音楽ナタリー Power Push - LiSA
5年後の私へ 1人ぼっちのあなたへ
すべての筋道のマックスを見せる新しい名刺
──「LUCKY Hi FiVE!」は新曲7曲を収めたミニアルバムということで、LiSAさん自身もTwitterでおっしゃってましたけど、全然ミニじゃないなと(笑)。既発のシングル曲などがあといくつかあったらフルアルバムですよね。
ホントですよ(笑)。ちょっと油断してましたね。「ミニアルバムだから」とか思ってたら、けっこうな制作時間で。
──シングルならタイアップ先のイメージやテーマがあったり、フルアルバムならもう少し全体を通したコンセプトを考えるかもしれない。でもこのミニアルバムは、これもご本人がTwitterでおっしゃってましたけど「全曲シングルみたいな」作品だなという印象です。
なぜミニアルバムなのか、ミニアルバムってなんだ? と考えると、フルアルバムの場合は、さっきおっしゃったように既発のシングルが入るのが前提なんですよね。シングルありきで穴埋めをするように、ほかにどんな曲を入れたら世界観が統一できるだろうと考えながら作り込んでいくんです。
──なるほど。何作かのシングルを骨組に、新曲で肉付けすることでその期間内の自分を総括するみたいな。
はい。でもシングルを入れないミニアルバムなら、まっさらな状態から今の自分が表現できる。「Letters to U」は「これが私です」と言えるものを自分で書かなくちゃ、と思って作った作品でしたが、今回はあれから5年経った今の自分が作れるもの、というのが根本のテーマで。私はこの5年間でポップとかロックとかいろんな道筋を立ててきましたけど、そのすべての筋道のマックスを見せることで「デビューから5年経った今のLiSAはこういう人です」という新しい名刺を作ったような感じですね。「Letters to U」はまさに名刺代わりの作品で、今回は「ちょっとデザインを新しくしてみました」みたいな。
──音楽的なバリエーションは、ポップなものから思い切りハードなラウドロックまでさまざまですけど、全体を通して過去のどの作品よりもキャッチーな楽曲ぞろいだなという印象を受けました。
そうですね。なんでだろう。やっぱり「全曲シングルみたいな」作品にしたかったし、できちゃったからだと思います。
──「Letters to U」と「LUCKY Hi FiVE!」は、“全曲本人作詞の7曲入りミニアルバム”という共通のフォーマットだからこそ、その間にある5年という時間の流れと変化をより感じることができる構造になっているように思います。
初めから7曲にしようと思っていたわけじゃなくて、今の自分が好きなものを詰め込もうと思って作っているうちに、なんとなく同じ割合で、同じようなテンポ感で聴けるものになったんですよね。そういう意味でも好きなことって変わってないのかなあって。「Letters to U」は今聴くと荒削りですけど、それはそれで荒削りないい作品だなと思うんです。あのときの私にしか作れなかった作品だし、今作ろうとしても作れない。いろんなことを知っちゃったぶん、いろいろ考えちゃうから。逆に「LUCKY Hi FiVE!」も当時の私には絶対作れないし、あの頃同じようなことをやったとしても、もっと薄かったと思います。
言いたいことは全部「Hi FiVE!」に詰まっている
──ではここから1曲ずつ、詳しく聞かせてください。まずは「ラブリーデイ」から。全体にキャッチーな作品の中でも飛び抜けてポップでキャッチーですよね。
春ですし、始まりの季節ですし。「Believe in myself」で私が「愛せたらいい」と歌っていた「今」を私は愛せているし、未来も含めた全部が愛おしい。「ラブリーデイ」ではそれをタイトルから丸ごと伝えたいと思ったんです。ポップなものを躊躇なくかわいく歌えるようになったのは自分にとって大きな変化で。そこを広げてくれたのは「BRiGHT FLiGHT」(2014年9月発売のシングル)だったので、同じ野間(康介 / agehasprings)さんが作ってくれた「ラブリーデイ」はその延長線上にある曲かなと思います。
──全曲自身の作詞ながら、「ラブリーデイ」を含む3曲が共作詞になっています。これも「Letters to U」の頃とは違って、伝えたいことが共有できる仲間が増えたという変化ですよね。
はい。
──タイトルトラックと言える2曲目の「Hi FiVE!」は、リード曲としてミュージックビデオも制作されました。この曲には作曲と共作詞で、「Letters to U」からの付き合いである田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)さんが参加しています。
今、私が言いたいことは全部この曲に詰まっていると思います。“ハイファイブ”という言葉にはハイタッチという意味があるんですけど、ハイタッチできる仲間が増えたからこそ歌える、1人じゃ絶対に歌えなかった曲なんです。なんか今、未来がすごく楽しみなんですよね。それはさっきも言ったように、10年20年と続けてきた先輩方が一緒に音楽で遊んでいる姿を見ていると、私にもこういう未来があるかもしれないって。そう思えるのは、私のところに遊びに来てくれるみんながいるからで。そのまんまの気持ちを書いた曲です。
──田淵さんはこの作品に参加するとなると、やはり5年分の変化と成長を見守ってきた人なりの気負いがあったんじゃないかなと想像するんですが、LiSAさんから見てどうでしたか?
田淵先輩はすごくひねくれた人なので、どストレートに「LiSAちゃんはこうだよね」とは言ってこないんです。レコーディング中はずっと「パーン!と勢いある感じで」って言ってました(笑)。駆け抜けている感じがあればいいって。歌詞は私が先に書きたいことをバーッと書いて、先輩が言い回しやワードチョイスをもう一段階深く考えてくれるんです。この曲では「かき回せ」とか「巻き込んでハリケーン」とか勢いのある言葉を選んでくれて。
──LiSAさんが紡いだ言葉に、効果的にエフェクトをかけるみたいな。
そうそうそう! 先輩はシャイだから直接どういうことって説明はしないし、その場では「もっとドーンと」としか言わないんですけど(笑)、たぶん今のLiSAという人にそういう言葉を歌わせたい、歌ってほしいんだと思うんです。
ダークサイドがあるからこそポップが輝く
──非常に明快な、LiSAさんの今の気分が伝わる2曲に続いて出てくる「Psychedelic Drive」は、また別方向に突き抜けた曲ですね。ライブで観客がもみくちゃになっている様子がありありと絵に浮かぶ感じで。
「音楽で遊ぶ」を象徴する曲ができたなと思います。歌詞を書くのも楽しかったし、歌を歌うのも、曲を作っていく過程もすごく楽しかったです。
──堀江晶太さんによるアレンジもかなり遊びがあるし、細部まで聴き応えがありますね。
「夜道を爆走する感じで。ワイルドスピードだよ晶太くん!」って言いながら(笑)、どんどん遊んでもらいました。
──キャッチーなナンバーが並ぶ中で、次の「She」は極めてヘビーな楽曲で。
PABLOさんにお願いするからには、それはもうとことんヘビーな曲を(笑)。こういうダークサイドも私が5年間やってきた1つの側面で、そこも出したかったんです。今それをやるならばPABLOさんにお願いするしかない!って。
──PABLOさんについては前回のインタビュー(参照:LiSA「ID」インタビュー)でも話してもらいました。
PABLOさんにいただいた曲で何を歌おうと思ったときに、やっぱり私は毒の部分を捨てたくないなと思ったし、綺麗事じゃなく「ダークサイドがあるからこそポップが輝く」と思うんです。嫌いなことは嫌いと言えばいい。たくさん傷付いて傷付けて、そこから学ぶこともたくさんあるし。そんな気持ちをあからさまに、思い切り書きました。
──中盤でものすごくヘビーな曲が来たかと思えば、次の「halo-halo」では一転して……。
うふふふふ(笑)。この曲は、小南(泰葉)さんが私にくれたんです。このミニアルバムのために曲をお願いしたわけじゃなくて、「この服、合うと思うから着てみない?」みたいな。私の印象ですけど、小南さんはどポップな人ではなくて、ポップな曲にもひねりがあるというか、ちょっとの毒や、傷付いた心が見え隠れしていて。初期の曲でも「KiSS me PARADOX」(2012年8月発売のシングル「crossing field」カップリング曲)みたいなかわいい曲がありましたけど、もうちょっと心のいろんなところがはがれて、いたずらな感じ、毒のある感じが混ざっているのが今の私だなって思います。
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- ミニアルバム「LUCKY Hi FiVE!」/ 2016年4月20日発売 / アニプレックス
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray+DVD] / 3780円 / SVWC-70141~3
- 通常盤 [CD] / 2700円 / SVWC-70144
- 完全生産限定アナログ盤/ 2016年5月11日発売 / [12inch LP] 3024円 / SVWJ-70141
CD収録曲
- ラブリーデイ
[作詞:LiSA、古屋真 / 作曲:野間康介(agehasprings) / 編曲:堀江晶太] - Hi FiVE!
[作詞:LiSA、田淵智也 / 作曲:田淵智也 / 編曲:akkin] - Psychedelic Drive
[作詞:LiSA / 作曲:横山直弘(from 感覚ピエロ) / 編曲:堀江晶太] - She
[作詞:LiSA / 作・編曲:PABLO a.k.a. WTF!?] - halo-halo
[作詞:LiSA / 作曲:小南泰葉 / 編曲:江口亮]
※NHKワールドTV「J-MELO」2016年4月~エンディングテーマ - Get free
[作詞:LiSA、古屋真 / 作曲:Ryota Kawamura、Rebecca Hollcraft / 編曲:akkin、RIO] - 終わらない冒険
[作詞:LiSA / 作曲:高橋浩一郎 / 編曲:akkin]
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容(共通)
- Hi FiVE! -MUSIC CLIP-
- Believe in myself, Believe in the dream
- LiVE is Smile Always~Hi! FiVE~
- 2016年4月20日(水)東京都 NHKホール
- 2016年4月21日(木)東京都 NHKホール
- 2016年5月1日(日)神奈川県 神奈川県民ホール
- 2016年5月7日(土)大阪府 オリックス劇場
- 2016年5月8日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2016年6月4日(土)福岡県 福岡市民会館
- 2016年6月10日(金)東京都 Zepp Tokyo
- 2016年6月11日(土)東京都 Zepp Tokyo
- 2016年6月19日(日)石川県 金沢市文化ホール
- 2016年6月25日(土)宮城県 仙台市民会館
- 2016年7月9日(土)広島県 上野学園ホール
- 2016年7月10日(日)香川県 三木町文化交流プラザ
- 2016年7月16日(土)新潟県 新潟テルサ
- 2016年7月23日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2016年7月24日(日)大阪府 Zepp Namba
- 2016年7月30日(土)北海道 Zepp Sapporo
LiSA(リサ)
6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。2014年末には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に、2015年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」や「氣志團万博」にも出演するなどさらに活動の幅を広げている。デビュー5周年となる2016年4月にはミニアルバム「LUCKY Hi FiVE!」をリリース。発売日同日より全16公演のライブツアー「LiVE is Smile Always~Hi! FiVE~」をスタートさせる。