ナタリー PowerPush - LITE

誰もいない境地へ 武田&楠本の10周年談義

LITEは“ロックバンド”

──ところで10年間でバンドが危機を迎えたことはありますか?

武田 2008年に1カ月にわたるヨーロッパツアーがあったんです。そのときに「なんかこの音楽性は違うな」「このままじゃ楽しくない」ってくすぶった気持ちを抱えたままライブをやってて。そこからしばらく死んだ魚の目になったというか。バンドの、というより俺の人生の危機がありましたね……。

楠本 まあ、つらかったね、あの時期は。

LITE「For all the innocence」リリース時のアーティスト写真

武田 LITEは枠からはみ出すことがモチベーションだったのに、当時はどうやっても自分たちが作った枠からはみ出せない無限ループに陥って。それで、じゃあ原点に戻ろう、1から考え直そうつって、今じゃなんでそうなったのかわからないけど構造がキーボード弾くことになって(笑)。

楠本 一旦今までのLITEを壊そうってことになったんだよね。結果的に僕がキーボード弾くことになったけど、武田が歌ってみるとか、新メンバーを入れてみようとか、いろんな試行錯誤を経た上で今の形に落ち着いた。

武田 うん。キーボードを入れるっていうのも「自分らに必要なものはなんだろう?」っていう選択の結果でしたね。

楠本 でも「もうこれしかない。100パーセントこれだよ!」っていう自信はなかった。完全に手探り状態で、とりあえずこれで今までとはまったく違うだろう、みたいな。まあモチベーションは上がったよね。

──新しい要素は、ギターから距離があればあるほどよかった?

楠本 かもしれないですね。

武田 4人でやれる範囲で、しかも一番遠いところを目指す感じで。音楽性での転機って言えば、1年ぐらいの空白の鬱状態を経たあとに「Turns Red EP」を出したときが「LITE第2部」の始まりかな。まあ全作が転機とも言えるんですけどね。毎回、「これで音楽シーン変わるだろ」って思って全力で作って作品を出してます、はい(笑)。

──LITEの場合は、自分たちが納得するかどうかってところにモチベーションが集約されてると。

武田 そうなんですよね。ワガママとかではなくて、ずっと「自分たちがよければいい」っていう、そういうスタンスなんですよ。自分たちの中で一定のラインを超えていれば、完成度とかは関係ない。

──最近インストバンドも市民権を得てますが、これまでの話を聞いているとLITEにとってはジャンルが定着してきたことと、自分たちの満足感は関係ない気がします。

LITE「past, present, future」リリース時のアーティスト写真

楠本 うん。インストバンドっていうくくりで自分たちを見てないというか。“ロックバンド”だと思ってますね。常にとんがってるというか、先に行きたいし、前衛的でありたい。歌も入れたくなったら、入れたらいいと思ってるし、違う楽器も入れたくなったら入れたらいいと思ってるし。柔軟な発想でやってますね。まあ、ちょっと前はいわゆるポストロック、マスロック、インストって言葉にアレルギーじゃないけど、言われるとイヤな時期もありましたけど。どんなバンドでもイヤだと思うんですよ、「何々系のバンドだよね」って言われるのは。でも最近はあまり気にしなくなったかも。

──それはLITEが「FUJI ROCK FESTIVAL」「TAICOCLUB」のようなフェスにも出る一方で、「COUNTDOWN JAPAN」からも声がかかるような、ほかのバンドではなかなか手に入れることのできないスタンスを手に入れたからでは?

武田 そこは確かに自負はしてますね。振り幅はあると思う。

投げ銭は「お客さんありがとう!」の気持ち

──さて、もうすぐ開催される結成10周年記念ライブですが、投げ銭制にした理由は?

武田 まあ「お客さんありがとう!」みたいな(笑)。

楠本 いろいろ考えたんですよ。1000円とか500円とかチケット代を安くしようかって話も出たんですけど、1000円でも来ない人は来ないから。投げ銭制ならとりあえず幾らでもいいわけだから来やすいかなと。若い子とか、今までLITEを観たことのない人のために敷居を下げたくて。それこそ誰でもウエルカムな感じにしたかったんですね。

──それとラフォーレミュージアムという場所が意外でした。

武田 2年前にTortoise(※アメリカ・シカゴ出身のポストロックバンド)を観に行って、すごくいいところだなって印象を持って。会場自体がだだっ広い空間なんで、どこにステージ組んでもいいし、面白いことやれそうだなあっていうのが大きかったですね。

──選曲は“10年”を意識したものに?

楠本 ま、各アルバムから幅広くやっていこうかなって考え中です。

──結成から10年っていう歳月に対する思いはありますか?

楠本 うーん。まあ、言われれば10年経ったかなと思いますけど。

武田 そんなに大げさに言うことじゃないと思うんです。「バンド続けてるんだ」って言えるような1つのくくりの年数っていうだけで。

──ではこれからの10年も行けそうですか?

武田 行きますね。

楠本 やりたいこともまだまだあるし、全然自分たちの目標に到達できてないし。

武田 10年後にまた投げ銭ライブやってもいいかもね(笑)。

LITE「Installation」リリース時のアーティスト写真
LITE ワンマンライブ「LITE 10TH」
2013年10月5日(土)
東京都 ラフォーレミュージアム六本木
OPEN 17:00 / START 18:00
料金:投げ銭制(ドリンク代別)
ライブ音源USB付入場整理券(2000円)は下記プレイガイドにて発売
チケットぴあ(Pコード:210-152)
ローソンチケット(Lコード:73105)
イープラス
LITE ワンマンライブ
2013年10月18日(金)
北海道 札幌BESSIE HALL
OPEN 18:30 / START 19:00
前売り券:3000円 / 当日券:未定
※学生割引あり(18歳以下の方は、当日受付で学生証を提示で1500円キャッシュバック)
チケットぴあ(Pコード:210-152)
ローソンチケット(Lコード:73105)
イープラス
アルバム「Installation」/ 2013年6月5日発売 / 2300円 / I Want The Moon / IWTM-1005
[CD] / IWTM-1005
収録曲
  1. Starry Morning
  2. Echolocation
  3. Hunger
  4. Alter Ego
  5. Between Us
  6. Starry Night
  7. Bond
  8. Fog Up
  9. Subaru
  10. Nomad
LITE(らいと)

武田信幸(G)、楠本構造(G, Syn)、井澤惇(B)、山本晃紀(Dr)によって、2003年に結成されたインストゥルメンタルバンド。2005年にミニアルバム「LITE」を発表し、本作の発売に伴う全国ツアーを開催したことで知名度を高めていく。2007年には1stフルアルバム「filmlets」がヨーロッパでリリースされたほか、初の海外ツアーも敢行。日本のみならず海外でも注目を集めるようになる。ツインギターのスリリングな掛け合い、聴き手のイマジネーションを刺激するドラマ性の高いサウンドが持ち味。2009年10月に自主レーベルI Want The Moonから発表した「Turns Red EP」ではニューウェーブやエレクトロニカの要素を導入し、新境地を開拓した。2013年に結成10周年を迎え、6月にアルバム「Installation」を発表。10月5日に東京・ラフォーレミュージアム六本木にて投げ銭制のアニバーサリーライブ「LITE 10th」を行う。