音楽ナタリー Power Push - LiSA

5年後の私へ 1人ぼっちのあなたへ

2011年4月20日にミニアルバム「Letters to U」でデビューを果たしたLiSA。そこからちょうど5年後となる2016年4月20日、LiSAは2枚目のミニアルバム「LUCKY Hi FiVE!」をリリースした。9枚のシングルと3枚のフルアルバム制作、2年連続の東京・日本武道館ワンマン、ロックフェスへの出演……と濃密な5年間を駆け抜けて彼女は、5周年を迎えた今、何を思うのか。音楽ナタリー8度目の登場となる今回のインタビューでは、現在の心境と新作に込めた思いを語ってもらった。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 西槇太一

デビュー作「Letters to U」から5年

──LiSAさんはデビューのときから完成されていた印象があったんですけど、新作「LUCKY Hi FiVE!」を聴いた直後に、先日アナログ再発されたデビュー作「Letters to U」を改めて通して聴いてみたら「こんなだっけ!?」と少し驚きました。若さというか青さというか……。

はい、はい(笑)。

──ドキュメンタリー映像「Believe in myself, Believe in the dream」(「LUCKY Hi FiVE!」初回限定盤に同梱のDVDとBlu-rayに収録)で、LiSAさんは「私は『Believe in myself』(「Letters to U」のオープニングナンバー)から何も変わってない」「私が歌で伝えたいことは、昔も今も変わらない」とおっしゃっていて。確かに表現したいことはブレてないんだと思うんですけど、同じことを歌っても声が持つ説得力が違う。ご自身でもそれは感じますか?

LiSA

そうですね。「Believe in myself」を自分で作詞作曲したのは、私がやりたいことを表現してくれるのが私以外いなかったからなんです。自分で表現しなくちゃいけなかった。「私がやりたいのはこれです」と最初にちゃんと提示しないと、「あれとこれとこれが好きなんです」と言っても絶対に伝わらないと思ったから。そこからいろんな方々に出会って、いろんな音楽を知ることで、今は「私こんな音楽が好きだな」「この人と一緒にやりたいな」という道筋が明確に立てられるようになった。自分がやりたい表現を自分だけで考えなくても、言い方は悪いですけど、指示できるようになったというか。

──なるほど。

「こんな音楽ならこの人に」というオーダーができるようになったんですね。洋服を作るとき、これだけたくさんの種類の布があるという知識を持って「だったらこの布が合う」「これだと透け感が出るからこの素材を合わせると映える」と考えるのに似ていて。この5年でいろんなアーティストと出会って、その人たちとならどういう音楽が作れるという経験値を上げたうえで、より的確にオーダーできる力が付いたということだと思います。

──その5年は、体感として長かったですか? 短かったですか?

うーん、5年ってこんなもんだろうなと思います(笑)。内容はすごく濃かったから短いと言えば短いし、長かったなあと思って振り返ると長かったし。10年20年と続けているアーティストさんも、きっとこんな5年間を経て続けてらっしゃるんだろうなと思うと、私なんてまだまだね!って。5年間でこんなにいろいろあるんだったら、10年ならもっともっといろんなことがあって……そりゃあ皆さん素晴らしい音楽を作りますよ(笑)。先輩に対する尊敬の気持ちが大きくなりましたね。

──自分が5周年という節目を経験したことで、過去に節目を迎えてきたアーティストの気持ちが実感できて、より尊敬が深まるというか。

そうそう、そうです。それぞれに深くて濃い時間を過ごして、今があるんだろうなって。

重たい女だったなあって

──前述のドキュメンタリーは海外でのライブツアーの舞台裏を収めたものですが、5年前とは立ってるステージの大きさも観客の数も違う、言葉の伝わらない海外でもLiSAさんの音楽を求めている人がいるという規模感の違いを感じてもなお、実感のこもった言葉として「昔も今も変わらない」とおっしゃってましたよね。

LiSA

自分自身は何も変わってないですね。もちろん環境は大きく変わりましたけど、私自身のスタンスとして、誰かの何かになりたいという思いは変わってないし、ライブでみんなと一緒に楽しみたい、遊びたいという気持ちは昔も今も変わらないなあって思います。

──では、自分で「ここは変わったな」と思うところは?

うーん……許せるようになったこと。それは自分自身を。うまくいかないときも前を向かなきゃ、と思ってたんですけど、今はダメな自分もちゃんと許せるようになってきた。たぶん私、自分にとても厳しい人だったと思うんですね。それは、手にした幸せをなくすのが怖かったから。現状が少しでもこぼれてしまうのが怖くて。「私こんなに好きなの、ねえ好きなんだよ? 行かないで!」みたいな。重たい女だったなあって(笑)。

──ああ、わかりますというのも失礼かもしれないですけど(笑)、その例えはすごくわかりやすいです。

でも今はちょっと秘められるようになりました。そしてそれを、放っておいてあげるというか、「そうなったらなったでまた出会えるかもしれない」と思うようになったのかな。ずっと失うことが怖かったけど「失ったら失ったで、また帰ってきたくなるような場所を自分が作ればいいんでしょ?」って。

──それってきっと、自信が付いたってことですよね。成功したことも失敗したことも含めて。失敗も乗り越えたからこその自信が経験値に還元されたのか、ここ最近は非常に安定しているように見えます。

うんうん、そうですね。

ミニアルバム「LUCKY Hi FiVE!」/ 2016年4月20日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+Blu-ray+DVD] / 3780円 / SVWC-70141~3
通常盤 [CD] / 2700円 / SVWC-70144
完全生産限定アナログ盤/ 2016年5月11日発売 / [12inch LP] 3024円 / SVWJ-70141
CD収録曲
  1. ラブリーデイ
    [作詞:LiSA、古屋真 / 作曲:野間康介(agehasprings) / 編曲:堀江晶太]
  2. Hi FiVE!
    [作詞:LiSA、田淵智也 / 作曲:田淵智也 / 編曲:akkin]
  3. Psychedelic Drive
    [作詞:LiSA / 作曲:横山直弘(from 感覚ピエロ) / 編曲:堀江晶太]
  4. She
    [作詞:LiSA / 作・編曲:PABLO a.k.a. WTF!?]
  5. halo-halo
    [作詞:LiSA / 作曲:小南泰葉 / 編曲:江口亮]
    ※NHKワールドTV「J-MELO」2016年4月~エンディングテーマ
  6. Get free
    [作詞:LiSA、古屋真 / 作曲:Ryota Kawamura、Rebecca Hollcraft / 編曲:akkin、RIO]
  7. 終わらない冒険
    [作詞:LiSA / 作曲:高橋浩一郎 / 編曲:akkin]
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容(共通)
  1. Hi FiVE! -MUSIC CLIP-
  2. Believe in myself, Believe in the dream
LiVE is Smile Always~Hi! FiVE~
2016年4月20日(水)東京都 NHKホール
2016年4月21日(木)東京都 NHKホール
2016年5月1日(日)神奈川県 神奈川県民ホール
2016年5月7日(土)大阪府 オリックス劇場
2016年5月8日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
2016年6月4日(土)福岡県 福岡市民会館
2016年6月10日(金)東京都 Zepp Tokyo
2016年6月11日(土)東京都 Zepp Tokyo
2016年6月19日(日)石川県 金沢市文化ホール
2016年6月25日(土)宮城県 仙台市民会館
2016年7月9日(土)広島県 上野学園ホール
2016年7月10日(日)香川県 三木町文化交流プラザ
2016年7月16日(土)新潟県 新潟テルサ
2016年7月23日(土)愛知県 Zepp Nagoya
2016年7月24日(日)大阪府 Zepp Namba
2016年7月30日(土)北海道 Zepp Sapporo
LiSA(リサ)
LiSA

6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。2014年末には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に、2015年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」や「氣志團万博」にも出演するなどさらに活動の幅を広げている。デビュー5周年となる2016年4月にはミニアルバム「LUCKY Hi FiVE!」をリリース。発売日同日より全16公演のライブツアー「LiVE is Smile Always~Hi! FiVE~」をスタートさせる。