音楽ナタリー Power Push - LiSA

“BLACK”な楽曲群で魅せた作詞家としての本性と才能

“PiNK”な心持ちから生まれた“BLACK”なモチーフ

──今言っていた「Empty MERMAiD」のヒロイン像って、満たされていると思いつつも「もっと愛されたい」と願うLiSAさんの姿でもあります?

ええ。で、最近「この感情って別に隠す必要ないな」と思っていて。周りから「お前満たされてるじゃん」って言われたとしても、自分が実感できてないなら「もっと!」って言ってもいいし、逆にマーメイドのように「いや、それ不幸でしょ」と思われていたとしても、それに幸せを感じるなら貫けばいい。そういうことを歌いたかったんです。

──幸せと不幸せの境界線はあいまいなんだから、周囲の目や世間の価値観みたいなものに尻込みすることなく、自分の思う幸せを追い求めるべきだ、と。

LiSA

これまではそういうことって深く考えてなかったんですけどね。「私とLiSAッ子(ファン)のみんなが楽しければいい」「周りの理解なんていらないよ、勝手に楽しむから」って思っていましたし。でも今年に入ってからかな……。「氣志團万博」や「ROCK IN JAPAN」に呼んでいただいたり、私が軸足を置いているシーンの外の人たちが私のことを気にしてくれるようになったとき「認めてもらうのってうれしいんだな」って改めて気付かされて。

──なら今のLiSAさんは幸せな気もします。

でもそのときに「あっ、私は本当に多くの人にライブを観てもらいたくて、曲を聴いてもらいたいんだな」っていう気持ちにも改めて気付かされたんです。

──なるほど。ネガティブな感情を吐露するためにこの詞を書いたものだとばかり思ってたんですけど……。

ポジティブだから書けたのかもしれないですね。以前なら「お行儀がよくないと思われるかも」とか「恥ずかしい」と思って黙っていたはずの「私はまだ満たされてない」という思いも今なら口にしていい……いや口にしたいんです。「幸せの形は人それぞれなんだし、自分が望む幸せを求めていいんだよ」って。そう歌ってみたらもっと面白いことが始まるんじゃないか、と思っていますから。あとここ最近「シルシ」「Rally Go Round」と“PiNK”なシングルが続いたから、そろそろ“BLACK”なシングルがあってもいいかな、って。

──あっ、LiSA楽曲のカタログのバランスも考えた?

いや、単なるワガママですね。私もそうなんですけど、LiSAッ子も、最近甘いものをいっぱい食べてたから、そろそろしょっぱいものが食べたいかなって(笑)。

“独り占め”したら、私、超カッコいいじゃないですか!

──この曲の作曲はTHE MUSMUSのギタリスト・YOOKEYさんです。なぜ共作することに?

今回のシングルはノンタイアップということもあっていつも以上に自由度を高くしてもいいのかな? と思って。それは去年の秋に「L.Miranic」っていう曲をSiMのMAHさんに書いていただいたのと同じ理由なんですけど、もともと私、バンドで活動していた頃、UPLIFT SPICE名義だったTHE MUSMUSさんと対バンしていたことがあって。当時からカッコいいバンドだなって思っていたから、そのソングライターのYOOKEYさんと一緒にやらせてもらうことにしました。

──いかがでした? YOOKEY楽曲は。

そうだなあ。THE MUSMUSのCHIOさんってすごくカッコいいボーカリストなんですよ。

──しかもLiSAさんと同じ女性です。

デモが届いたときの悩みの種はそこでした(笑)。YOOKEYさんがCHIOさんのために書くときと同じ熱量で曲を書いてくださったから「これはCHIOさんがライバルだな」って。曲に立ち向かうのにちょっと勇気が要りましたね。異性がライバルだったらキーや声質が違うから、いろいろごまかす方法もあるんですけど(笑)、同性である以上、否が応にも比べられるし、そんな中でいかにLiSAらしさを発揮するか、CHIOさんが歌うのとは違うオリジナルな曲を作り上げるかっていうことは考えました。

──それはボーカリゼーションにおいて?

LiSA

いや、もっと全般的な意味で。だから作詞をしたわけですし。私が私の言葉を書いて、私の声で歌えばTHE MUSMUSさんとは絶対に違うんだけど、でも同じようにカッコよくて面白いものになると思ったので。

──実際そうなりましたよね。というのもLiSAさんってメッセージ性以上に言葉の響きを追求した詞を書くことがありますよね?

あっ、バレてます?(笑)

──はい(笑)。「私がこのキーでこの母音を歌うとよく響く」とか「このキーの長音を私の声で歌うと気持ちがいい」ということを知っているし、その特長を強調した詞を書くことがあるよな、って。

そうそうそう(笑)。

──「Empty MERMAiD」のサビ頭の「渦巻いてくイノセント はみ出した境界線」なんかも歌詞自体、抽象性が高い上に……。

(巻き舌で)「うずまーいてくいのーせんと はみだーしたきょーかいせん」(笑)。

──字切りと音引きの位置が独特だから、言葉の意味よりも音の気持ちよさにまず耳を奪われる。だからこの曲では特に声の響きの面白さを優先させたのかな?と思ってるんです。

ホントにそうですね。というのも私はライブをやるパフォーマーでもあるので。だからキーと声の関係にも気を配りたいし、あと口にしたい言葉、歌いたい言葉を率先して入れることもありますし。例えば2コーラス目の「そこら中キミのマークで 独り占めして」の「独り占め」っていうフレーズのところって楽器隊がブレイクするんです。

──そうですね。

楽器が鳴り止んで、ライブのPAを私の声が独り占めする瞬間に、本当に「独り占め」って歌ってたら、私、超カッコいいじゃないですか!(笑)

ニューシングル「Empty MERMAiD」2015年9月30日発売 / アニプレックス
完全数量生産限定盤 [CD2枚組+フォトブック] 3024円 / SVWC-70104~6 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVWC-70102~3 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 1296円 / SVWC-70107 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Empty MERMAiD
    [作詞:LiSA / 作曲:YOOKEY(THE MUSMUS) / 編曲:akkin]
  2. リスキー
    [作詞:LiSA / 作曲:小南泰葉 / 編曲:江口亮]
  3. 虚無
    [作詞:LiSA / 作曲:カヨコ / 編曲:堀江晶太]
完全数量生産限定盤付属CD収録曲
  1. rapid life シンドローム
  2. L.Miranic
  3. オレンジサイダー
  4. 君にピエロ
  5. ANTIHERO
  6. Rally Go Round
  7. Bad Sweet Trap
  8. Rising Hope
  9. エレクトリリカル
  10. Mr.Launcher
初回限定盤付属DVD収録内容
  • 「Empty MERMAiD」ミュージッククリップ
LiSA(リサ)

LiSA

6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。そして初の東京・日本武道館公演を開催した2014年にはシングル「Rising Hope」はオリコン週間シングルランキングで4位を、さらに12月にはアニメ「ソードアート・オンライン II」《マザーズ・ロザリオ》編のエンディングテーマ「シルシ」ではシングルランキングとしては自己最高となる3位をマーク。また同年末には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に、2015年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」や「氣志團万博」にも出演するなどさらに活動の幅を広げている。そして9月、THE MUSMUS(ex. UPLIFT SPICE)のYOOKEY(G)が作曲する表題曲を含むシングル「Empty MERMAiD」を発表した。