LITEの15周年イヤーを締めくくるイベント「LITE 15th」が1月14日に東京・LIQUIDROOMで開催される。共演者は、SOIL&"PIMP"SESSIONS、downy、toeと、いずれもLITEが影響を受けてきた上の世代のバンドであり、15年の歴史を感じさせる、メモリアルな1日になることだろう。
音楽ナタリーでのLITEの15周年記念特集、第1弾のメンバーインタビューに続き、第2弾となる今回は、「LITE 15th」の出演者による座談会を実施。LITEの武田信幸、SOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビ、downyの青木ロビン、toeの美濃隆章に、それぞれの関係性やバンドを現在まで続けることができた理由、イベントに向けた意気込みを語り合ってもらった。
取材・文 / 金子厚武 撮影 / 中野修也
LITE、SOIL&"PIMP"SESSIONS、downy、toeの関係性
──「LITE 15th」の共演者は、いずれもLITEより世代が上のバンドになりました。
武田信幸(LITE) 15周年で、僕らがこれまで受けてきた影響を集約させて、ビシッと決めたいって感じですね。
──まずそれぞれの関係性を紐解いていくと、タブゾンビさんは「Cubic」(2016年11月発表のアルバム)の収録曲「D」に参加されていました。
タブゾンビ(SOIL&"PIMP"SESSIONS) もともとはFULLARMORを通じて知り合いました。
武田 フェスで一緒にジャムセッションをやったことがあって、すごく引っ張ってくれるプレイヤーだったんです。そのインパクトがずっと残っていて。で、「D」を作っていたときに、歌の代わりになるような何かが欲しいという話になって、自由に、フリーキーにやってほしいと思ったとき、パッと思い浮かんだのがタブさんだったんです。
タブゾンビ ミュージックビデオの撮影はすごく覚えてます。電気が通ってない、めちゃくちゃ広い倉庫で、深夜だったから待っている間はずっと暗闇で、寒くて、スノーピークのベッドマットにずっと座ってました。レコーディングは……きっとすぐ終わったよね。
武田 2テイクも録ってないくらいですかね。部分部分をちょっと録り直すくらいで。
タブゾンビ その頃、3回しか歌わないっていう、美空ひばりさんのエピソードに憧れてた時期で。でも、いいテイクだったと思います。
──SOIL&"PIMP"SESSIONSからはどんな影響を受けましたか?
武田 LITEは最初、54-71とかああいうタイトな演奏をするスタイルからスタートして、4拍でたまに変拍子が入って、Aメロ、Bメロ、サビみたいな曲展開をずっとやっていたんです。でも、もうちょっと崩していきたいってなったときに、ジャズとかを聴き始めて、日本にもこういうインストのバンドがいるんだと知って。ルールがあるようでないような音楽を日本人もやれるんだと、カッコいいなって思いました。
──では、青木ロビンさんとLITEが知り合ったのはいつですか?
青木ロビン(downy) 金沢のライブに呼んでもらったのが最初かな。それから、わりと飲みに行くようになって。
──2014年に21世紀美術館でツーマンをやっていますよね。
武田 それです。もちろん、2004年の活動休止以前もライブを観に行ってはいましたけどね。初台DOORSで54-71とdownyが一緒だったのを観に行ったときに、たまたまロビンさんと同じような帽子を被っていて、ライブ終わって外に出たら、「あれロビンじゃね?」ってお客さんに間違えられたのをすごく覚えてます(笑)。
──確かに、顔の系統は近いかも(笑)。downyからはどんな影響を受けましたか?
武田 ありとあらゆるものを盗ませてもらってます。曲を作っていると、バンドの中で「これは〇〇っぽいね」みたいな話になることがあるんですけど、その中で「これはdownyっぽいね」みたいな言葉が出るくらい、体の中に浸透してるんです。
──美濃隆章さんは「Phantasia」(2008年5月発表のアルバム)のエンジニアをされていますね。
武田 あのレコーディングがはじめましてでした。でも、それから一緒にライブをやる機会はあんまりなかったですよね。
美濃隆章(toe) 意外にね。ずっと知ってるけど、あんまりなかったから、今回すごい楽しみ。
──なぜ「Phantasia」で美濃さんに依頼したのでしょうか?
武田 美濃さんが録っていたmiaouを聴いて、音がいいなと感じて、いつかお願いしたいと思ってたんです。そう思っていた頃はまだtoeと対バンしたこともなかったし、面識もないから、ハードル高いかなと思ったんですけど、でも思い切ってお願いしました。
美濃 あとmouse on the keysの1st(2007年11月発表のミニアルバム「sezession」)が出て、あれを聴いて、「絶対お願いしたいと思った」って言ってくれたのを覚えてる。
──レコーディングに関しては、どんなことが印象に残っていますか?
美濃 ……うまいなって(笑)。「もう1回やったら?」とか言いながら、口には出さずに「ヤベえ、みんなうまい」と思ってました。
武田 あのとき美濃さんの機材を使わせてもらって、あれが今でも自分の理想の音なんです。ORANGEのAD30でレコーディングして、「こんないい音するアンプがあるんだ」と。あのあと探したんですけど、全然見つからなくて、鳴りが近いアンプを探して、今使っているFenderのBASSMANに行き着いたんです。
──toeからはどんな影響を受けましたか?
武田 downyのときと一緒ですけど、ありとあらゆるものを。そうとしか言えないですよ。日本において、このジャンルを作ってきた人たちですから。LITEは2003年結成で、その前は同じメンバーで違うバンド名で活動してたんですけど、最初は人力トランスみたいな、10分くらいの長い曲を演奏してたんです。でも、toeとかがCDを出して、こういうインストもめっちゃカッコいいことに気付き、自分たちの音数がだんだん減っていったりもして。今のLITEにとって原点みたいなバンドです。
“ShazamしたらLITEだった率”が高い
──今度は逆に、3人から見たLITEの魅力をお伺いしたいです。タブさん、いかがですか?
タブゾンビ うまい(笑)。若い人たちホントみんなうまいから、俺も練習しなきゃなって。ちなみに最近はトランペットの教室に通ってます。
──美濃さんに続いて、やはり「うまい」という言葉が出ましたが、テクニックに関しては、LITEは意識的に磨いてきたのでしょうか?
武田 どうなんですかね……。たぶん、プレイヤー個々はそんなに特別うまいわけではないと思うんです。でもバンドの曲をやたら練習しちゃうんですよ。その曲を完璧にするために、ひたすらクリックを出して、ずっとそれをやり続ける。
美濃 バンドみんなでそれをやるの? 各々でやるの?
武田 みんなでやりますね。クリック出してやらないですか?
美濃 あんまり。たまに家で1人、こっそりやるくらい(笑)。
武田 クリック出して、バンドで練習する癖はついてますね。結成当初からそうだったので。
ロビン うちもクリックで合わせます。ドラムだけ聴くこともありますけど。
武田 最近ライブだとベースもイヤホンでクリックを聴きながら演奏している曲もあります。
美濃 クリックないと急に難しくなる曲とかあるよね。
武田 譜面に起こせないから、体で覚えるしかなくて。だから、運動と一緒で、1年くらい曲をやらないでいると、忘れちゃうんですよね。
──前回の取材で、今年「filmlets」(2006年5月発売のアルバム)の再現ツアーをやったときはそんな感じだったとおっしゃってましたよね。
武田 自分のCDを聴いて、自分のギターをコピーするっていう(笑)。
美濃 それよくやる。
──全員頷いてますね(笑)。では、ロビンさんから見たLITEの魅力は?
ロビン コーヒー屋さんとかでロックな曲が掛かっていて、カッコいいなと思って、Shazamすると、LITEだったりするんですよ。この間も、ジョージ(・ウィリアムズ)のラジオ番組に出たとき、カッコいい曲が流れていて、ShazamしたらやっぱりLITEで。ShazamしたときのLITE率がすごい(笑)。
──どこがツボなんでしょうね?
ロビン 僕らはよりタイトな音楽を目指してるんですよね。崩すのに憧れはあるんですけど、やってみると、自分たちにはあんまりマッチしない。でも曲が流れて、「こういうのいいな」って思うと、LITEの確率が高いんです。
一瞬のフレーズに宿る思い
──美濃さんから見たLITEの魅力はいかがでしょう?
美濃 タイトな演奏の中にグッとくるリフがちょこっと出てくるとか、耳に残るところがあって、そういう部分がすごく好きです。
武田 主旋律だけじゃない、フレーズそのもののキャッチーさとか、そういうところは意識しています。そのメロディセンスって、海外にはあんまりないというか、日本人独特のメロディセンスみたいなものをなんとなく感じてて、そこはtoeからも影響も受けてますね。
美濃 全面的にキャッチーにしようとかはまったくないんですけど、3分の曲だったら、10秒でも5秒でも、「このフレーズいいな」という部分があれば、僕はそれでよくて。それが3分ずっとだと、つまんなくなっちゃう。3分の曲でも、伝えたいのはその10秒、みたいな。
武田 一緒ですね。フレーズが1個あったとして、それを聴かせるためにその前の展開を考えたりするんで。
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歌、メロディの妙
- ライブ情報
LITE 15th -
- 2019年1月14日(月・祝) 東京都 LIQUIDROOM出演者 LITE / SOIL&"PIMP"SESSIONS / downy / toe
- LITE(ライト)
- 武田信幸(G)、楠本構造(G, Syn)、井澤惇(B)、山本晃紀(Dr)によって、2003年に結成されたインストゥルメンタルバンド。2005年にミニアルバム「LITE」を発表し、本作の発売に伴う全国ツアーを開催したことで知名度を高める。2007年には1stフルアルバム「filmlets」がヨーロッパでリリースされたほか、初の海外ツアーも敢行。日本のみならず海外でも注目を集めるようになる。ツインギターのスリリングな掛け合い、聴き手のイマジネーションを刺激するドラマ性の高いサウンドが持ち味。2009年10月に自主レーベルI Want The Moonから発表した「Turns Red EP」ではニューウェーブやエレクトロニカの要素を導入し、新境地を開拓した。2013年に結成10周年を迎え、6月にアルバム「Installation」を発表し、10月に東京・ラフォーレミュージアム六本木にて投げ銭制のアニバーサリーライブ「LITE 10th」を開催した。それ以降、2014年2月のヨーロッパツアーで成功を収めるなど、海外での公演も重ねている。2018年10月と11月に新作「Blizzard」をデジタルシングルおよび7inchアナログでリリース。2019年1月に東京・LIQUIDROOMにて結成15周年イヤーの締めくくりとなるライブイベント「LITE 15th」を開催する。
- SOIL&"PIMP"SESSIONS
(ソイルアンドピンプセッションズ) - 丈青(Piano)、タブゾンビ(Tp)、秋田ゴールドマン(B)、みどりん(Dr)、社長(アジテーター)からなるバンド。2001年に東京のクラブイベントで知り合ったメンバーによって結成される。2004年に1stアルバム「PIMPIN'」でメジャーデビュー。2005年にイギリス・BBC RADIO1主催のアワード「WORLDWIDE AWARDS 2005」で「John Peel Play More Jazz Award」を受賞したほか、「グラストンベリー・フェスティバル」「モントルー・ジャズ・フェスティバル」など海外の大型フェスに出演するなど、ワールドワイドに活動している。2017年にはドラマ「ハロー張りネズミ」の劇伴を手がけ、主題歌「ユメマカセ」ではゲストに野田洋次郎(RADWIMPS)を迎えて話題を集めた。2018年5月に野田洋次郎や三浦大知らが参加したアルバム「DAPPER」をリリース。2019年1月スタートのフジテレビ系ドラマ「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」の劇伴を担当する。
- downy(ダウニー)
- 2000年4月結成。音楽と映像をライブで融合させるスタイルの先駆け的存在とされ、視覚・聴覚に訴えかけるライブを演出。メンバー各々の活動は多岐にわたり、国内外のアーティストから支持される。2004年に活動休止し、2013年に再始動。
- toe(トー)
- Yamazaki Hirokazu(G)、Mino Takaaki(G)、Yamane Satoshi(B)、 Kashikura Takashi(Dr)の4人からなる、インストを中心としたバンド。経験豊富なメンバーが織りなすポストロックサウンドは、日本の音楽シーンにおいて唯一無二の存在感を醸し出している。2002年にEP「songs, ideas we forgot」をリリース。その後もメンバーが個々に活躍しつつ、コンスタントにライブ活動を行っている。2018年8月には約3年ぶりの新作ミニアルバム「Our Latest Number」をリリースした。