音楽ナタリー Power Push - LiSA
“BLACK”な楽曲群で魅せた作詞家としての本性と才能
LiSAのニューシングル「Empty MERMAiD」がリリースされた。
LiSA9枚目となるシングル「Empty MERMAiD」はUPLIFT SPICEから改名間もないTHE MUSMUSのYOOKEYや、小南泰葉、la la larksの江口亮ら気鋭のクリエイター陣が作家として名前を連ねる1枚。収録曲ではいずれもヘビーでダーティなロックサウンドに乗せて心に潜むネガティブな感情を歌う“BLACK”なLiSAの姿がフィーチャーされている。
今夏ロックフェスに多数出演するなど、主戦場・アニメソングシーン以外からも熱い注目を集め、また愛される彼女が、今“BLACK”な思いを全開にする理由とは?
取材・文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類
私には「シルシ」があるから大丈夫
──3月のアルバム「Launcher」リリース以降(参照:LiSA「Launcher」インタビュー)のLiSAさんって本当にノってる印象があるんです。
ホントですか! ありがとうございます。
──体調不良でツアー日程を一部延期するアクシデントもあったけど、復帰公演(参照:LiSA、“折り返し地点のセミファイナル”で完全復活アピール)は本当に素晴らしかったし、「Animelo Summer Live」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「氣志團万博」でもすごく評価を集めていました。
いやあ、「アニサマ」はめちゃめちゃプレッシャーでしたよ。
──初日のトリの上に、順番的には「ラブライブ!」由来のユニットμ'sの次でしたもんね。ただLiSAさんは、一昨年の「アニサマ」で土屋アンナさんを迎え撃ったときのように(参照:LiSA「LANDSPACE」インタビュー)、「Rising Hope」では「ラブライブ!」ファン・ラブライバーをも踊らせてみせ、バラード「シルシ」では彼らをも感動させていた。
確かに「シルシ」という曲があるからトリを務められるって信じられた部分はありますね。
──実際、踊る気満々の2万7000人を前にバラードをきっちり“聴かせて”みせましたよね。
フェスだし超盛り上げて締めくくるのも1つの手だと思うんですけど、「シルシ」ならちゃんと伝わるはずっていう信頼感がありましたから。あとトリを務める以上、みんなに伝えなきゃいけないことがあるなとも思ったんです。アニソンの世界の先輩たちがいたからこの場所があることや、その場所に今私が立てていることのすごさや、それをみんなと分かち合える喜びを伝えなきゃって。
──まさに「シルシ」で歌っている誰かとつながれる喜びを?
はい。だから「私には『シルシ』があるから大丈夫」「トリもμ'sさんのあとも怖くない」と思えたんです。
「人魚姫」に見る幸せと不幸せの形
──LiSAさんは去年以降、ポジティブなポップチューンを“PiNK”、ダーティなことやネガティブなことを歌うヘヴィロックチューンを“BLACK”と銘打って楽曲を発表していますよね。
はい。
──で「シルシ」は“PiNK”サイドの曲だし、それを歌った「アニサマ」しかり、最近の活動って本当に“PiNK”的、幸福感に満ちていると思うんです。なのになぜ今回のシングル表題曲は悲恋モノの「Empty MERMAiD」なんでしょう? 失恋でもしました?
あはははは(笑)。フラれたりしたわけではないんだけど「なんで私、こんなに愛されたいんだろう?」という思いが常にあるんです。何かが足りない。この状況に満足していいのか?っていう疑問が付いて回っているというか。
──充実はしているけど、これがキャリアのピークであるはずもないから、もっと多くの人に楽曲を愛してもらいたいと望んでいる?
そうですね。
──ではなぜその思いを“MERMAiD”=「人魚姫」に託してみたんでしょう?
最初は「人魚姫」になぞらえてない、私が作り上げた寂しい女の子、いつも「満たされない」「報われない」と思っている空っぽな女の子の物語を書いていたんですけど、書き進めていくうちに「あっ、これ『人魚姫』の物語と一緒だ」と気付いたからですね。
──愛する王子に再会するために声と引き替えに足をもらったはいいけど、結局振り向いてもらえず泡と消えた人魚姫の人生って確かに“Empty”、空っぽだったのかもしれませんね。
いや、いろいろ考えていくうちに「彼女は幸せだったのかな? 不幸せだったのかな?」ってよくわからなくなってきてしまって。
──へっ!? 人魚姫って幸せそうですか?
わからないですよね。一途な思いを貫けたという意味では幸せだったかもしれないし、王子様を傷付けることなく愛し続けられたわけですから。
──王子を殺せば元の姿に戻れたのに。
でも魔女のナイフで王子様を刺さなかったわけですよね。そうやって愛する人を守るという選択をできたことは幸せなことかもしれないですし。だから幸せの正体がわからなくなってしまったんです。愛する人の幸せを願うことに幸せを感じることもあるだろうし、自分が愛されることで幸せを感じるのも当然だろうし。この曲の主人公も「満たされないなあ」と思ってはいるけど、でもこの人が本当に幸せじゃないのか?っていえば、それもまたわからないことだと思いますし。
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- ニューシングル「Empty MERMAiD」2015年9月30日発売 / アニプレックス
- 完全数量生産限定盤 [CD2枚組+フォトブック] 3024円 / SVWC-70104~6 / Amazon.co.jp
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / SVWC-70102~3 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 1296円 / SVWC-70107 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- Empty MERMAiD
[作詞:LiSA / 作曲:YOOKEY(THE MUSMUS) / 編曲:akkin] - リスキー
[作詞:LiSA / 作曲:小南泰葉 / 編曲:江口亮] - 虚無
[作詞:LiSA / 作曲:カヨコ / 編曲:堀江晶太]
完全数量生産限定盤付属CD収録曲
- rapid life シンドローム
- 蜜
- L.Miranic
- オレンジサイダー
- 君にピエロ
- ANTIHERO
- Rally Go Round
- Bad Sweet Trap
- Rising Hope
- エレクトリリカル
- Mr.Launcher
初回限定盤付属DVD収録内容
- 「Empty MERMAiD」ミュージッククリップ
LiSA(リサ)
6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビュー後はアニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」、「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。2013年にはシングル「best day, best way」がノンタイアップながらオリコン週間シングルランキング6位を記録し、また10月に発表したアルバム「LANDSPACE」がオリコン週間アルバムランキング2位をマークし、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在となる。そして初の東京・日本武道館公演を開催した2014年にはシングル「Rising Hope」はオリコン週間シングルランキングで4位を、さらに12月にはアニメ「ソードアート・オンライン II」《マザーズ・ロザリオ》編のエンディングテーマ「シルシ」ではシングルランキングとしては自己最高となる3位をマーク。また同年末には「COUNTDOWN JAPAN 14/15」に、2015年夏には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」や「氣志團万博」にも出演するなどさらに活動の幅を広げている。そして9月、THE MUSMUS(ex. UPLIFT SPICE)のYOOKEY(G)が作曲する表題曲を含むシングル「Empty MERMAiD」を発表した。