音楽ナタリー PowerPush - LiSA
揺るぎない確信と“PiNK & BLACK”を手に ネクストステージにぶっ放す快作「Launcher」
LiSAのニューアルバム「Launcher」がリリースされた。
彼女は昨年9月の両A面シングル「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」発表以来、ブライトなポップチューンを歌う“PiNK”と、ヘヴィでハードなロックチューンを歌う“BLACK”という2つのコンセプトのもと、楽曲制作とライブ活動を展開。今回発表の「Launcher」は、その足跡を証明するかのような1枚だ。“PiNK”と“BLACK”のハイブリッドとなった今作で彼女は、自身と聴き手の関係をこれまで以上に力強く祝福し、またその一方でそれでも生じる葛藤や苛立ちをこれまで以上にタフに叩きつけている。
LiSA曰く今作に至る道のりには、昨年の一連の活動と今年1月に東京・日本武道館で開催された2DAYS公演が多大な影響を与えていたという。そこで今回のインタビューでは武道館公演の様子を振り返るとともに、彼女が新章に向けて“発射”した野心作「Launcher」の制作の裏側を聞いた。
取材・文 / 成松哲 インタビュー撮影 / 佐藤類 ライブ撮影 / 上飯坂一
「悔しい」から「それでも前に進むんだ」に
──昨年末のインタビューのとき(参照:LiSA「シルシ」インタビュー)、LiSAさんは「2015年は第2章のスタート」と言っていました。
はい。
──ド派手に新章の幕を開けましたねえ(笑)。
あはははは(笑)。ホントにそうですよね。
──まず年明けのご挨拶が、1月10、11日の日本武道館での2DAYS公演という大一番だったわけですもんね(笑)。それも初日は“PiNK”モード、つまりポップチューンを歌うLiSAさんをフィーチャーしたステージで、2日目は“BLACK”。ハードなロックチューンを押し出す、カラフルな2公演になっていました。
今年の武道館がああいう構成になったのは秋に「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」を出したからなんです。夏に「Rising Hope」というシングルを出したことで、去年の武道館以降ずっと自分の中にあった悔しさについて「とりあえず置いといて」って気持ちになれて(笑)。「悔しくても前に進むんだ」っていう決意をきちんと言葉にすることができたし、みんなにその言葉を受け入れてもらえた実感があったので「じゃあ新しいLiSAが見せるべき音楽やライブってなんだろう?」って考えながら作ったのが「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」なんです。
「今なら何をやってもLiSAらしくなれる」という自信
──タイトル通りブライトでダンサブルな「BRiGHT FLiGHT」的な楽曲と、SiMのMAHさんと共作した重たくてハードな「L.Miranic」的な楽曲こそが2014年以降のLiSAのやるべき音楽だった?
そうですね。それまでもポップな楽曲もハードな楽曲も歌ってきていたし、その両方を突き詰めることはLiSAだからできること、これからやるべきことだろうと思ってましたし、今も思ってます。
──実際「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」は「“PiNK”=ポップと“BLACK”=ロックを追求します」という宣言にふさわしい1枚だったとは思うんですけど、それにしてもその発展系である武道館公演については「この人、ブッ込むなあ」という印象があって……。
「アイツ、やりやがったな!」って感じでしたよね(笑)。
──ええ(笑)。初日は「油断してると置いていくからね」という宣言通り、どこまでも陽性でポップな楽曲をテンション高くプレイして、2日目はLiSAさんのロックボーカリストとしての姿や、時折ライブで見せるワルい女像にフォーカスを当てたステージで。しかも初日はお姫様ルック、2日目はハードめなゴスロリルックで踊りまくる、これまでにない演出も用意していた。
あそこまで振り切れるようになったのには「BRiGHT FLiGHT / L.Miranic」ともう1つ、7月のコニファーフォレストでのライブの影響もあって(参照:LiSA、曇り空のコニファーで“奇跡”の夏始める)。野外っていう何も自分を覆い隠してくれるもののない会場でライブを作り上げることができたから「今なら何をやってもちゃんとLiSAらしくなる」「私のやりたいことを素直に見せればちゃんとLiSAっぽくなる」っていう自信を得られたんです。
笑えてファッショナブルでカラフルなLiSAという人
──だから武道館ライブでは逆にデコラティブに飾ってみた?
はい。今なら「お姫様みたいなのもかわいいでしょ?」って言っても、みんな「LiSA、やっちまったなあ……」ではなく、まさに「アイツ、やりやがったな!」ってビックリしながらも笑って楽しんでくれるだろうなって(笑)。
──そして実際にお姫様ルックで「これからLiSA姫と遊ばない?」と煽れば1万人が踊りまくり、「シルシ」や「Believe in myself」のようなバラードを歌えばみんなが涙するステージを作り上げた。ただ、お姫様ルックやゴスロリルックって勇気要りませんでした?
逆にお姫様やゴスロリじゃなきゃステージには立てなかったと思います。例えばあのダンスパートで私とダンサーさんが、太もも全開のピッタリした、まさにダンサーって感じの格好で踊っていたら、それこそ「LiSAどうした!?」ってなったはずで。そうならなかったのは私がお姫様ルックで、2人のダンサーさんが“PiNK”のイメージキャラクター・ドーナと、“BLACK”のキャラクター・ナッツの着ぐるみを着ていたから。あのモフモフを着たダンサーさんがキレッキレのダンスを踊るから、みんな「なんかLiSAらしいな」って笑って楽しんでくれたんですよね。
──その「LiSAらしさ」って言語化できます?
うーん……。なんでも笑い飛ばせる人であり、いろんなことを笑いでコーティングできる人かなあ。たぶんLiSAって、カッコいいことをカッコつけてやってもカッコよくならない人なんですよ(笑)。どこか笑えて、どこかファッショナブルで、どこかカラフルじゃないとLiSAらしくないのかなっていう気はしています。
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- ニューアルバム「Launcher」2015年3月4日発売 / アニプレックス
- 「Launcher」
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] 4860円 / SVWC-70056~7 / Amazon.co.jp
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4104円 / SVWC-70058~9 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3240円 / SVWC-70060 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- Mr.Launcher
- Rising Hope
- rapid life シンドローム
- 蜜
- アコガレ望遠鏡
- BRiGHT FLiGHT
- L.Miranic
- FRAGILE VAMPIRE
- ANTIHERO
- Bad Sweet Trap
- エレクトリリカル
- 君にピエロ
- No More Time Machine
- シルシ
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
- 「LiVE is Smile Always~LiSAMMERLAND~」
- OP映像
- crossing field
- コズミックジェットコースター
- ミライカゼ
- say my nameの片想い
- 覚醒屋
- 僕の言葉で
- traumerei
- DOCTOR
- シロイトイキ
- いつかの手紙
- アシアトコンパス
- EGOiSTiC SHOOTER
- ROCK-mode
- WiLD CANDY
- Rising Hope
- 逆光オーケストラ
- BRiGHT FLiGHT
- best day, best way
- No More Time Machine -MUSIC CLIP-
LiSA(リサ)
6月24日、岐阜県生まれのボーカリスト。学生時代よりバンド活動を始め、2008年に活動の拠点を東京に移す。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」の2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。以降、アニメ「Fate/Zero」のオープニングテーマ「oath sign」や、アニメ「ソードアート・オンライン」のオープニングテーマ「crossing field」などスマッシュヒットを連発。また2013年にはシングル「best day, best way」がオリコン週間シングルランキング6位を記録し、アニソンシーン内外で高い人気を誇る存在に。そして2014年1月3日には初の東京・日本武道館公演を開催し、同5月リリースのシングル「Rising Hope」(アニメ「魔法科高校の劣等生」オープニングテーマ)はオリコン週間シングルランキングで4位をマーク。2014年12月にアニメ「ソードアート・オンライン II」《マザーズ・ロザリオ》編のエンディングテーマ「シルシ」をシングルとしてリリースした。2015年1月には東京・日本武道館で2DAYSにわたるワンマンライブ「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を開催し、3月にはその武道館公演で披露した「Mr.Launcher」を含む3rdアルバム「Launcher」をリリースした。