例えば、空中に浮いているように見える歌詞の一部に触れるシーンがあって、それを担当するメンバーは繰り返し練習していました。

アサヒ 歌詞が出る位置を何度も微調整してくれたり、ステージの奥行きやセットのいろんな細かい部分までスタッフの皆さんがこだわってくれて。私たちはその中で常に想像しながら歌っていました。

manaka 完成したMVを観たときは、VRの世界とメンバーの馴染み方がとても美しくて感動しました。私たちが初めて観たときのような驚きを皆さんにも感じてもらえたらうれしいです。

アサヒ VRだからこそ実現できたビジュアルがたくさん詰まっているので。皆さんもぜひその世界に入り込んでほしいです。